【TPPへの対応 各党幹部に聞く④】『社民党・福島瑞穂党首 これからも絶対反対』|日本農業新聞5月1日

 ――社民党は環太平洋連携協定(TPP)にどう対応するか。

 今までもこれからも、交渉参加に絶対反対だ。TPPは、新自由主義に基づく米国に有利な基準の押し付けでしかない。日本にとっては百害あって一利なし。「小泉構造改革」も同じ構図だった。米国の要望に従って規制緩和を行い、地域や人々の生活を壊した。その後の格差の拡大を見れば失敗は明らかだ。野田佳彦首相はなぜ、同じ過ちを繰り返そうとするのか。全く理解できない。

 ――首相は連休中だけでなく5月18、19日の主要国首脳会議(G8サミット)出席のためにも訪米する。

 TPP交渉への参加を表明するのではないかとの懸念から、4月18日の参院予算委員会で首相にくぎを刺した。国会と国民への説明なしに、米国と約束しないように求めた。首相は、国民の理解が進んでおらず、国会で十分な審議をしていない状況を認め、「何でもかんでも進めるということではない」と言った。だが水面下で交渉参加を密約する可能性もあり、危険な状況が続いている。

・判断する段階にない

 ――環太平洋連携協定(TPP)交渉参加各国との事前協議で関税撤廃の例外を求めている国がないことなど、高いハードルが見えてきた。

 当然のことだが、例外なしに関税を撤廃すれば日本の農業は成り立たない。私の名前は瑞穂だが、日本は「豊葦原(とよあしはら)の瑞穂(みずほ)の国」ではなくなる。戸別所得補償制度で農家を応援していこうという民主党政権が、一方で農家をつぶそうとしている。農業の体質強化はTPPとは全く別の問題だ。

 米国との事前協議は、既に事実上の交渉と化している。改選を控えるオバマ大統領にとってTPPは、日本を相手にこれだけ輸出が増える、これだけ自国の雇用が増えるという宣伝の手段だ。米国産牛肉の輸入規制緩和も当然求めてくるだろうが、新たに牛海綿状脳症(BSE)感染牛が見つかった今、絶対に受け入れられない。

 ――野田佳彦首相は、TPP交渉参加の是非の判断には「国民的議論」が必要との認識だ。

 全く議論などできていない。TPP交渉の現状や事前協議の内容も情報は不十分で、そもそも議論の材料が不足している。判断する段階にないのは明らかだ。しかし消費税増税や原発の運転再開問題をみれば、国民が反発していても、官僚や経済界の声だけを聞き、首相は結論ありきで議論を進めかねない。

 だが日本の主権者は国民だ。政府は、個人では外交交渉をすることができない国民から、その権限を託されているだけだ。TPPについても情報を当然開示しなければならないのに、できるだけ知らせないようにしている。情報を公開すれば反対の声が高まるからだ。

 世界は今、TPPのような新自由主義に基づく政治を否定しようとしている。米国ニューヨークのウォール街などでのオキュパイ(占拠)運動がその例だ。新自由主義がもたらした「1%の富裕層と99%の貧困層」という格差をどう解消するかが政治の課題なのに、野田首相は時代遅れの政策を選ぼうとしている。

 TPP推進派の民主党の前原誠司政調会長は「国内総生産(GDP)1.5%の第1次産業のために、98.5%が犠牲になっている」と言ったが全く違う。農家をはじめ第1次産業の人々は、犠牲になっている「99%」の貧困層側にいる。この「99%」で連帯し、TPPに反対していくことが重要だ。そのために社民党は、TPPの危険性をより多くの人に知ってもらおうと勉強会を開くようにしている。

(聞き手・岡部孝典)(おわり)

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