簡単な僕なりのクラブの音響さんの話。


今回スペシャルコーデとアニデラvsカオフで音をいじらせてもらった訳だけど、当たり前の事ながら「良い音」というのは本当に重要だなと改めて感じたわけです。
僕は基本的に「攻めた」音作りはあまりやりません。
だいたいが「引き」で音を作ります。
単純に言えば「低音が足りない」と感じたら低音以外の部分をさげます。相対的に低音のバランスが上がるわけです。それによって音量感が下がる部分はゲインで稼ぐ。
自分にとってPAの仕事は「箱の機材にダメージを与えない事」が一番だと思っています。
クラブやライブハウスにはそれぞれの特有の音というものがあり、それを超えた音作りはできません。
その場所なりの色々な条件、ハコ鳴りなどは勿論の事、そのハコのある住居などの周辺環境、イベントの性質等それは制約が多い中、ベストを探すのが僕の仕事です。
BarにはBarの大箱には大箱のTPOというものがありまずそのラインを探すとところから始めます。
まずはそこのハコのスタッフさん方とと意志疎通ができるようになるまで音響設備をいじらせてもらうことはまずやりません。
基本的にはハコのスタッフさんを尊重します。
ハコの音を一番わかってるのはスタッフの方々ですから。
意思疎通ができるようになるとそこからスタッフさん達と音について色々話します。
そこである程度のラインを見極めるわけです。
そこでする話は音そのものだけではなく、好きなアニメやバンドの話から世間話まで、普段お任せしている方がどういったスタンスで音を作っているかそこまで話して初めて「俺なrこうするんだけど、どうかな?」という話ができるようになって初めて機材をいじらせてもらう訳です。
まずハコとの信頼関係、それが一番大事です。
それでも基本的には依頼された場合以外機材に触ることはまずしませんけどね。

それでは僕なりの音作りについて少し具体的に書きます。
基本DJイベントの2ミックスに限定しますが。

最初に書いた通り基本的には「引き」です。
まず素の状態で耳に当たって痛く感じる帯域を削ります。
JPOPやアニソンの場合、特にアニソンではハイハットのアタックのある辺り、そしてその上、加えて女性Voの声を張った時の高域にもともとかなりきつめのリミッターがかかっていてここが妙に膨らむ傾向があります。
帯域でいうとハットのアタックは6~10k、Voは1kから2.5kあたり、この辺りをなんとなく下げて様子見。
そこからQ(イコライザーのかかる範囲、任意の帯域の前後どのくらいに影響を与えるか)を狭めて痛いところを探します。
そこが決まれば思ってるより少し弱めに下げる。
そして少しQを広げる。
特定の帯域だけどかんと下げると位相が狂って下手したらどっかの帯域が抜けたりひどいときは逆相になる部分がでてきます。
あくまでも腹八分目。
次に低域の少し上で低域をマスクしている部分をQ広めで少し下げる。
だいたいこの手順で進めています。
この時マスターレベルは-5db程度まで絞っています。
何故ならこの後、ある帯域を削ったことにより音量感が下がっているのをマスターで補完するためです。
イベントオープン時だいたい-2dbくらい。
必ず少し余裕は残しておきます。
あとあとその方が楽ですから(笑

アニソンの場合なぜかハイハットがやたらめったらでかいのが多いんですが、コレはたぶんマスタリングでレベル稼ぎすぎて全ての帯域が近いレベルまで音量上がってるからなんだと思います。
なので高域に関してはわりと大胆に削った方が吉となることも多いですが。
もっともお客さんが入ってくると音は吸われてしまうのでやはりこれも大胆なりに八分目。

上に書いたのはEQの話なんですが、実は音作りにかなり大きく影響しているのがリミッターやコンプレッサーです。
が! これは外の人間が触っちゃだめです。
どんなに自分の方がわかってると思っててもダメです。
たぶんほとんどの人はわかっていません。
ハコのセッティングを信じましょう。

とは言えここだけの話、アニデラで実は少しいじらせてもらってます(汗
リハである程度音質は追い込めてたんですが、なぜか無音状態からの出だしの音が妙にガツっと来過ぎる。
アタックが出すぎる感じだったのです。
対処としてコンプに入る音を下げ目にすると同時にアタックを逆に長めにとってリリースも少し長めにとるという対処をしました。
コンプは奥が深すぎて僕もまだまだ底が見えないのでこれだけではほぼなんのことやらわからないと思いますが、僕も文章で説明するのは難しいので興味のある人は直接聞きにきてください(笑

簡単すぎて申し訳ないですが音作りについてはだいたいこんな感じでやってますよというお話でした。

PAにとってもう一つとても大事な事があります。
音響トラブルへの対処です。
スペシャルコーデで開始早々片方のスピーカーが落ちるという事態が起こりました。
こういう場合一番大事なのは原因究明ですが、頭で考えていてもなにも進みません。
とりあえず基本的なところを全てチェックします。
このチェック項目はたくさん持ってないとだめです。
単純な部分から追い込んだ部分まで起こり得る全てに対する対処をしました。
が、復帰しない。
ここで悩んで時間を使うのはダメです。
それがダメならもう次は「違うスピーカーで鳴らす」これしかないです。
幸いコクリアには予備のスピーカーがあったのでそれを補完することでなんとか対処できました。
そこに至るまでの決断の速さというのが実は肝だったりします。
「考える前に動け」「考えなくても自動的に対処する」これが実は大事だったりします。
そこに至るまでにはやはり経験を積まなくてはならないだろうし、一朝一夕にできるもんではないと思いますが、
現場で外から来て箱の機材を触らせていただく立場としては最低そのくらいのことは即座に動けないのなら手は出すなと言っておきます。
その上で経験を積んで自分の関わるイベントに少しでも貢献したいという気持ちを持っているなら
是非がんばっていただきたいと思います。

いつも音響さんやってるわけではないですが、僕のわかる範囲の事ならいつでもお話しますんで興味のある人は遠慮なく聞きに来てくださいね。

以上稚拙ですが僕なりのクラブの音響さんの話でした。

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