『大島TPP政府代表 経験豊富な調整型 WTO軽視との見方も』|日本農業新聞5月19日

 TPP交渉参加国と事前協議を行う政府代表に大島正太郎氏(68)を起用した。大島氏は2002年から世界貿易機関(WTO)一般理事会議長を務めるなど国際交渉の経験が豊富。各業界や加盟国の利害をバランスよく調整するため国内外から信頼を集めた。
 
 04年に実現したドーハ・ラウンド(多角的貿易交渉)の枠組み合意では、農業の重要品目を関税大幅引き下げの別扱いにした他、上限関税の設定を先送りするなど影響を受ける産業に配慮。このため、「関係省庁の納得感があり、農林議員からも一定に評価された」(政府関係者)。
 
 政府は昨年12月、TPP事前協議の政府代表を置くことを決定。次官経験者らの就任を模索したが、米国から自動車の非関税障壁など難題を突きつけられていることから「引き受けてがなく、人選が難航していた」(同)。大島氏は当初から候補に挙がっていたが、WTO加盟国間の紛争を処理する上級委員だったため、政府代表への就任は困難と見られていた。
 
 WTO上級委員は1期4年で、通常は2期8年職務に就く。大島氏が1期で退職し、TPP協議政府代表になる背景には政府の強い要請があったとの見方が有力だ。大島氏が退職した上級委員のポストはWTO発足以来、基本的に日本人が占めてきた。大島氏の後任に日本から2人が立候補したが、韓国にポストを奪われた。今回の人事は「TPPを重視し、WTOを軽視するもの」という批判も出そうだ。

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