『TPP問題 次のヤマ場はG20 鍵握る民主PTの議論』|日本農業新聞5月8日

 野田佳彦首相は4月30日に行ったオバマ大統領との首脳会談で、環太平洋連携協定(TPP)について交渉参加の表明を見送り、日米間の事前協議を前進させることで一致するにとどめた。しかし、推進派は激しく巻き返しており、先行きは不透明だ。与野党の反対・慎重派議員らは「次のヤマ場を6月18、19日に開かれる主要20カ国首脳会議(G20サミット)と見定め、攻防に備え始めた。
 
 米国では通商交渉の権限が議会にあり、承認手続きに最短で90日かかる。与野党の反対・推進派議員が次のヤマ場を6月のG20首脳会議に据えたのは、ロシアで9月に行われるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議などの約3カ月前で、米国議会の承認手続きの日数を含めて大きな節目になるとみられるためだ。
 
 APEC首脳会議が終われば、11月の米大統領選が本格化し、TPPを含む貿易自由化交渉は選挙後まで一時的に停止すると予測されることも、反対・慎重派議員がG20首脳会議を警戒する理由だ。とはいえ、交渉参加の賛否をめぐる攻防は一進一退で、次のヤマ場がいつ訪れるかは不透明だ。首相が訪米を予定する5月18、19日のG8サミットなど首脳レベルの会談が相次ぐためだ。
 
 議論の行方の鍵を握るのは、民主党の経済連携プロジェクトチーム(PT、櫻井充座長)。同PTは首相の訪米直前に論点メモ案を提示した。今後の主な論点は、①TPPに限らず、日中韓などを含めた経済連携にどう取り組むのか②日本として関税を撤廃する品目の割合(自由化度)をどのくら(引用者注:い)に設定するのか―などの戦略構築で、5月の連休明けから集中的な議論を開始する。
 
 同PTの集中論議が、TPP一辺倒で走ってきた政府姿勢を見直すきっかけになるのか、それとも推進派の巻き返しにに再び直面するのか。息つく暇もない攻防が続く。
 
 オバマ大統領は日米首脳会談で、自動車、保険、牛肉の3分野について米国側の関心を伝えた。事実上の対日圧力といえる。TPPの危険な実態をどこまで明らかにできるかも課題だ。

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