『韓国総選挙で与党勝利 難題背負う国民』|日本農業新聞5月6日

 4月にあった韓国総選挙は、米韓自由貿易協定(FTA)の是非が争点の一つだった。自由貿易や規制緩和を推し進める米韓FTAをめぐっては不平等条約との批判から昨年来、反対運動が激化。総選挙は廃止・再交渉を求める野党と与党が激突、有権者の審判に注目が集まった。
 
 結果は、事前の世論調査を覆すものだった。KBSを含むメディアの大半が、最大野党の民主統合党が第1党になると見込んだが、米韓FTA賛成派の与党・セヌリ党(旧ハンナラ党)が全300議席の過半数(152)を確保した。
 
 さまざまな要因が挙げられるが、一つには、野党・民主統合党の大統領時代に米韓FTAが推進され、民主統合党が「廃止を主張するのは二枚舌」との批判があった。
 
 セヌリ党の非常対策委員長で、次期大統領候補にも名前が挙がる朴瑾恵氏の活躍も見逃せない。1970年代、農村の道路建設や農家所得増を目指したセマウル(新村)運動を推し進めた朴正煕前大統領(故人)の長女という抜群の知名度を生かし、地方遊説を行い支持拡大に貢献。間違いなくセヌリ党勝利の立役者の一人だ。
 
 野党連合の敗北で終わった選挙だが、地殻変動は確実に起きたと見ていい。米韓FTAを強行採決したセヌリ党の候補は総勢60人が落選。国会の米韓FTA廃止・再交渉勢力は87議席から140議席に増えた。
 
 はっきりしたのは与党の退潮ぶりであり、米韓FTAに対する国民の強い不安、不満だった。韓国民は大変な難題を背負った。環太平洋連携協定(TPP)という同種の問題に直面する日本にとって多くの示唆を与えるだろう。(金哲洙)

Reply · Report Post