『TPP参加影響 果樹生産1400億円減 農水省試算の7倍 東大大学院グループ』|日本農業新聞5月12日

 環太平洋連携協定(TPP)に参加すれば日本の果樹生産額は約1400億円減少する。―との試算を、東京大学大学院の鈴木宣弘教授らの研究グループがまとめた。TPPの原則通りに関税が全廃されれば、生果や果汁などの輸入の増大と価格の下落を招き、国産の生産量が減少すると見込んだ。濃縮果汁などに影響を限定した農水省の試算の7倍に当たる。試算を依頼した日本園芸農協連(日園連)は、あらためてTPP交渉参加を阻止する運動に力を入れる方針だ。(島村一弘)
 
 生産額の減少が最も大きかったリンゴの場合、試算では、価格と生産量のこれまでの関係を基に価格が1%下がると、生産量は4年間で1.4%減少すると推計した。また生果の関税(17%)撤廃で輸入品の価格も下落、連動して国産価格は14.5%下がると見込み、生産量は20.3%減ると試算した。また果汁の関税(34%)撤廃による果汁輸入の増加で、国産リンゴの生産量は0.9%減ると試算。生産量の減少率は合計21.2%とした。生産量の減少と価格の下落で生産額の減少は559億3000万円になった。
 
 ミカンも同様に試算。オレンジの生果と果汁の関税撤廃で国産ミカンの価格は24.2%下がり生産量は20.6%減少、生産額は435億3000万円減ると見込んだ。
 
 試算は7品目で行った。他の品目の生産の減少額と生産量の減少率(かっこ内)は①ブドウ=319億9000万円(16.6%)②梨=85億7000万円(4.8%)③甘夏=9億8000万円(5.3%)④ハッサク=6億9000万円(2.7%)⑤ネーブル=1億6000万円(5.5%)。生産額は、7品目合計で1418億5000万円減る。
 
 果実の総産出額は2010年が7497億円だった。
 
 農水省は、かんきつ類とリンゴ、パイナップルで試算。関税撤廃で濃縮果汁と缶詰が輸入に置き換わるとして損失は210億円と見込んだ。
 
 鈴木教授らは今回、関税撤廃で他の作目の農家が果樹生産に転換し、過剰生産で価格が下落した場合の影響などは織り込んでいない。同教授は「関税撤廃以外の影響を加味すれば減少額はさらに増える」と指摘する。
 
 日園連は「日本の果樹農業への影響は大きい。JAグループなど他の農業団体とも連携し交渉参加阻止へ向け積極的な運動を展開する」と話す。試算は、日園連が28日に東京都内で開く講演会で鈴木教授が報告する。

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