『農中総研IYCシンポ 「社会的経済」の要に 協同組合の役割確認』|日本農業新聞4月18日

 農林中金総合研究所は17日、東京都千代田区で2012国際協同組合年(IYC)記念シンポジウムを開いた。約300人の参加者は、協同組合をはじめとする人々の連帯を経済活動の基盤とする「社会的経済」がこれからの日本社会で重要なことを確認。今後、協同組合組織は社会的経済の一員としてどのような役割を果たすべきか、議論を深めた。

 元ストックホルム大学教授のビクター・ペストフ氏は基調講演で、協同組合が社会的経済の一員としてサービスや財、雇用を市場や地域に提供することで、「地域や社会が抱える問題解決を促す役割を果たしている」と指摘。JA厚生連や日本生活協同組合連合会が福祉・健康サービスの提供を通じて地域の問題解決に寄与している事例を紹介した。

 経済評論家で12IYC全国実行委員会代表の内橋克人氏は、社会的経済の意義について講演。「米ソの冷戦構造が崩壊し、新自由主義や市場原理主義が台頭する中、それらに代わる主流となり得るのか、それとも単なる資本主義の補完にすぎないのか、率直な議論が必要だ」と提起した。

 パネルディスカッションでは、ペストフ氏、内橋氏に加えて、生協総合研究所理事の栗本昭氏と農林中金総合研究所特別理事の蔦谷栄一氏が参加。社会的経済の一員としての協同組合の意義や役割について議論を深めた。

 栗本氏は日本の生協の東日本大震災での取り組みなどを紹介した上で、「地域に根差した組織としてどのように活動していくかが協同組合の発展に重要だ」と指摘。蔦谷氏は、JAグループが地域でさまざまな役割を果たしていることを解説し、「地産地消による地域循環型の社会構築を図ることが、環太平洋連携協定(TPP)などグローバルな資本に対抗する手段になる」と強調した。

 司会を務めた東洋大学経済学部教授の今村肇氏は「社会的経済を基本に、組織・個人が境界を越えてつながっていくことが大事だ」と呼び掛けた。

 シンポジウムは11年3月に開く予定だったが、東日本大震災の発生で延期していた。

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