『TPP、民主党内の攻防再び 小沢系除名で前進 首相、交渉参加9月表明探る』|日本経済新聞6日

 野田佳彦首相が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加表明の時期を探り始めた。TPPに反対してきた民主党内の小沢一郎元代表に近いグループが党を離れ、TPPを進めやすい環境がととのってきたからだ。首相周辺は9月の参加表明をめざす。だが、党に残った非主流派はTPPを野田政権の攻撃材料に据えており、党内の攻防は激しくなりそうだ。

 「原子力発電所を再稼働し、8月中下旬にも消費増税関連法案は成立する。次はTPPだ」。首相周辺は最近、首相にこう進言した。首相も早期の参加表明に前向きな姿勢を示しているという。

 TPP反対派に押される形で、昨年11月に党がまとめた提言は「(参加表明を)慎重に判断する」よう政府に促した。6月26日の消費増税法案の衆院採決で反対し、党執行部が除名する議員の多くはTPPにも反対していた。反対派が減り、首相周辺は「参加表明をしやすくなった」と語る。

■「決める政治」狙う

 9月には任期切れに伴う党代表選を控える。首相と親しい民主党議員は「原発再稼働、消費増税に続きTPP参加表明で『決める政治』を示せば支持率は上がる」とし、代表選での再選戦略にも有利になると見込む。

 9月には通商問題を話し合うロシアでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)出席や、国連総会で演説するための米国訪問を計画している。外務省や経済産業省も、こうした機会を捉えた首相の参加表明に期待する。

 だが、民主党内のTPP反対派は9月の参加表明の可能性を感じ取り、警戒を強めている。5日に開いた民主党の経済連携プロジェクトチーム(PT)総会では、TPP交渉参加に反対する意見が相次いだ。消費増税法案の採決で反対票を投じた山田正彦元農相や川内博史氏らは「牛肉と保険、自動車の分野で米国の要求をのんでまで交渉に参加すべきではない」などと反対論を唱えた。

 この後、山田氏と川内氏は国会内で会い、APECでのTPP交渉参加表明を阻止する方針で一致。党内の反対派でつくる「TPPを慎重に考える会」を頻繁に開き、首相をけん制していくことも申し合わせた。

■「集団離党」の声も

 経済連携PTの役員を務める山田、川内両氏は増税法案に反対したため、執行部は9日にも党員資格停止2カ月の処分を正式に決める。執行部が認めない限り、経済連携PTを含む党の会議には出られなくなる。首相に近いTPP積極派は「出席を禁止すべきだ。反対派を排除した場で参加表明の意見集約をすべきだ」と意気込む。

 TPP反対派からは「政府や執行部が参加表明を決めれば集団離党する」との声も上がる。9月の代表選でTPPが大きな争点になれば、再選を狙う首相を支持する議員票が減る可能性もある。首相は代表選の再選戦略や小沢元代表を除名した後の党運営を考慮したうえで判断を迫られる。

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