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nt8500 · @kz8500

9th Mar 2013 from Twitlonger

このテキストは、シャープのサムスン出資に関する
青木文鷹さん(アナリスト)のニコ生放送を、
ツイート実況風に文字起こししてみたものです。

■ソース:ニコニコ生放送 【大人の社会科】雑談編
『シャープの増資とかサムソン電子の技術力とかあの法則とか』
  http://live.nicovideo.jp/watch/lv129217101

■放送のきっかけになった(かもしれない)ツイートまとめ
 青木文鷹氏の語る『悲しくなる必要のないサムスンのシャープ出資』のお話
 質疑応答部分追加
  http://togetter.com/li/467378

実況風まとめなので、繰り返しで語られる部分もあります。
私からの注記は丸括弧でいれています。長くなったので勝手に小見出しもつけました。

それではごらんください。


【最初に】

不買だと騒ぐ前に、シャープ公式発表くらいは読んでほしい。
(参考:シャープ公式のニュースリリース)
 http://www.sharp.co.jp/corporate/news/130306-c.html

さきのツイートの趣旨を知りたい方、放送を見るのが面倒な方は、ツイートまとめがあるので読んでほしい。
( http://togetter.com/li/467378 や http://togetter.com/li/467382 )

サムスン出資が事前リークされた件で、シャープが「当社が発表した内容ではない」とした件。ここからカン違いが始まった気がする。「サムスン」に過剰反応した感がある。「花王デモ」においても「味方撃ちだし感」を感じた。

それまでの寄付や国内貢献を無視し、テレビスポンサーを攻撃した件は「味方を撃った」のでは?日本の戦力を減らしてどうする?という疑問がある。電凸時の対応は悪かったが、他の活動まで否定するのはどうか。

ただしフジテレビを擁護するつもりは一切ない。また、ロート製薬はCMの事を考えれば確信犯だと思う。(注:CMとはキム・テヒ出演のものと思われる)


【褒め称えられるべき話】

…話は戻るが、このシャープの件は「褒め称えられるべき」内容である。

シャープはサムスンから「100億円」を取り込んだ。これは勝利である。花王の件は「不買後の決算」で売上増となっており、不買運動は敗北とみている。これは現実であり認めるべきである。

精神力、時間、エネルギーは限られたもの。日本を良くしたいと思うなら、よく効く部分へエネルギーを集中的に投下するしかない。味方を増やすしかない。相手が好決算を出した事実は認めるべきではないだろうか。


さて事前に断っておきたいが、シャープの危機は「依然として」ある。100億入って終わりではない。また、この100億出資はクアルコムやインテルからの支援とは性質が違うもので、シャープもそれを認めている。

この出資の実態は「シャープを褒めるべき」もの。
しかし2chやツイッターあたりで背景を調べもせず「シャープ買わない」と語られており、これは間違った情報を元にした「シャープへのネガティブキャンペーン」であるとみなしている。だから腹が立つ。

日本の国をおもってる。韓国を嫌うのもわかる。しかし「韓国にダメージを与えた企業」をなぜ攻撃するのか?それは「ホンキで韓国と縁切りたい」と思う人にとっても迷惑。関わりたくないのもわかるが、現状やむを得ない。

むしろこの件で「相手を食い物にするくらいの付き合い方」を考えるのが大事ではないか。第一次安倍内閣、麻生内閣も味方に後ろから撃たれた事を思い出そう。


【事前リークはだれの仕業?】

本件のリーク元は、この提携から外れた「鴻海」と思われる。台湾は親日だという声もわかるが、企業活動には国とか関係ない。鴻海との交渉では「技術供与」を要するものであり、シャープにとってはサムスンよりもキツイ話だった。

鴻海はサムスンの出資をご破算にして、自社の条件をシャープに飲ませるのが目的と見られる。情況証拠から見れば真っ黒。交渉を知ってるのは3社のみで、銀行も関係がない。

この3社のうち、本支援の件を漏らすメリットは鴻海にしかない。ただ、リークは成功ではなかったと見る。ご破算目的ならもう2,3日早くされるべきだったか。

これは「台湾」という国家の動きではないだろう。しかし、「国の意向」を汲んだ動きはあるのかもしれない。

また、提携に関する発表で「裏切られた」という反応は残念。公式発表前に「リークを肯定するような発言」をしたら「インサイダー」になってしまう。だからシャープとしてはシラを切るしかない。

