Codomo-Rescueより
内堀雅雄 福島県知事への手紙(2015/3/26)

東京電力福島第一原発で人類史上最悪な原子力発電所事故が発生し、4年の月日が経過しました。
事故発生後の日本政府の対応を見る限り、一番弱い存在である”子どもを守る”には程遠い状態です。

法律で決められていた年間の放射線被曝許容量は、事故後急に20倍に引き上げられ、
放射線管理区域に指定しなければならないような場所、もしくはそれ以上の高濃度汚染地域で、
子どもたちは、今も日常生活を送ることを強いられています。
そして食品に含まれる放射性物質に対しての新基準はとてつもなく高い数値に設定されてしまいました。

その恐ろしく高い基準値は、今もなお改められておらず、子どもたちを内部被曝の危険に晒しており、
放射性物質の含有率は今後もっと増える恐れがあります。

安倍総理は東京オリンピックの招致プレゼンでこう発言されました。
『我が国の食品や水の安全基準は世界で最も厳しい基準であります、
食品や水からの被曝量は日本のどの地域においてもこの基準の1/100であります、
つまり健康問題については今までも現在もそして将来も全く問題はないということをお約束いたします』

しかし、2014年12月に厚労省で食品検査体制を尋ね、回答を得た限りでは、
万全な検査は不可能とのことであり、この発言に到底同意はできません。

現在、福島第一原子力発電所から毎時1000万ベクレル、1日で2億4千万ベクレルもの放射性物質が
放出され続けており、汚染水は毎日400トン流出し続け、 「凍土遮水壁」も断念する状況に
追い込まれています。
スリーマイル原発事故は格納容器を水棺に出来ましたが、福島第一原発事故発生当初メルトダウンを
否定していた東京電力も1号機の格納容器内に核燃料棒がまったく残っていないことを認めるに至りました。
自動制御ロボットですら放射線による誤作動が懸念されておりすべてにおいて未知の領域です。

事故収束のメドは全く立っておらず、現在も原子力緊急事態宣言は発令されたままです。
福島県をはじめ、東日本広域の子どもの被曝の危険の問題は、何も解決していません。

ベラルーシの国立甲状腺がんセンターの報告によると、小児甲状腺がんの患者数は事故前
11年間(1975~1985)ではわずか7名でした。しかし、事故後の11年間(1986~1996)では
508名と著明に増加し、それは事故前に比べ72倍にも達しています。
成人は、前者では1342名、後者では4006名と約3倍に増加しています。

一方、日本。
福島第一原発事故前は、18歳未満の小児甲状腺がんの発生率はわずか100万人に1人か2人でした。
事故後「福島県民健康調査の検討委員会で、悪性の小児甲状腺がん、もしくは悪性の疑いが
117名見つかったのは、2001年から2010年のがん罹患率(全国推計値)の61倍にあたる」という
発表がありました。
チェルノブイリ事故では原発事故と小児甲状腺がんの因果関係が世界的に認められているにも関わらず、
福島第一原発事故では甲状腺がんの因果関係を認めず、すべての原発事故との因果関係を否定し、
放射線管理区域の4倍に相当するような場所、原発作業員の白血病の労災認定された、
年間5.2ミリの4倍に相当するような場所に、住民を帰還させるような理解しがたい国策が行われています。
そして、原発事故の放射能汚染による健康被害は甲状腺がんだけではありません。

これで本当に県民を、そして将来を担う子どもたちを守る事ができるのでしょうか?
県民の立場を代弁すべき福島県として原発事故後の国の対応に異議を唱えるべきではないでしょうか?
東京電力福島第一原発事故後の『放射能に関する基準』は明らかに異常です。
その異常な基準を押し付けられているのは福島県をはじめ、東日本広域の国民、
そして一番弱い存在である東日本広域の子どもたちです。

安倍総理は東京オリンピックの招致プレゼンでこうも発言されました。
『健康問題については、今までも、現在も、そして将来も全く問題はないということをお約束いたします、
さらに、完全に問題のないようにするために、抜本解決に向けたプログラムを私が責任を持って決定し、
さらに着手しております、実行していく、そのことをはっきりとお約束を申し上げたいと思います』

健康問題についてまったく問題はないと、総理は述べましたが、この発言は、福島県で見つかった
悪性の小児甲状腺がん、もしくは悪性の疑いのある117名を、因果関係がないものとして
切り捨てることになります。
福島県としてこの総理の発言を許してもよいのでしょうか?
国策として推進して来た原子力発電所が事故を起こし、大量に放射性物質を拡散させた現実が
あるにも関わらず、放射能汚染や健康被害をなかったことにさせてよいのでしょうか?

繰り返しになりますが、原発事故の放射能汚染による健康被害は甲状腺がんだけではありません。

白血病をはじめとする様々な健康被害が続出したチェルノブイリ事故から学び、
ストロンチウム90など多核種に及ぶ土壌汚染調査や、ベータ線を含む食品の検査、
尿中セシウム定量調査や遺伝子検査を含む健康調査などを福島県だけでなく日本中で
長期間、継続的に調査していくこと、それこそが政府の責任であり、
福島県としても要求すべき事だと思います。

私達が何よりも大切な事と考えているのは、この国の未来である”子どもを守る”という事。

チェルノブイリ原発事故の教訓から学び、放射能汚染の現実から目をそらさず、
健康被害が拡大しないよう予防原則に則って、子どもを守る為に
年間1ミリシーベルトを超える地域に住む子どもたちに避難の権利を与え補償するよう、
福島県が国に強く要請し、具体的な施策を講じて下さい。

http://www.codomo-rescue.net/2015/03/27/20150326-01/

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