『セーフガード非力 米韓FTA基に分析 全中レター』|日本農業新聞5月2日

 JA全中は、TPPをめぐり、農産品でセーフガード(緊急輸入制限措置)が導入されても、輸入を抑える効果は期待できないとの分析結果をまとめた。米韓自由貿易協定(FTA)では、農産物を対象としたセーフガードを発動する輸入量の基準が、現実には発動できないほど高く設定されている――といった問題点を牛肉などを例に指摘。TPPは全品目の関税撤廃が前提で米国が交渉に参加していることから、TPPでも「米韓FTAにおけるセーフガード規定に類似した合意内容になる可能性が高い」と結論付けている。

 「国際農業・食料レター」としてまとめ、全中のホームページに掲載している。

 米通商代表部(USTR)のカトラー代表補は、TPP交渉では関税撤廃の例外を認めないが、重要品目への配慮として(1)関税の長期的・段階的撤廃(2)セーフガードの導入――を挙げている。ここでのセーフガードは、一定の基準輸入量を決め、それを超えた場合は関税を引き上げることができる仕組みだ。

 全中は、米韓FTAの農産品セーフガードを分析。牛肉の場合、FTA発効初年の基準輸入量は27万トン。以降毎年6000トンずつ増える。しかし2000年以降、米国産牛肉の輸入量が最も多かったのは02年の21万トン。直近の11年は13万5000トンで、この2倍に増えないと発動できない。

 一方、世界貿易機関(WTO)協定に基づく特別セーフガードも、基準輸入量を決め年間でそれを超えると追加関税を課す仕組みだ。例えば日本のバターの基準輸入量は過去3年間の平均輸入量より25%多い水準で、同セーフガードを日本はこれまで発動してきた。

 TPP交渉では現在、協定締約国間でだけ適用される地域セーフガードを設けるべきだとする意見が出ている。

 全中は効果がないセーフガードだけで農産物輸出国と競争ができるのか、日本政府は明確に示すべきだとしている。

※引用者注:全中・国際農業・食料レター12年4月号(pdf)⇒ http://bit.ly/Je9Hi2

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