『推進派が巻き返し 自由化定義付け"鍵" TPP 民主PTで攻防再燃』|日本農業新聞5月16日

 民主党の経済連携プロジェクトチーム(PT、櫻井充座長)が16日から、環太平洋連携協定(TPP)のメリットを手始めに、経済連携に関する戦略構築に向けた集中的な議論を始める。推進派の巻き返しは必至で、6月18、19日に開かれる主要20カ国首脳会議(G20サミット)などを視野に、交渉参加の是非をめぐる攻防が再燃しそうだ。貿易自由化を同定義付けるかが論戦の鍵を握る。
 
 「日本はTPPに参加すべきだ」。10日に行われた民主党の経済連携PTの総会で、蓮舫参議院議員(前行政刷新相)が推進論を展開し、会場が一瞬にして緊迫感に包まれた。
 
 総会では、今週から始まる本格的な論議を前に自由討議をしていた。TPPの是非がテーマではなかっただけに、唐突感があったことも慎重派議員らの戸惑いを招いた。
 
 すぐに反論したのが山田正彦前農相。蓮舫氏が「貿易収支の悪化」をTPP交渉参加の理由に挙げたことに対し、「貿易収支が減ったのは企業が海外に進出したためで、今に始まった現象ではない」と指摘し、専門の農業分野ではない経済論争で参加論を一蹴した。
 
 10日の民主党経済連携PTでは、別の推進派議員が「まずはオーストラリアとの経済連携協定(EPA)を進めるべき。そのために農業分野で一定の妥協が必要だ」と述べる場面もあった。
 
 これに対し、山岡達丸氏(衆・比例北海道)が翌11日の総会で「衆参両院の農林水産委員会は日豪EPAの交渉参加時に重要品目を明示した決議をした。国会決議の内容を党が勝手に決め直すことは許されない」と反論したが、序盤戦から推進派と慎重派が激しいつばぜり合いを演じた格好だ。
 
 先週の党PT総会では、逢坂誠二前総務政務官が「TPPはあまりに極端。私は反対の立場を明確にする」と述べるなど、慎重論を支持する声も広がった。ただ、推進派の巻き返しは激しく、ある慎重派議員は「蓮舫氏は野田グループのメンバー。野田グループを中心に推進派が巻き返しに入った現われだ」と警戒する。
 
 ◆TPPをめぐる米国の対日要求・批判
 
  【自動車】日本の自動車市場は閉鎖的だ
  【保険】がん保険を売るな
  【牛肉】米国産牛肉の輸入規制撤廃!!
  
・なし崩し的譲歩懸念

 野田佳彦首相は、日本と中国、韓国の3カ国による自由貿易協定(FTA)の年内(引用者注:交渉)開始で合意した13日の日中韓首脳の共同記者会見で、「TPPと日中韓FTAを並行的に追求し、相互に刺激し、全てが活性化することを期待する」と述べた。政府の前のめり姿勢は変っていない。オバマ米大統領が4月30日の野田首相との首脳会談で、日本に見直しを求めたのは自動車、保険、牛肉の3分野。慎重派の間では「自動車などでなし崩し的な譲歩を迫られる」ことへの懸念も強い。
 
 福島伸享氏(衆・茨城)は「最も重要なのは貿易自由化の定義。世界各国では相手に開かせ、自国は守ることを自由化と位置付けている」と強調、自由化の定義でまずは防波堤を築く方針だ。

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