その「やむを得ない振る舞い」に怒ってる人もいるのはわかるが、株取引の流れを知ったら当然の事ではある。なお、「100億出してくれる投資家」が居るってことは、出資を考えてる者に対するアピールにもなる。

リークによりサムスンとの話がまとまらなければ、話は鴻海に戻らざるをえない。リーク先は鴻海で違いないと思う。
(※後日、この件を補完するツイートもなされています)

鴻海は一代であそこまでの企業を作った。あくどいも何もない。国際経済、グローバル化というのはこういう話が必ず出てくる。なお、インテルからのアピールもあったが、今回は時間がなく、この話は非常にタイムリーだった。


【100億はどこに効く?】

そして今回のサムスンの100億には「特典」がついていた。「投資」→「モバイル液晶を大量生産」→「ライン稼働率の向上」→「大口でサムスンがそれを引き取る」という特典。

サムスンが調達する液晶の数は、ラインナップの多さから、アップルの比ではない。アップルは少品種で事実上1機種。企業向けの生産量とバリエーションはサムスンのが圧倒的。ただ「どこにどれだけ販売されるか」は知りたくもなく、自分は感知しないw

(コメントをみて)「地上波で指摘してない」って?あいつらバカなんだよ。ここで話してるのは公開情報がベースである。それくらい調べよう。青山さんは別寅ですよw(←何故か笑)

100億円は個人スケールだと途方もない額だが、「液晶工場」は1つも建てられない。これは設備投資向きの金額。新設ならケタが違う。土地、建物、空調その他…それらの用意だけであっという間に100億超えるだろう。

この金額「100億」はライン新設程度で、会社を乗っ取れる金額などでもない。空母一個分にもなんねーよw(新造で4千億くらい)ガンダムだって動かない。オスプレイ1機(140億)さえも買えない

シャープは液晶を作り売って、赤字を消さなければならない。しかし今は金欠。その初期投資にこの100億が生きてくる。カイジだって「賭ける金」がないと勝負に出られない。ざわ…ざわ…することさえもできない。


【IGZOとシャープの現状・サムスンの実態】

増資に触れた公式文書をみると、将来の設備投資と、次世代(IGZOの次)の開発投資として必要とされている。IGZO液晶は「絶対的」な技術ではない。シャープはさらにその次の技術を作らないといけない。

誤解が多いが「IGZOの特許」はシャープでなく他者保有のもので、サムスンは、シャープに約1年先行してライセンスを受けた。しかし後続のシャープのほうが大量生産、すなわち「量産化」に成功してしまった。サムスンは約1年の先行を活かせなかった。

サムスンは自前の工場がある。それなのに量産できなかった。有機ELもメディアで大々的に宣伝されながら、量産品の安定供給は結局出て来なかった。量産技術はあの企業にはない。実は無い。

サムスンの売れ筋で稼げるものは「GALAXY」しかない。他は赤字。DRAM、テレビ、洗濯機…みんな赤字。しかもGALAXYには「iPhone」同等以上の高繊細液晶を載せるしかない。

iPhoneに負けない高繊細液晶は自社で作れない。有機ELは耐久力の問題から焼き付きやすく、パネル交換のコストも負担だった。サムスンのパネル製造部門は年間400億の赤字を垂れ流してる。一昨年はなんと約700億だった。

サムスンは液晶部門を切り離して別会社に分離し、会計も分離した。そのうちサムスン本体が潰すかもしれない。国内企業が液晶製造に関する緘口令を引いてから、サムスンの液晶世代は5.5くらいでとどまっている。現在の日本は9〜10世代に。

この状態で自社から調達…などできない。赤字が増えるから。それならもう「シャープに100億投資するかっ!」という話に。しかもいまは年間1億枚程度必要となる見込み。

それを安定供給できる企業は、「ジャパンディスプレイ」か「シャープ」しかいない。シャープのIGZO液晶は高繊細と省電力を両立しているが、シャープが倒産したら頼れなくなる。

