【TPP反対 農業だけじゃない! Part2④】『働く女性たち カフェで気軽に議論』|日本農業新聞5月1日

 新緑が美しい東京都千代田区の日比谷公園。レジャーシートの上にロールケーキやお茶が並ぶ。集まったのは30代のOLや看護師、コンピューターのシステムエンジニア(SE)たち。普通のピクニックではない。手書きのポスターには「勝手に!! TPPカフェ」の文字。環太平洋連携協定(TPP)について気軽に話し合おうと、働く女性たちの発案で生まれた。

 ツイッターを介して男性も集まってきた。現在、求職中という東京都北区在住の熊田彰宏さん(43)は「日本がTPPに参加すれば主権を米国に奪われる」と危機感を持つ。市民の声を無視して進められるTPP交渉に「市民がどう歯止めをかけられるのか、もがいている」と漏らした。

 仕掛けたのは神奈川県相模原市在住のSE、飯野亜紀子さん(37)と横浜市在住の訪問看護師、里知歌子さん(32)。市民の力で持続可能な地域づくりを進める会合で出会い、TPPの勉強会に参加したことで問題意識を持った。

 きっかけは、昨年11月の野田佳彦首相のアジア太平洋経済協力会議(APEC)への出席を前に、JR新橋駅前でTPP反対のちらしを配ろうと里さんが持ち掛けたこと。飯野さんは「ちらしを配るより、ござを敷いてお酒を飲みながらTPPについて話した方が楽しいよ」と提案。レジャーシートを敷いて、道行く人と酒を飲みながら話し合う「勝手にTPP酒場」を開いた。今回のカフェは酒場の発展形だ。

 「TPP賛成というサラリーマンと話したら、投資家・国家訴訟(ISD)条項も知らなかった」と里さん。TPPの本質が知られていない実態を肌身で感じた。

 危機感を覚えた里さんは、さらに路上ミュージシャンの友人を誘って、東京・北千住でも第2弾のTPP酒場を決行。「賛成でも反対でも自分の意見を言ってほしい。無関心なのが一番怖い」と里さん。今後も仲間とカフェや酒場を開いていく計画だ。

 TPPに参加すれば、国民皆保険が脅かされるなど医療への打撃も大きい。里さんは看護師としても、自分が勤務する病院の医師や同僚にTPPの危険性を訴えるメールを送る。

 だが返ってくるのは「なぜ、自分に言うの」「医療は守られているから大丈夫」という言葉ばかり。

 経営難に直面する地方の病院で働く友人にメールを送っても「忙し過ぎてTPPなんて考える暇がない」とつれない返事が戻ってきた。

 それでも、負けない。脳裏に浮かぶのは故郷、熊本県宇土市の風景だ。兼業農家の長女として育ち、「身近なところに水俣(問題)があった。けれど、自分は見ないふりをしてきた。もう問題から目をそむけたくない」。仲間と共にTPP参加阻止に向け、まっしぐらだ。

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