『安易な妥協に警戒 「内政干渉」強まる可能性』|日本農業新聞5月10日

 日本郵政のがん保険への参入には、米国の議会や保険業界が反発しており、4月30日の日米首脳会談でもオバマ米大統領が名指しで「国内の関心が高い」と指摘したばかりだった。今回の先送り検討は、こうした米国の”外圧”に屈したといえる。TPPに慎重な国会議員は「内政干渉」と批判、今後も米国の要求が強まり、日本政府が安易な妥協を重ねるのではないかと警戒している。
 
 日米首脳会談でオバマ大統領は自動車、牛肉、保険の3分野について、事実上、対応を迫った。大型連休後に来日した米通商代表部(USTR)のカトラー代表補も、外務省幹部らとの意見交換で同様の考えを示し、米側の圧力が強まっていた。4月27日の郵政民営化法改正で、政府が株式を100%保有し経営に強い関与を残す日本郵政が、がん保険などの新事業を始められるようになったことを「不公平」とみているためだ。
 
 「露骨な内政干渉だ」と、民主党のある慎重派議員。一方、同党の別の慎重派議員は「日本からわざわざ譲歩している」と批判する。米国はこれら3分野で、まだ具体的要求を示していないからだ。がん保険参入を見送っても、TPP交渉参加の条件としてさらなる譲歩を求めてくる可能性がある。
 
 牛肉分野については昨年12月、厚生労働省が内閣府の食品安全委員会に輸入牛肉の月齢制限の緩和を諮問している。今年4月に米国内で牛海綿状脳症(BSE)感染牛が確認されたが、政府はこの議論に「何ら影響はない」(藤村修官房長官)として、解決を図ろうとしている。
 
 自動車分野では、米国の自動車業界が日本の交渉参加に反対し、米国車の輸入拡大を日本に求めている。しかし日本ではすでに自動車の関税はゼロ。このため「何を要求してくるのか分からない」(外交筋)として、協議の進展には時間がかかるという見方もある。
 
 だが米韓自由貿易協定(FTA)では、米側の安全基準に適合すれば、一定台数をそのまま韓国に輸出できるという条項が盛り込まれた。6月のAOEC貿易担当相会議やG20サミットなどを控え、自民党の慎重派議員は「政府は交渉参加に向けてどんどん妥協しかねない」と懸念を強めている。

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