安倍首相会見(全文=質問は要旨)
(2013年3月11日。赤旗政治記者の仮起こしですので、あくまでもご参考まで)

(首相冒頭発言)
 安倍 あの東日本大震災から2度目の3月11日を迎えました。3月11日は、大震災で犠牲となった皆様に祈りを捧げる日です。大震災によって愛するご家族を失った皆様に謹んで哀悼の誠を捧げます。
 また、今なお行方のわからない方々のご家族をはじめ、被災された全ての方々に心からお見舞いを申し上げます。
 福島では…失礼しました。昨年12月の総理就任以来、私は、毎月被災地を訪問してまいりました。2年をへた今でも、多くの皆様が仮設住宅での暮らしを強いられています。いつまでこんな生活が続くのか。先が見えないことへの不安の声を被災地で何度も耳にいたしました。
 福島では多くの方々が、いまも福島…における第1原発事故の被害に苦しんでいます。子どもたちは屋外で十分に遊ぶこともできません。被災地の厳しい現実から目をそむけることはできません。東日本大震災はいまもまだ現在進行形の出来事であります。
 一方で、被災地のみなさんは懸命にいまを生きておられます。仮設住宅の厳しい生活の中にあっても、互いに声を掛け合って、励ましあっているみなさん。一部ではありますが、復興住宅の建設も進みだしました。被災した工場を再び立ち上げた方もいらっしゃいます。
 その光はいまだかすかなものかもしれません。しかし、被災者のみなさんの力によって、被災地では希望の光が確実に生まれつつあります。この光をさらに力強く、たしかなものとしてまいります。
 全ては、実行あるのみです。そのカギは現場主義です。工場を訪れて、私が強く感じたのは、被災者のみなさんが先の見えない不安を抱えておられることです。いつまでにどれぐらい復興が進むのか、見えるようにして被災者お一人お一人が生活再建に取り組める環境を整えなければなりません。住宅再建と復興、街づくりについて市町村の中の各地区ごとに、いつまでに何戸入居可能となるのかなど具体的な目標を記載した住まいの復興工程表を取りまとめ、公表いたしました。今後四半期ごとにきめ細かく更新してまいります。
 現場で不足をしているのは人です。日本中からプロを集めることが復興を加速させる近道です。復興事業を担う自治体のマンパワーを増強するため、行政の経験者を積極的に活用します。高台移転の遅れには、土地買収や埋蔵文化財調査などの問題がありますが、これも専門家を投入して加速させてまいります。
 現場では、手続きが障害となっています。農地の買い取りなど手続きの一つひとつが高台移転の遅れにつながっています。復興は、時間勝負です。平時では当然の手続きであっても、現場の状況に即して、復興第一で見直しを行います。すでに農地の買い取りについては簡素化を実現しました。今後、高台移転を加速できるよう、手続きを大胆に簡素化していきます。これからも課題が明らかになるたびに、行政の縦割りを排して、一つひとつきめ細かく手続きの見直しを進めてまいります。
 福島では復興の第一歩となる避難地区…避難指示区域の見直しも着実に進んでいます。7月1日までに葛尾村、富岡町、浪江町で新たに区域見直しが行われます。これにより、さらに約3万人の方々が故郷のご自宅に自由に通うことができるようになります。
 先般、故郷を取り戻すための早期帰還、定住プランを取りまとめました。復興が遅れていた浜通りでも、先月相馬市の仮説焼却炉が稼働するなど、がれき処理が始まりました。目に見える動きが出てきました。立ち入り可能となった地域については、除染や電気、水道などのインフラ復旧を進め、故郷に1日も早く戻っていただけるよう、環境を整えていきます。
 さらに、今年夏ごろをモクトに、いつまでに道路や水道が復旧し、医療・福祉の体制が整い、住めるようになるかなど、早期帰還に向けた具体的な道筋を明らかにしていきます。
 復興という言葉だけを叫んでも何も変わりません。安倍内閣は、現場主義を徹底し、一つひとつ実行を進めることで、みなさんが実感できる復興を進めてまいります。
 3月11日は、希望を生み出す日でなければなりません。来年の3月11日にはもっと復興が進み、暮らしがよくなると被災地のみなさんが思えるような、そんな日であらねばならないと私は考えています。また、必ずそうしてまいります。
 そして被災地のみなさんが希望を胸に、復興への歩みを力強く進めることが、2年前に犠牲となったたくさんの方々の気持ちにもかなうものであると信じます。
 最後に、国民の皆様に申し上げたいと思います。寄付でも、東北産品の購入でも、何でも結構です。一人ひとりが東北の復興のために、それぞれの持ち場でできることに力を尽くしていこうではありませんか。そのことが東北に希望を生み出す道であると確信をしています。希望に溢れる新たな東北をともに作り上げてまいりましょう。
 私からは以上であります。

