「母が鬼籍に入って二十年。しっちゃかめっちゃかだった父と娘は、ときに激しくぶつかり合いながら、友達のような、年の離れた兄弟のような擬似関係を築くことでなんとかやってきた。生きていようが死んでいようが、ときに緩衝材であり、通訳であり、思慮の浅い父娘を繋ぐ綱が母だ。父を見る視線の中間地点には、常に母が立っていた。視界がぐるりと回転する。記憶のなかに母を見やると、母と私のあいだに父が立っていた。いままでで一番、父が父親らしく見えた。禍福はあざなえる縄の如しというが、親子は愛と憎をあざなった縄のようだ。愛も憎も、量が多いほどに縄は太くなり、やがて綱の強度を持つようになるのだろう。お母さん、我が家もようやく、父と母と娘の三人家族になりました。」(ジェーン・スー|『生きるとか死ぬとか父親とか』より)6/21 TBS ゴロウデラックス

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