『大学生も知らないTPP』|日本農業新聞(北関東版)5月16日

 先日、ある大学の研究室の授業を受講する機会があった。都市計画を学ぶこの研究室は、山村に足を運んで支援活動をしている。取材したいと頼んだら「それなら授業に参加した方が早い」と誘われたのである。
 
 せっかくなので環太平洋連携協定(TPP)の賛否を聞いてみた。学生ら8人の答えは賛否が半々に割れた。
 
 実家が東北で林業を営む学生は「反対」。先駆けて自由化された林業は森林荒廃が深刻化し、農業も二の舞になると心配していた。一方、都内出身の学生は「賛成」。日本は貿易立国なので、工業製品の輸出を伸ばさないと日本経済は浮揚しないと言うのが理由だった。
 
 賛否は違えど、学生の答えに共通していたのは「TPP=農業対工業」という構図。医療や保険などの分野でも悪影響を受ける懸念があることを伝えると驚いた様子だった。
 
 今回出会った学生の大半が、研究室でまちづくりを学び、卒業後は地元に帰り、行政マンとして故郷を盛り上げたいと話していた。そんな若者がTPPの危険性を十分知らされないまま、地域崩壊につながりかねないTPP参加が決まってしまう―。そんな理不尽があってはならない。
 
 あの手この手で参加を目指す前に、政府はTPPの情報を開示し、国民的議論を喚起する約束をきっちり果たしてほしいとあらためて感じた。     (K)

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