『TPP秘密交渉に不満 情報開示法案を提出 米国上院国際貿易小委員長』|日本農業新聞6月4日

 米国上院の国際貿易小委員長を務める有力議員が、環太平洋連携協定(TPP)など貿易交渉の情報開示を米通商代表部(USTR)に求める法案を提出した。TPPは秘密交渉のため、米国でも関係する一部の議員しか情報を入手することができず、情報を隠す政府への不信感が噴出した。交渉内容が広く国民に知らされないTPPの危険性が浮き彫りとなった格好で、日本でも与野党から情報開示の法制化を求める声が上がり始めている。(岡部孝典)

 法案の正式名称は「貿易交渉に対する議会による監督法」。民主党のロン・ワイデン上院議員(63)が5月23日に提出した。法案はUSTRに対し、TPPなど米国が進める貿易交渉の資料を提供するよう命じる。機密文書を含め、連邦議会議員や議員秘書らが請求できるとしている。

 同議員は法案に付属した声明文で「貿易協定の交渉に当たるのはUSTRだが、米国の憲法上、外国との通商を監督する責任は議会にある」と指摘する。また、石油関連企業のハリバートンやシェブロン、米国研究製薬工業協会、ケーブルテレビ大手のコムキャスト、米国映画協会の名前を挙げた上で「TPP交渉では米国企業が内々に助言を求められているのに、議員の大半は内容を知らされていない」と不満をあらわにしている。

 同議員はオレゴン州選出で、上下院を合わせて勤続30年超の有力議員。上院でTPPについての議論を担当する財務委員会の国際貿易小委員長を務めており「影響力は大きい」(外交筋)。米韓自由貿易協定(FTA)承認の際にも賛成票を投じた自由貿易論者だが、政府によるインターネットの規制強化には批判的として知られる。TPP交渉では知的財産分野でネット規制についても議論されているため、懸念を示しているとみられる。

 TPP交渉を主導する米国でもこうした動きが出ていることに、日本の国会議員も反応する。

 民主党の首藤信彦氏(衆・神奈川)は「あまりにもひどい秘密交渉に米国の議員すら疑念を抱いている。この動きを各国に広げTPP包囲網を築くべきで、日本は断じて交渉に参加してはならない」と主張。自民党の議員連盟「TPP参加の即時撤回を求める会」の森山裕会長は「日本政府は情報を開示せずに、事前協議と称して事実上の交渉をしている。日本でも情報開示を求め、立法も含めて対応を考えなければならない」と指摘する。

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