さて、後半もインラインで指摘するのは簡単だが、読む方ももう、想像がつくだろうから、ここでは、なぜ、八木啓代さんの論はこうなってしまうのか、という根幹を示すことにしよう。

思うに、彼女は議論の作り方が分かっていない、という以前に、人の会話におけるロジックが分かっていない。例えば、「質問」と「要約」の区別すらついていない。

>自分は論理の破綻した要約を行っておいて、他人が少しでも自分の文章に改変を加えると「そんなことは言っていない」というダブルスタンダードを「感情的にならずに」主張する人との会話は非常に難しい。というか、ほとんど不可能である。
>感情的になっているのなら、「言葉の行き違い」で済むのだが、ほんとに感情的になっていないのであれば、「頭が悪いのかも」という結論になってしまうからだ。

これが彼女の僕に対する非難なのだが、実際のやりとりを振り返ってみれば、僕は彼女にずっと「質問」をしていたことが分かるだろう。

質問するにあたって、「AはBである」という人に、では「CはDですか?」と言い換えて質問するのは自然なことだ。なぜなら、そこで「AはBですか?」と反復質問をすることは無意味だからだ。

質問にあたって、Aを近似なCに、Bを近似なDに言い換えるのは当然のこと。そうでなければ、質問の意味がない。ところが、八木啓代さんはそれを「論理の破綻した要約」だと考えてしまうようだ。

以下が彼女が「引用」した僕のツイート。
「外からの圧力なしにアパルトヘイトがなくなったと思いますか?」
「支援を口にするのがなぜいけないのですか」
「殺す側の理由が分からない」という理由で意見が言えない、なんておかしいでしょう?」

すべて質問なのだから、そこで言い換えが行われているのは当然だ。そこで「AはBである」が「CはDではない」が、彼女の考えなら、そう答えればよいのだし、そうあってこそ、では「CをのぞいたA」が論題であるのか? それとも「AとCは相容れない」というのが彼女の考えなのか?という次のレベルに議論が進むのだ。

ところが、彼女の最初の質問への答えはといえば、「外からの圧力でアパルトヘイトがなくなった、というのは思い上がりも甚だしい」なのだ。
先のTwitlogerポストで指摘したように、僕の質問は「外圧」は「必要条件」か否かを問うているのに、それを「外圧」がアパルトヘイト廃絶の「主因」だったという主張だと思い込んでしまっている。
そして、「CはDですか?」と問うた相手に、「CがEだ」などと言うのは「思い上がりも甚だしい」という非難まで始めてしまう訳だ。

血の気の多い方ななのかもしれないが、それにしても、質問をされると、相手の主張はこうだと決めてかかって、すぐさま反論や非難に入る。しかし、決めつけた相手の主張にズレが生じているから、反論もズレた方向にしか飛ばない。誰が「議論を崩壊」させていたのか? この一例からも分かるだろう。

思えば、彼女が最初に「傲慢」だとした僕の「外圧」についてのツイートも、質問形に過ぎない。
「外から圧力こそが彼らには必要なのでは?」
このどこが「傲慢」だというのだろう?
それを言うなら、外圧をはっきり必要だとしている五十嵐正さんや藤川毅は「傲慢」このうえないことになるね。

一方、彼女は僕の言葉に「質問」を返すのではなく、すぐさま「解釈」し、「要約」する。しかし、「「外圧」がアパルトヘイト廃絶の主因だった」などという主張は僕は一度もしていないのだから、「そんなことは言っていない」とするのは当然のことだ。

「差別する側の事情を知る必要はない」という要約についても然り。
「Aをやるべきというなら、ずっとBをするべきだ」と言うことと、「(Bに触れもせず)Aはする必要がない」と言うことは、まったく違うから、「そんなことは言っていない」とするしかない。
そのどこにダブルスタンダードがあるというのだろう?

しかも、「差別する側の事情を知る必要はない」は今でこそ「要約」と言っているが、最初は何の前触れもがなく、その括弧を僕の「見解」だとし、どこでそんなことを言ったという問いには、僕の言葉の「引用」だとすら答えている。
「引用」には必ず引用元がある。それを示せない限り、彼女には「引用」と「要約」の区別もつけられない、という烙印を押すしかなくなる。

こういう人が「論理学の初歩を理解しておられないとしか思えない」などと(僕に対して)のたまうのだから、本当に面白い。
「AがBでない」ことと、「Aの一部がBに含まれうる」ことは両立するか?
彼女が外圧/支援について言ったのは「外圧と支援は全く違うモノ」「外圧は支援に過ぎない」「外圧は支援の形態の一つ」の三種類。
さてさて、”Complete Different”が何をどうこねくり回したら、”A Part Of It”になるというのだろう?

「論理学」とかいう以前に、「質問」「要約」「解釈」「引用」、それらが何であるかくらい分かっていないと、まっとうな議論など出来るはずがないことを彼女は知るべきだろう。

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