サムスン「助けてやるわ。カネ出してやるよ。」←報道。
サムスンの本音:「シャープが潰れたらGALAXYが作れない…会社ヤバイかも…」←実態
GALAXYを大量販売せざるを得ないという今のサムスンの「宿命」が、アキレス腱にもなっている。

シャープもIGZO技術だけでは安泰じゃない。富士通やソニーもこの技術を供与されている。今シャープはアドバンテージを持ってるが、これら企業に追いつかれる恐れもある。だから次の開発投資をしたい。怖いのは韓国企業ではなく日本企業。

シャープは「次の一手」をかけている。企業経営とはこういうもの。とくに技術系は。まして企業再生しようとするなら、平時よりも技術開発を強化継続しなければならない。おそらくIGZO量産技術の優位は2年程だろう。

「今の技術」としてのIGZOはいい。自分もAQUOS PADを使っているが、電池持ちと映りのよさを実感している。

ソニーは、日立や東芝とあわせて「ジャパンディスプレイ」を構成する一社で、現在IGZOのライセンスをうけている。シャープはIGZOパネルを富士通へも供給する予定だが、彼らが製造できるようになれば、彼らが脅威になる。

シャープには開発費が必要。そしてサムスンはシャープに100億払ってでも、安定供給のために頑張って欲しいと思ってるハズ。だからシャープが死なないように100億出した。これは「韓国から100億取り戻した」とみてもいい。


【技術供与は含まれない】

しかもこの提携条件に「技術供与」は入ってない。技術供与は経営に重大な影響をおよぼすので、関連文書には明記が必要だが、今回それは書かれてない。(時事通信でも技術供与含まずの報道あり)

シャープはサムスンと訴訟後の「2010年の和解」からパネル供給をしているが、「今までどおり『モノを』売ります」という事を、今回改めて表明している。

今回のシャープがスゴイのは、
・技術供与はしない
・サムスンのカネでモバイル液晶の設備投資をして…
・それで大量生産した液晶を…
・サムスンに売りつけて儲ける
という流れ。
そしてサムスン側も、それを望んでいる。なぜなら自前で調達できないから。

シャープには現金がない。しかし今、ライン改修費用をサムスンから得られる。これは共にあくまでもビジネスライクな対応。ドライだとか以前、「ビジネスの話」の範疇を超えないものである。

シャープは金を調達する理由があった。サムスンは金を出す必然性があった。これはWin−Winの関係。シャープのもつ液晶技術も高く、特に「生産のノウハウ」は重要なポイントになる。

ただ、今回の件において「サムスンの金を引っ張ることに関する非難」があるのは理解する。


【液晶製造の「技術」には2通りある】

1970年には大阪万博があった。この年、国内家電メーカーはこぞってパビリオン出展したが、なんとシャープだけはそれをしなかった。その時の合言葉が「千里から天理へ」。

千里とは万博会場。天理市(奈良県)は今やシャープ工場の城下町。そのときに「液晶工場」を作って、これが電卓の液晶部品などを生み出し、液晶でトップを取った。この頃から液晶技術を積み上げてきている。

IGZO液晶を生み出せる「核心的技術」と、それを安定して大量生産する「量産技術」の違い。これらはそれぞれ「技術」だけどタイプがちがう。「ブレイクスルー」は理論とか純科学的な話。しかし「量産」とは「経験や試行錯誤」を積み上げたもの。

天才が突っ切ってできちゃうのは「核心的技術」。一方、量産っていうのは、何度も試行錯誤してアイデアを出しあってやる。これは「小さなことからコツコツ」というもの。この違いを多くの人は正しく理解してないぽいが、この違いはかなり大きい。

液晶工場を例にして語る。工場を建てる土地の「基礎工事」の部分。これだけでも独自のノウハウがある。どこに建てるか、傾斜をつけるかetc…。これはこれ専門の人がやる。機密対策からシャープはこれを外注せず、自社子会社にやらせている。

建物ができたら、ラインの機械設置。位置、向き、動線とか…。これは全部ノウハウ。堺工場の新設時は、社長すらラインに入れなかった。研修云々の時にノウハウを持ち出すという人もいるが、それは「今のライン」を知らないからではないか。

今の液晶の現場は、社長すら入れない。



【液晶量産技術のお話】

これこそが量産化技術。この技術は、それぞれの持ち場のAさん、Bさん、…Eさん、Fさん全員の知識をまとめて出来上がるもの。1つ1つ情報を集めて、ちまちま頑張る。これがサムスン…じゃなく「韓国」にできると思いますか?

