『「審議、まだ3割」 BSE対策見直しに時間 食品安全委』|日本農業新聞5月4日

 日本の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題で、米国が保険、自動車とともに、日本の市場開放に強い関心を示している牛肉。食品安全委員会のプリオン専門調査会は、輸入牛肉に設けている月齢制限など牛海綿状脳症(BSE)対策の見直しについて議論を重ねているが、厚生労働相からの諮問内容は幅広く、答申には時間が必要との見方が強まっている。

 同調査会がBSE対策の見直しについて議論をスタートしたのは1月。米国、カナダ産などの輸入牛肉の月齢を現行の「20カ月齢以下」から「30カ月齢以下」に引き上げた場合のリスク評価の他、BSE発生の原因となる異常プリオンがたまりやすい特定部位に関わる規制緩和についても安全性を審議する。

 同調査会は4月までに、毎月1回のペースで計4回会合を開いている。事務局や専門家、関係省庁などが、日本の他、米国やカナダ、欧州連合(EU)などから膨大な資料を取り寄せ、各国のBSE対策、飼料規制の効果、BSE発生状況、感染実験結果などを話し合っている。

・短期間での答申困難
 
 BSE発生で2003年12月に輸入を停止した米国産牛肉について、食品安全委員会が05年12月に輸入再開を答申した際、委員会は議論に約半年費やした。しかし今回の議論では、月齢制限に関して「30カ月齢以下」と「30カ月齢よりさらに引き上げた場合」のリスク評価をし、規制緩和を検討する対象国も米国、カナダ、オランダ、フランスと多い。

 短期間で安全性を評価するのは難しい状況で、同調査会は「科学的根拠を基に検討を進めている。期間は区切っていない」ことを強調している。

 専門委員の一人は「(典型的なBSEとは異なる)非定型BSEやクロイツフェルト・ヤコブ病に関する資料が少なく、情報収集の段階。これまでに集まったデータは必要量の半分ほど。全体の審議も3割が終わったくらい」と話す。

・「非定型」がポイント 

 今後の審議は、米国で今年4月に確認された4例目の感染牛と同じ「非定型BSE」をどう評価するかがポイントとなりそうだ。日本も含め世界で60頭以上発生しているが、発生原因が不明で飼料規制など対策が難しいためだ。ある専門委員は「非定型は潜伏期間が長く、高齢牛しか発生しないが、分からない点が多い」と言う。

 30カ月齢以下の感染牛も発生している中、若齢牛の安全性をどう評価するかも焦点の一つになる。実験などを基に若齢牛は安全だとしても、「消費者は十分に理解できず、納得は得られないだろう」と指摘する専門家もおり、十分な議論と説得力のある答申を調査会に求める声が強まっている。

・全力を挙げ議論

 食品安全委員会プリオン専門調査会の酒井健夫座長(日本大学生物資源科学部教授)の話 答申に向けて全力を挙げて議論している段階だ。科学的データから総合的に検証している。努力と過程を踏まえてまとめる答申を国民に見てほしい。

 リスクコミュニケーションについては、国民の目線で議論を深めることが大切だと認識している。

 専門調査会は全て公開の場で審議している。何について、どのくらいの時間を掛けて話し合っているかはオープンになっており、国民に関心を持ってもらいたい。

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