 (質疑応答)

 (東京新聞・中日新聞 総理から、いま復興に関して、とくに復興の面では一番遅れている住宅再建、とくに高台移転についても手続きの見直しを進めるといった。先が見えないことが被災者の一番の不安のもとだ。高台移転がいつまでに完了させられるのかについては、見直しを進めたうえで、どの程度の時期というのを見ているのか。福島でも避難区域の見直しをいま政府が進めているが、帰還希望の避難住民が希望すれば全員が戻って故郷で生活ができるのはいったいいつになるのか)

 首相 あの…いままで何回か被災地に足を運んで、えー、被災地の方々から出る要望…第1番目の要望というのは、とにかく、いつになったら元の生活に戻るのか。まずはいつになったら仮設住宅から出れるのかということです。
 いままでの最大の課題、問題点はですね、それを、その工程を示してこなかった…ということなんですね。その先が見えなければ、やっぱり、それは人間みな不安ですから、ま、ですから、今回、そうした不安を払拭するために、3月の7日に市町村別の地区ごとでの住まいの復興工程表を公表いたしました。
 たとえば、災害公営住宅については、平成27年度までに、岩手県ではおおむね9割、えー、5千…だいたい100戸ですね、そして、宮城県ではおおむね7割。だいたいおおむね、1万1200戸ぐらいでありますが…を整備する見通しであります。
 えー、ま、福島ではですね、まだ整備すべき全体戸数が明確になっていないために、何割ということは申し上げられませんが、おおむね2900戸整備する予定であります。えー、仮設住宅等にお住まいの方々にですね、将来の生活再建への見通しと希望を持っていただきたいと思っております。
 今後ですね、四半期ごとに更新を予定をしております。えー、現在お示しできていない地区についても、具体像を明らかにできるように取り組んでいきたいと思います。

 (共同 総理は、除染についても加速するという方針だが、汚染土壌保管する中間貯蔵施設の設置が遅れている。設置場所選定や汚染土壌搬入が完了する時期はどう見通しているか。中間貯蔵施設が中間ではなくて、なし崩し的に最終処分地になってしまうのではないかという不安、懸念も地元では出ているが、こういう不安に総理としてどのようにお答えになるか。施政方針演説で若者たちが希望に胸を膨らませる東北をつくり上げると約束したが、政府の代表施策を具体的に示せ)