核心的技術なら、それを収めたCDやDVDを奪えばできる。しかし「量産技術」は、各員の技術やノウハウを「組み合わせる」必要がある。先のA〜Fさんが必要になったら、退職した彼らを集めれば出来る。しかし彼らがいなくなればできなくなる。そういうもの。

韓国ボスコが新日鉄住金からパクって有名になった鉄鋼技術は「核心的技術」の話。NANDメモリ(フラッシュメモリの主要技術)もパクられたが、それはメモリの構造部分であり、核心的技術だったから。しかし「量産化技術」は「バラバラのノウハウ」の集まりであり、盗むのは難しい。

有機ELは液晶の技術と類似していた。サムスンがそれの生産に踏み出せたのは「似てた」から。しかし「満足な製品が出来なかった」のは、それにマッチした「量産技術」を持っていなかったから。結果、彼らの下では「量産品」を出せていない。

モノづくりに携わったことがない方は、ソコを理解するのは難しいかもしれない。コピー本とか作ってみたら解るだろうwホチキス1個打つのでもノウハウがいるよね?量産化とはそういうこと。

量産品はノウハウが必要。サムスンがシャープから欲する「究極の技術」とはそれだと思うが、残念ながらそれらはバラバラのパーツでもらうわけで、先に話したとおり、彼らでは組み立てられない。それこそが「量産化」の技術でありノウハウだから。

「GALAXYが売れなかったら会社が終わる…」それは彼らが思った事。だから「しょうがないから完成品をシャープに…」という流れの話。サムスンにメリットがある云々ではなく、「シャープが死んだら自分らも死ぬ」というわけ。

誤解されているが、サムスンにとっては「シャープの買収」とかも意味がない。「液晶の完成品」が納品されれば良いわけで。結果「現物ください」という程度の低い話になってしまってるという…。

この決定は外資の意向もあったかも。自社で頑張っても赤字続きだろ?という指摘の可能性も。

サムスンにはソニーと協業していたときに、5.5世代くらいの液晶技術は指導で持たされてたはず。ここまでの「量産化技術」は持ってるハズだが、6〜10世代への蓄積が作れなかった。なので今また「ノウハウ」だけ渡されてもできないだろう。

結果、サムスンは「お金を出して出来合いを買う」ことを選んだ。楽だから。

あとIGZOのベース技術は、サムスンもライセンスを持ってる。だからその技術を「シャープからパクる」というのは的外れな話。もう少し調べて語って欲しい。

量産技術は「あの人達の性格上」パクってもできない。DRAMはそれを作る「製造機器」を買えば作れちゃう。しかし液晶はそうはいかない。

そして、これまでのサムスンの「圧倒的なパネル生産量を支えている現場」は、赤字を垂れ流している現場だったと言うことでもある。


【なぜ韓国でできないのかわからない】

(コメントを見て)「なんで韓国でできないのかわからないのですよ?」って?
なんと答えは「働きたくないでござる!」なんだよ!!半島の文化というのはw
彼らの意識では「労働者は下賎な身分」という扱い。まさに「働きたくないでござる」。

某半島の人が「就職したいです!」というから「会社で何がしたいの?」と聞いたら「社長がしたい!」と言ったwまだ会社に入ってないのに社長がしたい!ってww

でも彼らはそういう発想なのかなと。…で、なんと自分の知り合いが「試しに社長やってみっか?」と、社長をやらせてみたらしい。某サービス業の方がね。

で、「君が思う社長の仕事をしてごらん」と、段取りをして(ほとんど仕事のない日だったけど(^^;)「わからないことあれば聞いてくれていいから、君が思う社長の仕事をしてくれ」と、その方は声をかけた。そして翌日…

朝来ました。秘書にお茶を頼みました。お茶を飲みました。新聞を読み始めました。テレビを見ました。友達に電話をかけました。ゲームをはじめました。お昼を食べました。友達に電話をかけ…秘書にお茶を…テレビを…。帰りました。以上。

