子どもの甲状腺検査、問題も 「がんの疑い」心身に負担 朝日デジタル2014年10月19日


 東京電力福島第一原発事故に伴う住民への健康対策を提言する環境省の専門家会議の中間とりまとめの概要がわかった。福島県が実施する子どもの甲状腺検査について、がんではないのにがんの疑いと判定されることで心身に負担を与えてしまうなどの問題を指摘し、今後のあり方を十分に議論するよう求めている。

 専門家会議は、原発事故子ども・被災者支援法に基づき、昨年11月に設置された。年内に中間とりまとめをし、福島県内外の住民に対する当面の健康対策や医療支援策を政府に提言する。そのたたき台が20日の会合で示され、最終的な詰めの議論に入る。

 たたき台によると、福島県の住民の被曝(ひばく)線量はチェルノブイリ原発事故と比べ「はるかに小さい」とし、甲状腺がん以外のがんは増加が予想されないとの見解を示した。甲状腺がんは、一部の子どもでリスクが若干増加する可能性が理論的にはあるとし、甲状腺検査を実施して見守る必要があるとした。

 福島県の甲状腺検査は、事故当時18歳以下の約37万人を対象に3年前から始まり、これまでに1巡目が終わった。2巡目終了後の2016年度以降は、年齢に応じて2年または5年ごとに生涯続ける計画だ。症状のない子どもを対象にしたこれだけ大規模な検査は世界的にも例がない。

 たたき台では、無症状のまま問題にならないがんを見つける可能性や、がんではないのにがんの疑いがあると判定される「偽陽性」の増加、手術で合併症が起きる可能性などの問題点も指摘。これまで検査を受けた約30万人のうち1744人が偽陽性だったと認定した。うち381人は、超音波検査などを経て、甲状腺に針を刺す検査も受けたとしている。

 こうした不利益も踏まえ、福島県の検討委員会などで県民にとって最善の検査のあり方を議論するよう求めている。

 また、福島県外に移住しても継続して検査を受けられる体制の整備を指摘。検査で見つかった甲状腺がんの治療は保険診療で、自己負担が生じる場合がある。この点について「国や県の協力が不可欠」とした。

 福島県外の住民については、当面は個別の健康相談などで対応し、甲状腺検査を希望する人には専門の医療機関の情報を提供するとした。(大岩ゆり)

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