【TPP反対 農業だけじゃない! part2③】『自動車デザイナー ブログ通じ共感の輪』|日本農業新聞4月28日

 「環太平洋連携協定(TPP)参加は自動車産業だけでなく、日本にとって不利なことばかりだ」。神奈川県茅ケ崎市在住の自動車デザイナー、田中徹さん(65)は、ブログ(インターネット上の日記風サイト)で、TPP参加反対を訴える。ホンダのシティやシビック、フランスのルノーなど、国内外の車のデザインを手掛ける。(社)日本自動車工業会がTPP参加を表明する中、「なぜ賛成しているのか理解できない。今やるべきことは内需拡大だ」と提起する。

 田中さんは3歳の時から車の絵を描き始め、中学生の時に自動車のデザイナーになろうと決意。東京都内の美術大学を卒業し、いすゞ自動車やホンダで車のデザインを手掛け、38歳で独立した。

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 ブログを始めたのは4年前。仕事関連のことを書いてきたが、TPP問題に触れるようになったのは、菅直人前首相がTPPへの参加を検討すると表明した2010年10月からだ。インターネットや本で調べるうちに問題意識を持ち、最近ではTPP問題に特に熱が入るようになった。

 「日本の文化、個性がTPP交渉によって根底から覆される。影響があるのは農業や自動車だけではない。1911年に関税を自国で決める関税自主権を欧米から勝ち取ったのに、放棄してはいけない」
 
 最も懸念するのは、地域の雇用問題だ。日本の自動車産業は、部品を製造する中小企業が土台を支え、その上にメーカーや販売店が存在する構造で、自動車関連で働く人は全人口の約8%を占めるともいわれている。

 それだけに、TPPに参加すれば築き上げてきた構造が崩れ「中小企業が真っ先に打撃を受け、雇用が失われる」と指摘する。

 米韓自由貿易協定(FTA)の締結で、韓国から米国に車を輸出する場合、関税がゼロになるのに対して、日本から米国に輸出する場合には2・5%の関税が掛かる。これを理由に、TPP賛成派は「参加しないと韓国との価格競争に負け、日本からの自動車輸出が減る」と強調する。しかし、田中さんは「それは間違い」ときっぱり。「米国では大衆向けの韓国車に対し、富裕層向けの日本車と、すみ分けができている。関税による日本のハンディはたかだか数万円。関税よりも、むしろ為替変動の方が輸出の増減に影響しやすい」と主張する。

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 ブログを通して共感の輪も広がり始めた。「TPPに参加すれば雇用が失われ、デフレが進む。日本車がますます売れなくなるのではないか」「従来の産業構造ががたがたになり、自動車産業が崩壊する」などの書き込みが相次ぐ。

 「TPP参加によるデメリットの方が大きいと、国民も気付いたのではないか」。田中さんは風向きが変わってきたことを感じ取る。

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