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27th Dec 2010 from Twitlonger

2010年11月4日(木)放送 NHKクローズアップ現代
機密告発サイト・ウィキリークスの衝撃(NO.2959)
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=2959

動画版の文字起こし

ウィキリークスが活動の拠点にしている国の一つ、スウェーデン。ここでは内部告発者を保護する法律が整備され、ウィキリークスに協力している人たちが数多くいる。

■米軍揺るがすウィキリークス
アメリカ政府の追及を恐れ、居場所を明らかにしていないウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジ氏。スウェーデンに滞在していると聞き、私たちは接触を試みた。

取材者「彼は今どこにいるのか?」
ウィキリークス協力者「詳しい居場所は教えられない」

ウィキリークスの協力者と交渉を続けて1ヶ月余り。私たちの身元を綿密に調べた上でアサンジ氏がようやく姿を現した。

インタビューが始まったのは深夜0時。アサンジ氏は人目を避けるため細心の注意を払っているという。

ジュリアン・アサンジ「米政府は私たちのサイトを閉鎖しようとしています。それだけでなく私をスパイ容疑で告発しようとしているのです。追われているから大変なんだ」

4年前に作られたインターネットのウェブサイト、ウィキリークス。各国の政府や大手企業の不正を告発する機密情報を次々と告発してきた。運営費は全て寄付金で賄われている。今、ウィキリークスがターゲットにしているのはアメリカ軍。先月(10月)内部告発者から流出した40万点に及ぶ軍の機密文書を公表した。そこには軍が隠してきたイラク戦争の知られざる実態が記録されている。

「2006年2月、イラク人の通訳を敵と間違いスナイパーが射殺した」
「2007年2月、降伏する意志を表明していたイラク人2人をトラックごと破壊した」

ウィキリークスはアメリカ軍の機密映像も公開している。

3年前、軍のヘリコプターから撮影されたもの。バグダッドの街を歩く2人のカメラマンの姿が映し出されている。
映像「ロケット砲を持っているぞ」
ヘリコプターの兵士達はカメラを武器と勘違いし、発砲し始める。
映像「攻撃開始!」
さらに撃たれた人を救出しようとする人も攻撃する。
このときの攻撃で市民十数人が亡くなり、2人の子どもが大怪我を負った。
映像「フロントガラスを撃ち抜いたぜ!ハハ!」

機密文書を検証した結果、これまでに伝えられているよりはるかに多い6万6千人の民間人が犠牲になったとウィキリークスは指摘している。
これに対してアメリカ政府は、ウィキリークスが公開した機密の真偽については一切コメントを控えている。

ジュリアン・アサンジ「アメリカ軍のやっていることは戦争犯罪です。だからこそ私たちは機密文書の公開に力を入れています。私たちの目標は国家権力の不正を正し、よりよい社会をつくることです。そのために、隠蔽された情報を全て包み隠さず明るみにして人々に伝えたいのです」

アサンジ氏はオーストラリア出身。10代の頃はインターネットでコンピュータのシステムに入り込む天才ハッカーとして名を馳せていた。
20年前、アサンジ率いるハッカーグループがNASAのコンピュータに侵入。システムが一時停止する騒ぎとなった。
こうした活動を通してアサンジ氏は、各国政府が公にしていない情報がたくさんあることを学んだという。その経験を活かして作り出されたのがウィキリークスだ。ハッカーの仲間だけでなく、ジャーナリスト、暗号の専門家など世界で1200人が協力しているという。

*今回の取材で明らかになったウィキリークスのシステム。
内部告発者はウィキリークスのHPに機密文書を投稿する。取り込まれた機密文書は暗号化され、各国の協力者のコンピュータを経由して、スウェーデンにあるウィキリークスのサーバーに送られる。発信元に関する情報は消され、内部告発者の身元が分からないようになっている。

ストックホルムにある地下施設。ここにウィキリークスのサーバーが置かれてている。いくつものロック(錠)を開けてようやくその場にたどり着いた。ここは冷戦時代、核シェルターとして使われており、セキュリティは万全だという。
「ここがウィキリークスが使っているサーバーだよ」
こうしたサーバーの中にアメリカ軍の機密情報だけでも、未公表のものも含め、50万点近くのデータが収められている。
ウィキリークスでは、送られてきた機密文書を独自に検証し、公表しているという。

