『年内に交渉開始 日中韓FTA 首脳会談で合意』|日本農業新聞5月14日

 野田佳彦首相と中国の温家宝首相、韓国の李明博大統領は13日、北京の人民大会堂で開いた首脳会談で、日中韓3カ国による自由貿易協定(FTA)について年内に交渉を開始することで正式に合意した。WTO(世界貿易機関)ドーハ・ラウンド(多角的貿易交渉)が行き詰まる中、米国などと事前協議が続く環太平洋連携協定(TPP)に限らず、幅広い経済連携に日本も本格的に乗り出した。しかし、世界では食料危機の再燃が懸念されており、食糧安全保障をどう確保するかが大きな課題となる。
 
 日中韓FTAについては、妥結時期の目標や、どの程度の関税撤廃を目指すのかなど具体的な内容は示さなかった。3カ国間では、経済分野で初の協定となる投資協定の署名も行われた。野田首相は日中韓首脳会談後の共同記者会見で、「投資協定への署名は地域のルールづくりに向けた重要な進展であり、大変喜ばしい」と強調した。その上で「投資協定の署名を弾みとして、高いレベルの経済連携を目指したい。FTA年内交渉開始で一致したことは大変大きな成果だ」と述べた。
 
 温首相は、日中韓FTAの年内交渉開始について「重大な戦略決定だ。早期実現に向けてともに努力していくべきだ。肝心なのはお互いの重大な関心を尊重かつ配慮し、矛盾と意見の相違を適切に処理し、共通利益をしっかり守ることだ」と語った。李大統領は「3カ国の協力は、北東アジアの繁栄と安定のためだけではなく、世界の繁栄と安定に寄与する」と述べた。
 
 野田首相は会談で、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴い中韓両国が実施している渡航制限や日本産食品の輸入規制について、撤廃や緩和も要請した。これに対し、温首相は最新の情報提供を求めた上で「適切な措置を検討したい」と述べた。李大統領は言及しなかった。
 
 3首脳は、東日本大震災を踏まえた防災分野の協力強化や、北朝鮮が核実験強行の構えを見せる中、挑発行為の阻止を目指して連携を強化することでも一致した。
 
 日中韓FTAをめぐっては、韓国が中韓FTAを優先し、3カ国のFTAに慎重な姿勢を示してきた。米国に厳しい条件をのまされた米韓FTAで国内が混乱したことに加えて、日本の製造業などの競争力を警戒したためとみられる。この結果、日本が求めた即時交渉開始ではなく、「年内」と時期をずらすことで折り合った。

※引用者注1:外務省HP日中首脳会談(概要)のページ⇒ http://www.mofa.go.jp/mofaj/kinkyu/2/20120513_222956.html
注2;外務省HP日韓首脳会談(概要)のページ⇒ http://www.mofa.go.jp/mofaj/kinkyu/2/20120513_201831.html
【重要】外務省HP日中韓投資協定の署名のページ(協定pdfあり)⇒ http://www.mofa.go.jp/mofaj/kinkyu/2/20120513_125930.html

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