『TPP 中立の維持に懸念 愛知県弁護士会が研究会』|日本農業新聞5月3日

 愛知県弁護士会が5月下旬、環太平洋連携協定(TPP)問題の研究会を立ち上げる。TPP交渉で、弁護士の中立性を支える日本独自の制度が非関税障壁として見直しを迫られることが懸念されるためだ。研究会ではTPPの情報収集や分析を行う。弁護士会がTPPで研究会を発足させるのは全国でも珍しい。

 同県弁護士会は、司法問題対策委員会の下に各種の研究会を設置。法曹制度や法科大学院など幅広いテーマで弁護士同士が研究・議論している。TPPの研究会もその一つで、5~10人が情報を収集・分析、議論し公表する。同委員会委員長の鈴木秀幸弁護士は「TPPの課題は弁護士の間でもまだ共有されていない」と述べ、研究会の重要性を強調する。

 研究会でのテーマの一つが日本の弁護士制度だ。日本では、都道府県弁護士会・日本弁護士連合会(日弁連)に登録しなければ弁護士業務ができない。日弁連が資格の審査や登録手続き、資格の停止を行うなど自治権が認められているためだ。公正な判断には、政府の監督下ではなく独立している必要がある。

 研究会長を務める名古屋市の岩月浩二弁護士はTPP交渉への参加で、この制度が非関税障壁として問題視され、弁護士会への登録が任意となれば「法務省などの監督下に置かれ、弁護士の国家権力からの中立性が保てなくなる」と懸念する。またエコカー減税など日本独自の規制や支援が、非関税障壁として全て違法・無効となる危険性もあるという。

 研究会では“ミニTPP”といわれる米韓FTAの動向も踏まえて検証する。岩月弁護士は「TPPへの参加は日本の根幹を揺さぶる深刻な問題で、格差を広げる。研究会で危険性を明らかにし周知していきたい」と話す。

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