質疑応答:

「今日は有難うございました。個人会員の原田と申しますが、先程の中でオバマ大統領は日本を重要な同盟国と思っていないというご発言がございましたが、それは普天間問題がああいうふうに出てきてからそうなったんでしょうか?それとも普天間問題が出る前からオバマ政権が誕生した時に既にそういう考えを持たれていたんでしょうか?大体、アメリカの民主党というのは同盟国に対しては共和党ほど親しくしようとはしないという伝統があるようですが。オバマさんが中国に対して関心を持って日本に対する関心が薄くなったと思うんですが、その理由はどういう所にあるんでしょうか?」




ウォルフレン氏
「仰る通りでして、オバマ大統領も、政治階級と呼ばれる人も、論評を色々するような人も日本よりは中国のみ関心を持っているということで、あたかも地図上から日本が移動してしまったというような感じです。ヨーロッパもある意味で同じなんですけども、日本に関しては特にそういう事が言えると思います。また、いみじくも仰いましたように民主党というのは同盟国に対して緊密な関係を常に維持しようとあまり思わない伝統を持っていたというのもその通りですけども、ただ日本人に関しましては、それは日本という国に関してでして、自民党の何人か、あるいは官僚の何人かはまだちょっと扱いが違ったと思います。そこはよく区別をしておかなければならないと思います。それから普天間とオバマ大統領の関係ですが、普天間の問題というのはオバマ大統領は殆ど何も考えずに、いわゆるペンタゴン系の人たちに全てを任せたという状況だったと思います。


 たいへん物議を醸している沖縄の基地問題に対する計画ですけれども、辺野古に関する計画、それから海兵隊の移転に関する計画、そういった事の殆どというのはラムズフェルドによって日本に押しつけられたというか、天から降ってきたようなプランです。当時日本人は、自民党もこういう天から降ってきたようなプランに対して何かしようという事は全く考えてなかったと思います。往々にしてそうなんですが、日本の官僚というのはこれを絶対飲めと、受け入れろと威嚇されますと一番賢い道を選ぶのです。その一番賢い道というのは要するに何もしないという道です。


 しかし、何もしなかった官僚たちも09年になって民主党政権になったという事で“やれやれ”と、この難問を民主党の膝の上にドンと渡すという事で官僚たちはみんなハッピーだったのです。
 それからこれもよく言われることですが、東京の人というのは沖縄の実情を殆どご存じない。それから沖縄をどういうムードを覆っているのかということについても殆ど認識がないという事があります。


 しかしこれははっきり申し上げますが、あの計画の内容が本当に計画通りその通りに実行されたということになったならば、もう沖縄の状況というのは爆発的なものになり、どんな首相であってもそれを乗り越える、それで持ちこたえることは出来ないでしょう。菅直人首相も持たないでしょう。ですから菅首相もこの計画に関しては何もしない筈です。


 私は日本人でもありませんし、弁護士でもありませんので確たることは言えませんけども、私が仮に日本人の弁護士だったら、次の論陣を張るのではないかと思います。海兵隊の問題も含め、そこで提案されているプランというのは、これは実際は日米安保条約の違反になるというふうに言う事が出来ると思います。


 日米相互安全保障条約というのはその条文によりまして、日本は米軍のために基地というスペースを提供する。その代わりに、将来可能性としての攻撃があった時には日本を防衛するという特定の目的のために基地を提供するのである、とそういうふうに書かれているのです。しかしながら海兵隊の基地というのは全然日本の防衛のために存在しているのでは全くない。海兵隊の基地というのは全然違った目的のために運用されているものであります。これは防衛ではなくて攻撃力として存在しているのであり、しかもイラクとかアフガニスタンとか将来的にはアジアのどこかで勃発するかもしれない、そういったところで攻撃力を行使するために使われるというのが海兵隊の基地の主要な目的なのです。後もう一つは中国をアメリカの基地で以って包囲するというような目的もその中には入っていますけれども、しかしながらとにかくそういった事を考えますと、日米相互安全保障条約が謳っているような目的とは全然違った存在が海兵隊なのだという事が出来ると思います。


 しかし、まぁ次のように論じることも可能でしょう。こういう取り決めというのは厳格に規定するのではなくて、少し拡大解釈をしてもいいではないかと。世界の情勢も変わってきたんだし、新しい脅威も生まれてきているんだから、世界の中には敵対する勢力があちこちにあるし、また問題も色々多発しているので違ったアレンジメントがどうしても必要になるのだ、ということも論ぜましょう。


 私もそういった可能な論点というのは全部考えました。例えばアメリカは今多くの国によって脅されているのだという事も一つの論点としては言えるかもしれません。あるいは国ではなくてテロリスト集団とか、とにかくアメリカに対して悪意を持っているような主体、そういった所によって脅威にさらされているというふうに論ずることも可能でしょう。


 それからアメリカほどの次元でありませんけども、別の次元で日本についても考えてみました。日本の周辺には日本として信頼を必ずしも出来ないような隣国があるのだと。例えば中国とか北朝鮮とか、その他色々な懸念となるような国があるのだと。


 もしそういった私がいま申し上げたようなことが世界の中でも最も難しい問題であり、しかも我々が生きている中でこれこそが最も困難な問題で大変なことになるのだという事であるならば、私が今まで論じてきたことは全部間違いだと言って構いません。


 しかし、いわゆるこの脅威というのはあらゆる比較を乗り越えて、あまりにも過大に評価されております。
 その紛争を必要としている国、あるいはは戦争が必要な国が目的なのだと思います。すなわち、もし戦争とか紛争がなければ何十億ドル何兆ドルというような資金が軍に対して、あるいは軍事主義・軍国主義というものに対して全然入ってこないようになってしまうわけですから、どうしても紛争や戦争を必要とする国、そこが目的になっているのです。


 それから、これからどんどんどんどん強くなっていく中国という事を皆さま方が将来的に考えるというのであるならば、直ぐお分かりになるでしょう。万人にとって良いのは、なかんずく日本と中国にとって良いのは、安定的な関係、安定的な相互関係を日中の間で持つということであります。


 そこで何が問題かと言いますと、東京がまるで奴隷のようにアメリカからの指令を受け、それに屈するという事。それを続けている限り、中国は日本をまともな相手として真剣に取り扱わないでしょう。


 あと、どうしても言いたい事があります。私はヨーロッパ人の代表でもなければ、オランダ人の代表でもありません。私と同じような事を言っている人がいたとしても、それの代弁をしているというわけでもありませんけども、そもそもヨーロッパ人なんていうのは、わざわざ私が今論じてきたような事についてわざわざ考えるなんて事をやる人はいないのです。初めて、今まで当たり前だと思っていたような事を改めて考え直さなければいけないという状況が到来したという事なのです。これまでのやり方というのは、あるいはこれまでの在り方というのはまるで自然の摂理のように当り前のように思われていました。あるいは山手線が緑で中央線がオレンジで、そして京浜東北線が青いということと同じように当り前の事だというふうに捉えられていたのです。皆さん方のお考えの中で日米関係をどう考えるかとか、色んなお考えをなさる時にそれを決定する皆さん方の精神構造、あるいは日中関係でも良いんですけれども、それを考える時に、全く今までは当たり前だと思っていたようなことがこれからちゃんと掘り起こして考えなおさなきゃいけない時に来たのだという事だけはぜひ、皆様方に申し上げておきたいのです」

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