『牛肉・自動車・保険問題 米政府 解決が必要 民主・PT訪米団報告』|日本農業新聞4月20日

 民主党経済連携プロジェクトチーム(PT、鉢呂吉雄座長)の訪米調査団がまとめた環太平洋連携協定(TPP)に関する報告書の内容が19日、分かった。米政府が、日本の交渉参加の承認権を持つ米国議会に納得してもらうため、日米間で牛肉や自動車、保険の問題を解決する必要があるとの認識を示していたことが明らかになった。関税撤廃の例外について「米国は例外を持ち込まない立場」としている。報告書は20日のPT総会で議論する。

 報告書によると、これらの認識を示したのは米通商代表部(USTR)のマランティス次席代表。日本の交渉参加に「条件はない」としつつも、米国議会が日本の交渉参加を支持するよう、日米間の問題解決の必要性を指摘した。“問題”は、米国の業界から要請がある牛肉と自動車、保険だと明言。日本の交渉参加の承認を得るための、米国議会への通報までに解決する必要があるとした。

 関税撤廃の例外扱いは「最初から認めると例外だらけになる」とし、「例外を持ち込まない立場」を強調した。ただ他国にも重要品目があることや、長期間で関税を撤廃する例も指摘している。日本が今から交渉に参加してもルールづくりに加われるかという問題で同次席代表は、交渉の進捗状況と日本が参加するタイミング次第との認識だった。

 一方、米自動車大手3社でつくる米自動車政策会議のブラント会長は、現状の9カ国での交渉合意が遅れる可能性から、現時点での日本の交渉参加に反対を明言。日本はTPP成立後に参加すればよいとの考えを示した。日本は非関税障壁により輸入車の割合が他国より低いとして、日本の参加を支持するには自動車市場の開放措置が必要と求めた。

 キャンベル国務次官補は、日本のTPP参加による米側のメリットを示し、①アジア太平洋地域の安全保障や経済的関係の強化など「戦略的メリット」②TPP全体の市場規模拡大による「経済的メリット」③アジアからの安価で良質の商品の輸入で米国消費者を豊かにし、米国企業の競争力を強化する「国内経済上のメリット」――を挙げた。

 共済制度については、今後日米間で対話していかなければならない問題だと指摘した。

 調査団は9~15日の日程で米国とカナダを訪問。全米商工会議所や議会関係者、研究機関などとも意見交換した。報告書は19日のPT役員会に示した。


◇経済連携PT訪米調査団・TPP交渉参加問題で米国側の発言ポイント

◆ルールづくり、条件
・米国議会へ通報する前に、米国業界から要請のある牛肉、自動車、保険などの問題を解決する必要がある(政府)
・どの程度ルールづくりに参加できるかは日本が交渉に参加する時点で、どの程度中身が固まっているかによる(政府)
・例外は持ち込まない(政府)

◆交渉見通し
・2012年中の交渉妥結は厳しい。来年の6月にまとまる可能性あり(有識者)
・11月の大統領選前に労働組合や自動車業界が反対する通商法案を提出するのは困難(議会)

◆TPPの影響
・関税撤廃は日本国内の農業改革に貢献する(商工会議所)
・共済は今後日米間で対話していかなければならない問題だ(政府)
・公的医療保険制度を変更させる意図はない(政府)
・日本は非関税障壁により米国などと比べて輸入車の割合が低い。市場開放措置が必要(自動車業界)

◆課題
・日本の不安定な政情が最大の問題(有識者)

◆その他
・TPPを通じてアジア地域に政治的・戦略的に関与し、中国との調和を狙う(研究機関)

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