武盾一郎 · @Take_J
12th Oct 2010 from Twitlonger
「ニヒリズムにくらべて、アナーキズムというものは、これはまったく別のジャンルに属するものだ。
はっきり言って、これは、政治部門だ。
御存知のように、すべてのわるいゆきがかり上を、現実という名でよんでいる政治家・実践家たちは、病根がはっきりわかっている場合でも出血を怖れて、姑息に甘んじ、大きな手術などはしたがらないものだ。
アナーキズムの理想が現実ばなれしたものとしてうとんじられるのは、ある現実よりも、ありうべき極限の全き現実に重点をおいている点である。
たしかにそういうイミで、既成のアナーキズムは、時世におくれて、ふるぼけたものの代名詞になったし、政治としてのアナーキズム運動は強弩(きょうど)の末勢、魯稿(ろこう)を穿つ能(あた)わず、衝風の末力、鴻毛(こうもう)を漂わすあたわずという心ぼそいことになってしまっているようだが、すべての政治的理想は、究極のはては、アナーキズムを目標とする五十三次道中のようなものだと僕は信じている。」
金子光晴『反骨』より