JR西山崎前社長の事件と小沢事件の共通性

 JR西山崎前社長の事件は、当初、神戸地検・大阪高検が起訴意見で最高検に持ち込んだ際に、当時の笠間次長が厳しく問題を指摘して却下。ところが、その後、笠間次長が広島高検検事長に異動して、決裁ラインから外れたことから、神戸地検・大阪高検は再び最高検に起訴意見を持ち込み、後任の伊藤次長の了承を得て起訴した。その当然の結果が今回の無罪判決だ。
 そういう意味では、笠間次長の時代に最高検が適切な判断を下したのに、それを覆して起訴をしたことが、そもそもの間違いだったのであり、無罪判決への控訴断念は当然と言える。しかし、経過はどうあれ、形式上は検察が組織として起訴を決定した事件で、事実上その誤りを認めるに等しい控訴断念は、極めて異例であり、まさに笠間総長の主導性がなければ行い得なかったであろう。まさに、笠間検察が打ち出した「引き返す勇気」が初めて発揮された事例とと言える。
 重要なことは、西松建設事件を発端とする小沢事件も同様の経過をたどったことだ。笠間次長時代に、特捜部が西松建設事件での小沢氏秘書逮捕を画策し、次長が却下、それを、笠間次長の広島高検への異動後に伊藤次長に持ち込んで了承を得て、2010年3月に大久保氏逮捕・起訴。山崎前社長の事件と全く同じ構図。その後、村木氏逮捕・起訴、陸山会事件など、現在の信頼失墜を招いた「検察の暴走」は、すべて、「笠間不在」の間に引き起こされたことであり、それらの尻拭いを行いつつ、検察改革を実行する立場にある笠間総長は、誠に気の毒というほかない。
 今回の控訴断念は、(朝日新聞の「証拠改竄スクープ」で「引き返させられた」と思われる村木氏事件を別にすると)、そういう「笠間不在」の最高検の失態から初めて「引き返した」事例である。今後も、同じ経過による誤りに対して、同様の「引き返す」姿勢で臨んでもらいたい。それが、検察の信頼回復の唯一の道だ。

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