【TPP反対 農業だけじゃない Part2①】『俺の思い 若者に響け ラップ歌手』|日本農業新聞4月25日

 「農業だけじゃない医療保険制度ありある解体」「みてみろNAFTA、やられたカナダ、相手は訴訟国家アメリカ」――。4月20日、週末の東京・渋谷。午後8時、仕事帰りのサラリーマンやOL、待ち合わせの若者らでごった返すJR渋谷駅ハチ公口近くで、韻を踏みながらリズミカルに環太平洋連携協定(TPP)を批判する歌声が響いた。歌うのはラップシンガーのshow―k(ショック)さん(26)。ミュージシャンのLBさん(24)と共にTPP反対ソングを含めた6曲を路上で熱唱した。

 足早に通り過ぎる人、振り返る人、遠くで聞いている人・・・、反応はさまざまだ。若い男性は曲の合間に、ショックさんと拳と拳を合わせ気持ちが伝わっていることをアピールした。

 自らもラップを歌う25歳の男性会社員は、ショックさんに励ましの声を掛け、1000円をカンパした。「同じラップをやっている者として、誰が通るか分からない路上で、国や政治家に対してあれだけ痛烈に批判的な意見を言えるのはすごい」と称賛。離れた所から聞いていた、30歳のOLも「政治家がこの国のありようを決め、私たちは決められたことに従うしかない。若者がもっと政治に関心を持ち、TPPについても調べなくてはいけない」と危機感をあらわにした。

 ライブを終え、ショックさんは「路上では99%の人が素通りすると思っていたが、今日は違った。この国のことを考えている若者が増えていると感じた」と満足そうな表情を浮かべた。

 ショックさんは実名を明かしていないが、青森県で生まれ、東京都東久留米市で育った。高校卒業後は仲間8人程度でラップ音楽をやっていたが解散。22歳くらいからソロ活動を始めた。

 TPP反対ソングの歌詞はショックさん自らが考え、LBさんがアレンジした。歌詞の中に出てくる、投資家・国家訴訟(ISD)条項や遺伝子組み換え食品(GM)の表示など詳細な情報は、経済評論家の三橋貴明さんや京都大学大学院准教授の中野剛志さんのブログを見たり、講演会に参加したりして取り入れた。

 曲はインターネット上でも発信し、「TPPを調べるより曲を聞いた方が分かりやすい」「曲としてかっこいい」など若者たちの幅広い支持を得る。25日には、東京・日比谷で開く市民らによるTPP反対集会後のデモに参加し、宣伝カーに乗って曲を披露する。

 都内の特別養護老人ホームで介護士として働きながら、音楽活動に励むショックさん。「年内をめどに反TPP第2弾の曲を作り、多くの人に聞いてもらいたい。若者が政治に関心を持ち、TPPの危うさに気付いてほしい」。音楽を通して熱いメッセージを送る。

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