『TPPメリットとりまとめ 実現性、国益 検証なし 政府』|日本農業新聞5月17日

 政府は16日、環太平洋連携協定(TPP)で「期待されるメリット」をとりまとめた文書を、民主党経済連携プロジェクトチーム(PT、櫻井充座長)の総会に提出した。ただ、日本経団連など業界団体との意見交換や地域シンポジウムで出た意見をそのまま掲載しており、内容の真偽は検証していない。慎重派議員からは「TPP賛成の業界団体の言い分をそのまま載せても無意味だ」と指摘が出ている。
 
 文書は内閣官房がまとめた。政府による業界団体との意見交換や、マスコミ主催の地域シンポジウムのパネリストらの意見から抜粋したものだ。業界団体は、日本経団連の他、経済同友会、日本自動車工業会、日本商工会議所など。日本のTPP交渉参加に賛成の団体の意見が並ぶ。
 
 総論では「アジア太平洋地域の経済成長の取り込み」や「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築」に加え、「日米関係の一層の発展強化」「わが国農業の成長産業化・競争力強化の契機」といった意見を「メリット」と掲載する。
 
 13項目にわたる各論についてもまとめた。物品市場アクセスの分野では「他国の輸入関税削減・撤廃」や「食料・資源の輸出数量制限・輸出税の禁止」を挙げる。
 
 投資の分野では「投資家・国家訴訟(ISD)条項の設置」、衛生植物検疫(SPS)分野では「他国への農産物輸出にかかる規制の撤廃・緩和」「わが国への輸入製品の安全性の確保」をメリットとした。
 
 だが政府は、これら「メリット」の実現性や本当に日本の国益になるのかといった検証をしていない。総会後、ある慎重派議員は「推進派が言ってきたことを並べただけで実現不可能なものも含まれる。これで国益を守れるのか」と指摘した。

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