 安倍 えー、まずですね、中間貯蔵施設についてでありますが、中間貯蔵施設については、地元の、えー、ご意見を具体的にお聞きしながら、現地調査を着実に実施をしていきたいと考えています。えー、現地調査は、3月から5月末までに実施予定でありまして、えー、現時点では、ま、下見を開始をしたところであります。現地調査の結果を踏まえて、安全性に十分配慮した施設…えー、施設の具体的な内容をお示しをしながら、27年1月から汚染土壌の搬入を開始できるように、施設に…えー、設置についての地元のご理解を得ていきたいと考えています。
 えー、ただいま、お話のあった、なし崩し的…なし崩し的にですね、最終処分になりかねないという、ま、地元のご懸念に対しても、真摯に説明をしていく考えであります。
 えー、そしてまた、今後の…具体策について…でありますが、えー…ま、将来的にですね、えー、日本経済を牽引していくことができるような産業の振興を図っていきたいと考えています。
 ま、たとえば、福島沖ではですね、世界初の本格的な浮体式洋上風力発電所の技術開発や実証を行っていきたいと思っています。
 そしてまた、福島県に医療機器の研究開発や安全対策、事業化を支援する拠点を整備をしていく考えであります。
 ま、このように、ま、いわば、将来に向けて、えー、ま、産業競争力会議でも議論されていますが、えー、まさに、日本の課題を解決をして、そしてそれは世界にも展開できるような、そういう分野…の産業を、東北で育てていきたいと考えています。

 (NHK 使用済み核燃料の処理について。安倍総理は施政方針演説で安全が確認された原発は稼働していくといったが、六ヶ所村の再処理工場ではトラブルが相次ぎ、開始の見通しは立っていない。高レベル廃棄物の処理も明確な方針が定まっていないようにみえるが、どのように再処理を進めていくのか)

 安倍 えー、まずですね、高レベル放射性廃棄物の最終処分については、ま、現在も処分地選定調査に着手できていないと、こういう状況であります。えー、処分地選定に向けた取り組みの強化について、国が責任をもって検討をしていく考えであります。
 また、使用済み燃料への対応はですね、これは世界共通の課題であります。もんじゅや六ヶ所再処理施設など、わが国は世界でも高い核燃料再処理技術を有していることから、世界各国との連携を図りながら、引き続き取り組んでいく考えであります。

 (司会 「最後の質問」)

 (フィナンシャルタイムス 被災地復興のためには日本経済全体の活性化が必要だと総理は以前からいっているが、その関連で金融政策について一つうかがう。大胆な金融緩和によってデフレからインフレに切り替える必要があるということだろうが、総理が想像している大胆な金融緩和にともなうリスクについて教えてほしい。リスクがあるなら、具体的にどのようなものがあるか。どれぐらい大きなものなのか)

 安倍 えー、わが国はですね、ま、これまで、十数年デフレが続いてきました。そして、えー、50兆円ともいわれる莫大な所得が失われたんですね。歴代の政権では財政出動等を行ってきましたが、こびりついたデフレマインドを変えることはできませんでした。先進国でこれぐらいデフレが続いているのは日本だけといっていいでしょう。この状況を変えてですね、よりいっそう、日本がもっと世界に貢献していくことにできる国に変えていくためには、今のこの状況を変えなければならない…というなかにおいて、これまでとは次元の違う政策と日銀の新しい体制で取り組んでいくことになったわけであります。
 えー、もちろんですね、えー、物価や長期金利等の動向については、きちんと目配せをして、ま、いかなければなりませんが、たとえばですね、まあ、ハイパーインフレということがいわれていますが、ま、これは考えられないといってもいいと思います。ま、2%は、物価安定目標ですから、この2%を超えていけばですね、この2%のなかに収斂していくように、当然日本銀行も政策を進めていく、ま、これは当然なんだろうと、このように思います。
 また、えー、三本の矢によって企業の収益機会を増やして、雇用や所得の拡大を実現をしていく考えであります。そのことによって、賃金を上昇していく…そういう考え方をもって、とっております。
 また、もちろん、えー、財政健全化についても、しっかりと、ま、取り組みながら、国の…信任、えー…を確保していきたいと考えています。
 また、エネルギー価格は…の上昇についてでありますが、えー、北米からのシェールガス輸入の実現など、供給源を多角化をしていくことによってですね、えー、輸入…ま、コストを下げていく努力をしていきたいと、このように考えております。

 (おわり)

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