*機密文書が公表されるまでの仕組み。
暗号化された機密文書は、まず協力者のハッカーに送られ、暗号解読が行われる。その後大手メディアのジャーナリスト等が裏付け取材を行う。本物と確認できたものはウィキリークスのHPに掲載される。それと同時に、この情報を元に書かれた原稿が協力したジャーナリストが属するメディアでも報道される。

ジュリアン・アサンジ「全ては威圧的な力を振りかざす巨大な国家権力に対抗するためです。この世の中には国家権力の恐怖を前に何もすることが出来ない人たちが大勢いる。そういう人たちを結びつけるのです。一人一人の力は小さいかもしれないが、互いに結びつくことで国家に対抗する力をもつことができるのです」

■ウィキリークス 高まる批判
ウィキリークスに対し、アメリカ政府は、個人情報を流出させ、兵士達の力を危うくするものだと非難を繰り返している。

クリントン国務長官「国家の安全保障及び軍関係者にとって大きな脅威だ。強く抗議する」
ゲーツ国防長官「彼らのやっていることはモラルに反し、犯罪行為にほかならない」

米軍の諜報機関がまとめたとされるウィキリークスに関する機密文書。ウィキリークスが今年3月に公表した。
「ウィキリークスは米軍の軍事作戦を妨げる脅威だ」
「内部告発者を締め上げ、破壊しなければならない」
と書かれている。

元米軍諜報部員「軍事作戦や戦術についての機密情報も流出し、アメリカに多大な害をもたらしています。これ以上ウィキリークスを野放しにするわけにはいかないのです」

今年5月、ウィキリークスに機密情報を流したと見られる内部告発者が遂に逮捕された。ブラッドリー・マニング上等兵。イラク駐留米軍の情報分析官だった。逮捕されるきっかけとなったのは、ウィキリークスに理解を示していたハッカーによる通報だった。
通報したのはインターネットのセキュリティ会社を経営しているエイドリアン・ラモ氏。ラモ氏は世界中のハッカーとつながりを持ち、メールでやり取りをしている。その仲間の一人がマニング上等兵だった。5日間にわたるやり取りの結果、マニング上等兵は米軍の機密情報を流出させたことを打ち明けた。

「機密情報を入手するのは簡単だった。全てをウィキリークスに渡した」
「これをきっかけに世界中で議論が巻き起こり、世の中が良くなってほしい」
流出した機密情報の中には、米軍兵士や現地協力者の名前が含まれていた。「マニング上等兵を止めなければ、人の命が危険にさらされる」そう考えたラモ氏は軍に通報した。

エイドリアン・ラモ「ウィキリークスがやっていることは間違っていると思いました。名前を公にされた兵士や協力者は敵に殺されるかもしれません。これは人命に関わる重大な問題です。ウィキリークスは正義の味方のように振る舞っていますがとんでもないことです。情報を何でもさらけ出すことは正義ではありません」

――機密の流出は人名を危険にさらすと批判されています。どう考えますか?
ジュリアン・アサンジ「国家権力は、都合の悪い事実が公表されると、言いがかりをつけて、私たちを貶めようとします。私たちが機密文書を公表したことで傷ついたり、殺された人が一人でもいますか? もしいたとしたら、アメリカ政府はとっくの昔に犠牲者がいたことを発表していますよ」

送られてきた機密情報を包み隠さず公表する。それがウィキリークスの方針であり、批判されても変えるつもりはないとアサンジ氏は強調している。

ジュリアン・アサンジ「多くの人たちが国家に騙されていると思っています。だからこそ真実を知りたいのです。情報に飢えている人たちが私たちの活動を支援しています。こうした支援がある限り、ウィキリークスを止めることは出来ません」

次のターゲットは中国とロシアというアサンジ氏。ヨーロッパ各国を転々としながら今日もウィキリークスの活動を続けている。(終)

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