(コメントを見て)いやいやゲーム会社じゃないよwwサービス業だからw
その彼は就職どころか、後で「オマエふざけてんのか」とあとで怒られてた様子…

要するに「仕事をしないで座ってたらみんなが動いてくれる」それが彼の「社長」のイメージ。要するに「働きたくないでござる」なんですよwなんかこの話するたびに、しゃべってる最中ても笑ってしまう…w

彼らは細かい改善をして、ラインを組み上げようなどという考えはないと見える。「僕は命令するだけです」といいながら、やらせてみたら「命令すらやりたくない」というレベルだった。どこまで突き進むんだと(汗)

「頑張って働いて社長になりたいです」って人はいるけど、いきなり「社長がしたいです」「ほかはしたくありません!」というのはなかなかいない。一事が万事にはしたくないけど、あちらにはこういう傾向が多い。

量産技術の欠片をあつめて組立て、それを実用化するのは「彼ら」にはムリだと思う。しかし他人を食い物にして、他人の褌で相撲をとることには労を惜しまない。だから彼らは生き残ってきた。

ヒュンダイが「一所懸命営業するのは大変だから」「ホンダのマークと間違えて買ってくれたら売れるから」→似せてしまえ。 などとやっちゃう民族。そして実際に売れちゃう…。(補足:韓国ではヒョンデと発言するそうです)

一方、液晶工場は「敷地にすら近づけない」「社長すら入れない」レベル。部外者は建物一定の距離までしか近づけない。技術を持ってかれるような契約も、相当の対価の受渡しもないので、ネットで言われる「技術盗用」の懸念はムダと思う。

彼らがアコギな手を使うのと、アコギな手を使ってもムリというのは別の話。だいたい彼らが「量産化技術」のパーツを持ち去っても、彼らは組み上げられない。その辺りにも誤解があると思う。

テレビの人とかって、ちゃんと調査・分析して、サムスンやシャープの内情や売上比率を話す人とかいないじゃん。それがテレビの限界ですよ。分析も金を出せばできるというが、彼らはその金さえも惜しんでる。

例えればパネル業界って、カイジの沼みたいな感じ。大量に投資しないといけない。当たればムチャクチャ儲かるが、外れて地獄をみたときは「会社が傾く」という…。


【シャープ乗っ取り懸念について】

あと「出資がもとで乗っ取られるのでは?」というが、正式な形ではムリ。今回は資本提携であり「業務提携」ではない。シャープが乗っ取られると仰る方は、株主構成比率を見たことがない人だと思う。

会社を乗っ取るには51%の株式が必要で、委任状争奪戦(プロキシファイト)をやらないといけない。今回出資の3%の範囲でできるのは、臨時株主総会の招集、株主名簿の閲覧、総会議案の提案(ほか帳簿の閲覧)くらいしかない。

なお、サムスンの役員を送り込むことを、議案として提案すること自体は可能。自分でもこうした意向を反映すべくプロキシファイトをやったことがあるが、非常に大変でものすごく面倒くさい。この経験がなくて「乗っ取られる」とか安易に言わないでいただきたい。

しかもシャープの場合、個人株主が4割、金融機関が4割持っており、計8割。金融機関をサムスンが味方につけても、あと1割は集める必要が。残りに手を伸ばすにはもう公開買付しかないと見るが、今のサムスンに「そこまでする意味」があるのか?

彼らがほしいのは「スマホ用IGZO液晶の現物」であり、お望みのスペックと量が「希望の価格」で入るのならそれで満足。無茶して金も苦労もかけてシャープを乗っ取る必要があるのか?…これは単純に「損得」の話。感情的な話ではない。

サムスンは韓国企業だけど、いまやかなりの部分が外資。韓国政府の意向だけで経営できる状態は過ぎてしまった。なので「シャープをムダに乗っ取った挙句、プラスにならない」なら、それを決定した経営陣が株主代表訴訟でひっくり返されることもある。

サムスン(や経営陣)は、ムチャクチャはやるけど無茶はやらない。買収は「事実上できない」と思う。アップルとの戦いぶりも一見斜め上ぽく見えるが、反訴くらいはよくある話。

