#saiuncafess 悪夢組4


『行く先は天国か地獄か』4



「渡し屋が今日ここに来ると聞いたんだが」
「ほう、誰にそんなことを?」
「けっ。情報の出所をペラペラ喋るようじゃあ、ブン屋なんざつとまらねえ」
この店を教えたのは、同期の紅黎深だった。黎深は硝煙の臭いも、撃たれて倒れた蔡にも目をくれず、ただ二日後にここに来いと告げただけだ。旅券の偽造から不正の出入国まで請け負う渡し屋が来るからと。
薄ら笑いの来がどこまで知っていて信用できるのか、それ以上にあの紅黎深のどこに自分たちを助ける動機があるのかわからないまま、それでも街を封鎖された今は頼る場所は他になかった。
「喉、渇いてるんでしょ」
緊迫した会話をまるで聞いていなかったかのように、子美が微笑んで、鳳珠の前に水を置く。
「ああ、すまない」
礼を述べれば、子美はまたふふふと笑った。


チーンとまた鉦が鳴り、新たに客が入ってくる。
その顔に、鳳珠は腰を浮かせた。
「黎深っ!」
「ふん、生きてたか」
鼻先で笑うように言って、黎深はソファには座らず、来に向かった。
「貴様は離れてろ」
「おや、黎深。ボクの店でそのお殿様な態度はどうかなあ。まあ、それより、この棺桶は新作なんだよ。どうだい、これなら君にも相応しいじゃないかね」
「ふざけるなっ。私はまだ生きてるし、当分死ぬ予定もない」
「それは残念。君の為に真っ赤な薔薇を敷き詰めてあげるのに」
「勝手に殺すな。いいから離れてろ。それとも貴様もこちら側に入りたいのか?」
「それは困るね」
どこか息のあった掛け合いに、眉間のシワを深くする。
「おい、黎深。渡し屋が来るんじゃなかったのか?」
来と子美がカウンターに移動すると鳳珠は身を乗り出した。


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