東電関連企業作業員の線量「信頼できず」 国連報告書
朝日デジタル 大岩ゆり2014年4月2日

 国連科学委員会は2日、東京電力福島第一原発事故の被曝(ひばく)による健康の影響に関する報告書を発表した。事故直後に働いていた東電関連企業の作業員の内部被曝線量について「信頼性を確認できなかった」と不正確さを指摘した。福島県の住民全体でみたがんの増加は、確認できないほど少ないとした。

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 科学委は、2012年10月まで福島第一原発で働いていた東電の作業員約4千人と、下請けなど関連企業の作業員約2万1千人について分析した。

 日本政府や東電などには、作業員の被曝線量のほかに、線量を計算するもとになる全身や甲状腺の放射性物質の濃度の実測値を提出するよう求めた。科学委の依頼を受けた海外の複数の専門家が、一部の作業員を抽出して線量を計算し、政府や東電などから報告された線量が正しいかどうか検証した。

 その結果、東電社員の線量は、科学委の導き出した線量と東電が報告した線量がほぼ一致した。しかし、事故直後に働いていた関連企業の作業員の内部被曝線量は、関連企業の報告した線量が過小な傾向があった。甲状腺被曝線量は、科学委の計算した線量の半分以下だったケースが複数あったとしている。

 また、関連企業だけでなく事故直後に働いていた作業員全体について、放射性ヨウ素131よりも半減期が短い放射性物質が考慮されておらず、実際の内部被曝線量は、報告されているデータより2割前後多い可能性があると指摘した。

 日本政府は昨年、科学委が関連企業の作業員の線量を問題視していることがわかり、東電などに内部被曝線量の見直しを指示。東電などは昨年7月、約500人分の被曝線量を修正した。今年3月にも追加で約140人分修正した。線量により無料で受けられる健康診断の種類が変わるため、正確な線量を把握する必要がある。

 福島県の住民の健康影響については、科学委のラーソン議長は2日の会見で、「例外として、原発30キロ圏内にいた1歳児は、理論的には甲状腺がんの増加する可能性がある」と述べた。ただし、実際に増えるかどうかは科学的に結論を出せないとした。

 科学委は、福島県が事故当時18歳以下の子どもに実施している甲状腺検査を継続し、将来、さらに分析する必要があると強調した。加えて、被曝の影響がない地域の子どもの甲状腺検査も、被曝の甲状腺がんへの影響を見極めるのに「役立つだろう」と指摘した。(大岩ゆり)

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