『戦前昭和の社会』(井上寿一著、講談社現代新書)を読む。
戦前の昭和という時代がどのような世相であったかをまとめた新書。本書を読んで、それまで私が思っていたより当時はアメリカ化されていたということ、女性の社会進出がそれなりに進んでいたことが分かった。皮肉だったのは女性の地位向上の運動が、欧米思想の否定と絡んで古き良き「神国日本」、「婦徳」の伝統への回帰と読み替えられて、それが軍部に利用されていったことである。格差が広がり、若者の就職難から新興宗教が求められ、それがやがて天皇制国家の思想と衝突していくことも分かった。腐敗した二大政党政治の閉塞した情勢から政治的カリスマが求められ、やがて戦争へと流れていったところを読むと、なんとかならなかったのかと思うと同時に今この状況があまりにも似ていることに気味悪さを覚えてしまう。今ちょうど読むべき本であると感じた。

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