『TPPルール作り 日本の関与は困難 民主党経済連携PT 篠原孝幹事』|日本農業新聞4月18日

 民主党経済連携プロジェクトチーム(PT)の幹事として15日まで訪米し、米通商代表のマランティス次席代表らと環太平洋連携協定(TPP)について意見交換した篠原孝前農水副大臣に、米国の考え方などを聞いた。
 


 ―訪米の成果は。
 
 国内のTPPに関する地域シンポで一般参加者から反対や慎重なコメントが多かったことを文書で伝えた。当初、政府がまとめた報告書は、有識者間のTPP賛成論が一般参加者の意見とともに説明もなく列挙され、国民が交渉参加を支持しているかのような誤解を与える内容だった。これを、実態が分かるように修正させ、米側に渡した。日本農業新聞を同次席代表に渡し、反対意見が多いことを強調したところ、「日本国内の情勢がこんなに分かったことはない」と話していた。
 
 ―日本はルール作りに関与できるのでしょうか。
 
 「日本がいつ交渉に入ることができるかにかかっている」との回答だった。注意すべきは、日本が参加を希望しても、いつ交渉入りを認めるか決めるのは米国だということだ。米国の政府、業界団体の幹部、国会議員らは「ルール作りに関与できない」とは明言しないが、明らかに「(ルール作りには)参加してほしくない」という態度だった。
 
 今、参加表明しても、交渉参加国が合意を目指す12月までに、交渉に参加することはできない。その後参加しても、既に交渉参加国間で固まったルールを覆すことは認められない。同次席代表からは、交渉が妥結に近づいたら交渉参加国の追加は認められないことを示唆する発言もあった。
 
 ただ、参加したら米国は甘くない。日本政府は「関税撤廃の例外が認められる余地がある」などと危機感を和らげようとしているが、無責任と言わざるを得ない。今回の訪米で、米側から関税撤廃の例外を認めるような発言はなかった。
 
 医療保険制度は「日本の制度を大きく変更することは望んでいない」とのことだった。だが、米国は制度自体には手をつけなくとも、米韓自由貿易協定(FTA)で韓国に制度を変えさせたように、医療に市場原理を持ち込んで高額医療を増やしたり、郵政の保険事業や共済の規制を見直させたりして、日本の医療制度に風穴を開けようとするだろう。
 
 ―野田首相が訪米します。TPPにはどう対応すべきですか。
 
 経済的メリットのないTPPに拙速に参加する必要はない。米国が「TPPで目指す自由化水準の参考にする」と言っている米韓FTAの韓国への影響を数年間見て、慎重に検討すればいい。
 
 交渉は政府に任されており、党が政府を拘束できないという意見がある。だが、TPPは日米安保条約に匹敵するかそれ以上の問題で、党の意見を聞くのは当然だ。党は昨年11月、TPPに慎重な議員の意見が多かったことを踏まえ「慎重に判断すること」を提言した。しかし、その後の野田首相の発言は交渉参加に前のめりだ。党、国民の声を重く受け止めて対応することを求める。(聞き手・千本木啓文)

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