B:たとえば、やはり平等原則に関わる問題だけど、非嫡出子の法定相続分に関する違憲訴訟があるでしょう。
A:あれは嫡出か非嫡出かという本人にとって動かしようもない属性による差別が問題になった事案で、何がベースラインかなんて考えるまでもないんじゃないか。非嫡出子だけ相続分を半分にするというのは、個人の平等な尊重という理念に反するだろう。
B:憲法学者も顔負けの威勢のよさね。嫡出子も非嫡出子も同じく均等相続というのが当然のベースラインならそのとおり。最高裁決定の反対意見はそういう立場だったわ。でもね、法定相続制度というもの自体が、そもそもどういった家庭に生まれるかという本人の意思によっては動かしようもない属性にもとづいて大きな結果の差異をもたらすものでしょう。その意味では、法定相続制度そのものが、果たして個人を平等に尊重するという憲法の理念に即しているか否か、疑わしいんじゃない?
A:そりゃ、ずいぶんとラディカルだね。
B:法廷意見はそのラディカルな立場をとっているみたいよ。相続制度の形態には歴史的、社会的にみて種々のものがあるから、裁判所として立法府の裁量を限定しうるに足る確固たるベースラインは見つからないという考えのようだから。だとすれば、堀木訴訟のときと同様、立法府の裁量が拡大するのは当然ね。
A:じゃあ君は法廷意見の方が正しいというわけか。
B:そういうわけじゃあないのよ。ただ、違憲の条件という視点から両方の議論を整理しているだけよ。いずれにしても個人の尊重という理念と整合しにくい法定相続制度のうちの一部分、つまり子はすべて均分相続という部分だけを取り出して、それをベースラインとする議論の方が必ずしも説得力があるともいいにくいでしょう?
A:ともかく、君は法定相続制度は積極的給付だと考えられるというわけだ。
B:ある意味ではその通りね。

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