有機ELテレビは出る出る言ってたけど、実際出てきてない。サムスンに量産技術などない。「技術供与なし」条件下で100億突っ込まされたサムスン、しかも「金突っ込まされたもの」を「買ってくれる」サムスン。シャープにとったら大勝利。


【識者とメディアの欺瞞】

いままでサムスンには、技術があると言われていた。そう振りまくメディアや識者は多かった。しかし謎がある。サムスンはIGZO液晶のライセンスも、液晶の生産ラインも持ってるわけだから、自分とこで作ればよかったはずだ。

なのにサムスンはシャープに100億突っ込んで、液晶の安定供給を依頼した。世界ナンバーワン()のサムスンが、自分の社内でやらないところには「何らかの事情がある」と考えるべき。

その事情とは「GALAXYだけで」持ってる会社だと言うこと。タブレット含めれば1億台を作ってる。この商品価値にはあえて触れないが、サムスンはこれを数売ることでしか儲けられない企業。会社の形状としてはいびつである。

1億台作るためには、相当数のパネルが必要。GALAXYのライバルとは「iPhoneの液晶」ではなかろうか。あれと同等かそれ以上のスペックを持つ液晶が必要。それがないと世界を席巻できない。他社製品とはOSも共通ゆえ、差別化はそれくらいでしかできない。

液晶の供給がズレると、供給タイミングを逃す。そうなると社が傾く。だからこそ、シャープのニュースリリースにもあるように、サムスンは「安定的に供給」することを求めている。高繊細液晶の大量納品に応えられる企業は、現状「シャープ」しかいない。

この資本提携は「囲い込み」でも「独占契約」でもない。独占ならもう1ケタ多めの金額は必要。今回、売り先は制限されない。アップル以外にも、ソニーや富士通への供給話もある。

だから、シャープがもしサムスンに難癖をつけられたら「お宅には売りませんので?」とか「他での需要がありますから、お宅への供給は減らさせて頂きますから。」と言えば、サムスンはたちまち真っ青に…

そしてシャープは、似たような悪例をもっている。「うるせぇAQUOS作ってんだよ!」で有名なアレw 他メーカーに供給の約束をしてながら、AQUOS売れてるからと自社優先して融通してあげなかった事例がある。だから前の社長は恨みをかっている。

しかし今回、もし「サムスンが噛み付けば」シャープはそれをすることができる。強みがあるから。


【総括1 サムスン出資をゲットした「シャープ」について】
・韓国サムスンから100億を引っぱった大勝利の会社
・サムスンには『報道されるほどの技術がない』事を曝け出させた
・叩かれるいわれは一切なく、むしろほめられてしかるべき
(これらもあると思います)
・他の出資者(鴻海含む)との交渉を今後有利にできる
・サムスンの命運さえも握っている可能性

【総括2】一番困るのは「カン違いの不買運動」で「日本大好き」な味方から背中を撃たれ、経営悪化して倒産すること。そうなったらそのドサクサに「日本から流出したらマズイ技術」まで流出する恐れがあること。

【総括3】どんなに気に食わなくても、流出すると困る技術を持つ会社は「儲けさせる必要」がある。だから一番最初に話した、ついケンカ腰になって「潰してしまえ」ってのは、決して解決にならない。結果として、ここにつながるわけです。

<了>


《放送者のプロフィール》 ※ニコ生コミュからコピペしました

【生主】青木文鷹(アナリスト)
【近著】世界はマネーに殺される(扶桑社新書) http://www.amazon.co.jp/dp/4594065236/
【監修】TPPが日本を壊す(扶桑社新書) http://www.amazon.co.jp/dp/4594063683/
【AMラジオ】「青木文鷹の日本を救え」(RFラジオ日本・金曜深夜一時から放送「ラジオ時事対談」内)
【Twitter ID】 @FumiHawk
【facebook】 http://www.facebook.com/profile.php?id=100002348767865
【Blog】 http://nihon-jyoho-bunseki.seesaa.net/
【ニコニコミュニティ】 大人の社会科 http://com.nicovideo.jp/community/co1382076

なお、3/23に東京で講演会があるそうです。

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