【広がる危機感 3】『生活クラブ生協連合会 加藤好一会長 食の安全脅かす』|日本農業新聞4月21日

 環太平洋連携協定(TPP)で日本農業の存在基盤が崖っぷちに追い込まれるのを、同じ協同組合として看過できない。前のめりな野田佳彦首相は腹の中では、TPP交渉に参加する方向で決めているのではないかと懸念している。

 地方経済で農業の果たす役割は計り知れなく大きい。東京一極集中のゆがんだ日本の中で、かろうじて1次産業が踏ん張って多面的機能を果たしている。農業が衰退すればその機能が失われる。TPPで危惧するのはこの点だ。まず国土の荒廃は、何としても食い止めなければならない。

・組合員も「反対」  

 国産にこだわり、生産者と共に48年近く産直提携を積み重ねてきたが、TPPで農業が衰退すればその存続も危ぶまれる。食品の安全の観点から原産地表示や遺伝子組み換え(GM)食品反対にも取り組んできた。しかしTPPで規制できなくなれば、こつこつとやってきたこれまでの蓄積も無になるかもしれない。生活クラブ生協の存在価値が問われている。

 日本の協同組合が組合員のために行っている共済事業でも、米国の保険業界が日本市場に参入する際の障壁として見直しを迫るとの意図が露骨に出てくるのではないかという点も心配している。

 折に触れ、こうした主張を35万人の組合員に訴えてきたが「よくぞ(TPPに)反対してくれた」との声が圧倒的だ。

・ さらに格差拡大  

 昨年対談した経済評論家の内橋克人氏が強調されていたのは「貧困のスパイラル」からの脱出ということ。賃金下落で購買力が衰え、それが低価格への依存をさらに進める、すると安い輸入品が国内市場を席巻し、結果として賃金がますます下がる――という悪循環のことだ。格差の拡大に歯止めをかけて転換しようとしても、TPPは格差をさらに拡大する。

 米国の狙いは、比較的資産を持った日本の団塊の世代以上の人たちの財布だ。今まで蓄えた財産が一瞬にして持って行かれる。TPPは悪いことばかりで、良いところが何もない。日本の将来像が見えてこない。

 東日本大震災から1年以上経過した今、復旧・復興が遅々として進まない中で、人々はコミュニティーの維持、1次産業の復興や関連産業の再建などに懸命の努力を続けている。

 こうした中で、私たち生協は国際協同組合年の今年、同じ協同組合の仲間であるJAと漁協、森林組合とさらに一致団結し、TPPに断固として反対していく。(聞き手・前田寛)

 かとう・こういち 群馬県出身、54歳。1996年生活クラブ生協連合会計画部長、2000年同専務、06年から現職。

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