★「大阪のおっちゃん」と日本の最高権力者が黒白をつける異例の証人喚問
ー(田中良紹氏)

永田町には「さすっているようで叩いている」という言葉がある。

困っている相手を優しくさすっているように見せて

実はそれが相手に打撃を与えていることをいう。

竹下攻撃で有名になった「ほめ殺し」は嫌がらせであることが誰にでも分かるが、

「さすっているようで叩いている」は誰も叩いていることに気づかない。

周囲には優しく「さすっている」としか見えない。

最近の森友問題でフーテンは久々に「さすっているようで叩いている」政治家の言動を

感じている。

例えば共産党に資料を渡し、その後自ら記者会見を行った自民党の鴻池参議院議員は

「籠池夫妻は悪人、安倍夫妻は被害者」と主張し、

あくまでも安倍総理を擁護してみせたが、

しかしこの会見で森友問題の注目度は大いに上がった。

しかも籠池夫妻に悪のイメージを塗り付けたことで、

籠池氏を「しっぽ切り」するつもりの安倍総理は籠池夫妻に

一層厳しく対応することになる。

それが籠池氏を追い詰め、裏切られた思いを抱かせ「窮鼠猫を噛む」ことになった

のである。

その鴻池氏は18日に甲府市で開かれた輿石東元参議院議員の叙勲を祝うパーティに

駆け付け、「東京の小池、大阪の籠池、甲府の鴻池」と挨拶して笑いを誘ったという。

東京の小池、大阪の籠池は、現在、安倍総理を最も脅かす存在だ。

笑いを誘いながら籠池理事長を小池百合子東京都知事と同列に置いて見せるところに

「さすっているようで叩いているのか、叩いているようでさすっているのか」

なんとも絶妙の味わいがある。

一方の安倍総理には「さすっているようで叩いている」真似は決してできない。

この人は叩くとなれば徹底して叩き、力で相手をねじ伏せようとする。

一方で自分より強い相手にはすり寄ることしか知らない。

相手の言い分をよく聞いて調和点を見つける。

強い相手の言うままにならないために知恵を絞る。

フーテンは長年そうした政治を見続けてきた。

そのため安倍総理を未熟な政治家としてしか見ることが出来ないでいる。

森友問題をここまで大きくしたのは安倍総理自身である。

国会で必要以上に気色ばみ自分と夫人の関与を否定し、

官僚に無理筋の答弁を続けさせ、

それが国民を納得させるより疑惑を膨らませる方向に向かった。

その挙句に籠池理事長を追い詰め、

裏切られた思いの籠池氏は家族ぐるみで反撃するしかなくなる。

籠池氏は安倍総理から100万円の寄付金を受領したと暴露した。

これは何も安倍総理に打撃を与えようとしたわけではなく、

自分たちが安倍夫妻の後押しを受けてきたことを訴えようとしただけだと思うが、

安倍総理はそれを全面否定し、籠池氏を偽証罪に問うため与党は証人喚問を

行うことを決めた。

作家の菅野完氏に言わせれば籠池氏は「ただの大阪のおっちゃん」だという。

それと日本国の最高権力者のどちらが嘘つきかを国会で決着させる展開になった。

フーテンには信じられないリスキーな判断である。

将来の望みを絶たれた籠池氏は国民の同情を引いて再起を図るしかない。

そのために国会は絶好の宣伝の場となる。

一方、最高権力者の安倍総理が籠池氏をねじ伏せることは可能かもしれないが、

それで一体何を得ようとしているのだろうか。

自民党の二階幹事長は「どこの誰かもわからない人間と総理大臣の

どちらを信用するかと言われたら、総理を信用するに決まっている」と語ったが、

総理を支持する発言のように見えて、

言外に「馬鹿なことになった」というニュアンスを感じた。

「さすっているようで叩いている」かもしれない。

元共同通信政治部記者で岸―福田―安倍の流れを取材してきた野上忠興氏が書いた

『安倍晋三―沈黙の仮面』(小学館)を読むと、

そこには祖父の岸信介や父親の安倍晋太郎の教えを引き継げないまま

最高権力者になってしまった政治家の悲しい姿が浮かび上がる。

安倍総理が2歳の時から多忙な夫妻に代わって養育係を務めた久保ウメさんの話に

よれば、安倍総理は小さい頃から「気が強くわがまま」で、

絶対に自分の言ったことを曲げない性格だった。

それが政治家になってからも自分と違う意見を言われると

反射的にキレて猛然と反論することになってしまうと野上氏は分析する。

そして父晋太郎より祖父岸信介を尊敬する安倍総理は、

何につけても岸の真似をしたがるが、しかし「力任せではいけない。

力の調整が政治だ」という岸とは政治家として対照的だと野上氏は言う。

フーテンも「岸信介と安倍晋三はこんなに違う」というブログを書いているので

全く同感だ。

そして父晋太郎は秘書官にした息子について

「政治家として必要な情がない」と野上氏に語り、

安倍総理自身も野上氏のインタビューで

「父からは『お前は相手への思いやりが足りない』とよく怒られた」と

明かしたという。

しかし安倍晋三氏は「岸の孫」、「安倍の息子」ということで

異例の速さで党幹事長になり、官房長官になってしまう。

大臣をやらずに幹事長になり、官房長官になり、総理になってしまったのは

安倍総理をおいて他にない。

そのため祖父や父親の教えを引き継げぬままになったと野上氏は見ている。

森友問題に見る安倍総理の異様な対応はそうした弱点を凝縮した結果だと

フーテンには思える。

そして森友問題は日本政治の力関係に大きく影響する可能性がある。

永田町には「ポスト安倍」を意識した動きが出始めるように思う。

そもそも問題の発端は安倍総理と松井大阪府知事の関係にあるとみられているため、

安倍政権と維新をつなぐ存在の菅官房長官と、

維新とは距離を置く二階幹事長の力関係に影響する。

また菅官房長官とことごとく対立した麻生副総理との関係も注目だ。

鴻池参議院議員は麻生派の大幹部だから、

例の記者会見は「ポスト安倍」に麻生副総理を押すための仕掛けと

言われたりするのもそのためだ。

いずれにしても3月初めに

「妻の言うことを信じてそれに影響されてしまう権力者は墓穴を掘る」と

ブログに書いたことが現実になるか、

23日の国会は日本の政治史上かつてなく異例の証人喚問が行われることになる。

Reply · Report Post