『韓米FTA阻止汎国民運動本部共同代表 朴錫運氏に聞く 可視化で身近な問題に』|日本農業新聞5月8日

 4月11日投開票の韓国総選挙で、米韓自由貿易協定(FTA)の廃止・再交渉を公約に掲げた、最大野党の民主統合党と統合進歩党の野党連合は過半数を確保できなかった。農民団体や労働団体、環境団体などで組織し、米韓FTA反対運動を続けてきた「韓米FTA阻止汎国民運動本部」の共同代表で、新自由主義に反対する市民活動家の朴錫運氏に、これまでの活動から得た教訓や展望などを聞いた。
 
  ―総選挙の結果をどう受け止めますか。
 
 正直、ショックだった。今回の総選挙で与党少数・野党多数の国会体制をつくり、米韓FTA廃止・再交渉を実現しようと思った。しかし野党連合が負けてしまった。
 
 一部には「米韓FTA問題を公約に掲げたことが敗北の原因」との指摘もあるが、そうではない。逆に民主統合党の指導部が、米韓FTAに対する立場を明確にしていなかったことが要因だ。
 
 民主統合党が与党時台に米韓FTAを推進したことから、与党のセヌリ党(旧ハンナラ党)は「二枚舌」と批判したが、民主統合党の一部議員のように「勉強を重ねて米韓FTAは、間違っていたことを確認した。そのため廃止する」と明確に表明すべきだった。しかし民主統合党は、あやふやに対応し国民が背を向けることになった。
 
  ―運動を今後、どう展開しますか。
 
 公正な報道と言論の自由の確保を求める報道機関の労働組合のストライキや、解雇者の自殺を取り上げ労働規制の緩和の問題点を訴えている自動車メーカーの労組の運動など、自由化路線に対抗する闘いを積極的に支援し政府・与党に対する批判を高める必要がある。その中で、12月の大統領選挙に向けて米韓FTA廃止運動を徐々に軌道に乗せなければいけない。
 
  ―日本では、JAグループをはじめ幅広い団体が環太平洋連携協定(TPP)交渉参加反対運動を進めています。どう見ていますか。
  
 TPP反対運動が日本で広がっていることは非常に励みになる。重要なのは、TPPの内容を国民にいかに伝えるかだ。
 
 韓国では当初、情報が全くなく米韓FTAの本質を暴くことができなかった。また、あたかも農業だけの問題であるかのようなムードだったため、反対運動に国民の共感を得るのが難しかった。
 
 しかし米国がカナダ、メキシコと結んだ北米自由貿易協定(NAFTA)の影響の実態報道や、米国の医療保険制度の問題点を取り上げたマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画「シッコ」の上映などを通じて世論が変わった。特に「シッコ」は米国の医療保険制度のずさんさを暴き、国民皆保険制度の崩壊による恐怖を韓国の国民に身近に感じさせ反響が大きかった。
 
 身近な問題であることを具体的に示す「可視化」に力を入れることで、多くの国民が味方になることが分かった。(聞き手・金哲洙)

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