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21st Mar 2011 from Twitlonger

備忘録ロングonツイットロング #SPEEDI :2SPEEDIシステムと組織の失敗
 SPEEDI(緊急時環境線量情報予測システム)という原子力災害の緊急時に、汚染物質の拡散に関して予想してその情報を自治体等に通報する筈のシステムが本当に稼動しているのか、或は稼動しているが情報が公開されていないのかについて疑義が出ている。既に私だけでなく何人かがこれを指摘し始めている。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819499E0E2E2E29C8DE0E2E2E1E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;df=2

 SPEEDIというシステムは、http://www.rist.or.jp/atomica/dic/dic_detail.php?Dic_Key=2938
によれば、『原子力発電所等の原子力施設において大量の放射性物質が放出されたり、そのおそれがあるというような緊急事態に、周辺環境における放射性物質の大気中濃度および被ばく線量などを迅速に予測し、避難対策の策定と実施に役立つ情報を提供するシステム。』とあり、更に『万一の事故時には一連の解析を実行して、その結果を緊急時防災対策に必要な資料として文部科学省および各自治体に送信する』とある。

 そもそも原子力災害に対しては、緊急時対策支援システム(ERSS:Emergency Response Support System)というものがあり、その中の「解析予測システム」(APS)によりプラントの状態が解析され、炉心出口温度、原子炉および格納容器の温度・圧力等のプラント主要パラメータ値やその予測、放射性物質の放出量が表示されるとある。
http://www.jnes.go.jp/bousaipage/system/erss-7.htm
http://nucnuc.at.webry.info/201012/article_1.html
 またこのうち放射性物質の放出量は、SPEEDIに 受け渡されるとある。
今回の津波で、このオフサイトセンターのERSSがプラント情報収集ができなくなり機能不全になったことは間違いないだろう。他方で、SPEEDIの計算等の機能については、
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/bousin/bousin003/siryo5.pdf
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09030301/01.gif
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09030301/04.gif
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09030301/02.gif
等にSPEEDIの計算フローと入力データについてという詳細な解説等がある。これによれば
気象庁数値予報データ (GPV)と現地気象観測データ (AMeDAS及び自治体テレメータ)
風速、気温、降水量等がオンラインデータ、サイト情報、地形データ等 サイト緯経度、スタック高さ、地 形標高、土地利用データ等と核種組成比率データ、炉型別の組成比率等、線量換算係数、実効線量等への核種別換算係数等がオフラインのDBデータとある。これらは入手に問題はない筈である。
 それに加えて、放出源情報がERSSから手入力データ (一部ERSSか らオンライン)としてもたらされれば拡散・線量計算 PRWDA21により大気中濃度、線量率、線量等の計算がされるとある。従って、今回は地震と津波のトラブルにより、ERSSからの放射性物質の放出量だけが入手できないことになる。これならば、シナリオを切って、最大、最小でデータを別の形で補完推計或はシナリオ化すればSPEEDIは使えることになる。

 SPEEDIが本当に動いているかについては、例えばNHKは
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110316/k10014705241000.html
で『原子力安全・保安院は「放射線の量を測定する『モニタリングポスト』の多くが、地震のあとの停電で動かないため、『SPEEDI』の本来の機能が十分に得られない。今後、回復する見通しは立っていない」と話しています。』と3月16日 6時4分に報道し、他方でこれに対する反論が、
http://www.nustec.or.jp/news/pdf/kiji.pdf
に『平成23年3月15日(火)朝刊にて、当センターが運用しているSPEEDIシステムが予測不能との誤認記事がありました。現在、3月11日に緊急時処理を文部科学省から指示を受け、毎正時(1時間毎に)及 び特別条件での拡散予測図を文部科学省等に報告しており、今日現在においても継続 してSPEEDIシステムは、住民避難や国の原子力防災対策で活用されていますので、 お知らせします。』とある。
 つまり1時間毎に文部科学省に報告がいっているという。
 しかも『地震によりテレメータからのデータが得られなくとも緊急時処理は別処理であるため、拡散予測を行うことができる。』とある。つまり何らかのデータ補完ができていることになる。
 これを信じるのならば、逆にどこかでデータの非開示という組織の失敗が生じているという推測がなりたつ。
実際、http://www.ustream.tv/recorded/13392382
「日本学術会議緊急集会「今、われわれにできることは何か?」2/2」
の中で、 28分付近で「計算してる、連絡とってる。どう出すかは本部あるいは全体の判断」と主張するのに対し、質問者が44分「パニックコントロールの問題あっても我々が知らないとは」「動いていると言ってもデータ共有必要、少なくともやっているといわなければ」という対話がなされているが、この質問者の問いかけには答えは与えられていない。
 他方で、例えば、茨城県の東海村近辺の空間線量率に風向風速をあわせて10分ごとに更新しているサイトに
 http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/present/result01.html 
がある。これは
http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/system/index.html
によれば、茨城県のシステムで、情報は公開し、市町村役場他原子力オフサイトセンターにも提供している。
 本来この種の情報の開示こそがチェルノブイリの教訓から我々が必要とするものとして、認識して来た物の筈である。もし、情報開示の原則とパニック回避のための情報管理の原則のようなものが衝突しているとしたら、そのマネージメントができているとは到底信じられない。戦争や災害で情報を隠蔽するというのは古くからある組織のマネージメントの一つの方法である。しかし複雑化した社会はそのような情報隠蔽による上位下達でシステムが管理できると想定することは殆どできない。今回の震災でも実際の対策は分散自己組織化的に構築されて来た。これについては別途検証するが、もしこの種の上意下達の管理が何処かで入って『責任の持てない情報、無責任な情報は出せない』などの理由で情報が止まっているとすれば典型的な組織の失敗だろう。
 今直ぐ、SPEEDIはいかなる意味で動いており、いかなるデータを誰に対して提供しており、それはどのように処理されているかを開示して欲しいものである。

以上

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