2019年1月(1日~22日分)ツイート:25,その他(民訴法20;刑法5)


2019年1月22日(その他1)
刑法108/ 844/ 教唆・幇助は正犯行為を介した構成要件該当事実の間接惹起,共同正犯は構成要件該当事実の共同惹起であり(因果共犯論),後行者加功以前の事実に共犯責任生ぜず。#後行者の加功後_先行者への共謀加担を理由に保障人的地位に基づく作為義務生じ_不作為による強盗・恐喝・詐欺として_先行者と共犯関係発生。
[山口『刑法総論』3版369頁-376頁,特に,370頁-371頁,374頁-375頁,参照。
 山口先生の試論(山口同書373頁LL4以下),承継的共犯に関し中間説を採用した判例(最決平24・11・6刑集66-11-1281,山口同書369頁)の理論化(山口同書374頁L11)。
 すなわち,承継的共犯につき,後行者の加功前の事実についての共犯関係を否定し(否定説),加功後に,先行者への共謀加担等を理由に,後行者に,先行者の惹起した犯行抑圧状態,畏怖状態,錯誤などを解消して結果を回避すべき義務,保障人的地位に基づく作為義務(結果回避義務)が生じ,その義務を履行しない不作為と,加功後の先行者の構成要件該当行為との共犯関係が発生するということである(中間説の理論的説明,山口試論)。R28①平]


2019年1月21日(その他2)
刑法106,107/ 842,843/ 公共の危険(刑法109条2項,110条)は,108条,109条1項の建造物等に対する延焼の危険に限られず,#不特定or多数人の生命_身体or前記建造物等以外の財産に対する危険も含む。火災現場に人が集まれば,公共の危険が発生するというものではなく,#燃え広がりの危険による,他人の財産等に対する延焼の危険である。
[山口『刑法各論』2版388頁-389頁(最決平15・4・14刑集57-4-445)参照。参考:『刑法事例演習教材』(2009年)67頁〔14〕「燃え移った炎」]

/ 判例は,公共の危険の認識,不要とする。しかし,自己所有物を焼損すること自体に何らの法益侵害もなく,#刑法109条2項の放火罪は公共の危険の発生により初めて法益侵害性・違法性が認められるのだから_責任主義_故意犯処罰の原則から_認識を当然要求すべき。108条,109条1項の放火罪の故意とも区別しうる。
[同書389頁-390頁(大判昭6・7・2刑集10-303,最判昭60・3・28刑集39-2-75)参照。R40②(放火罪と公共の危険)]


2019年1月19日(その他1)
刑法105/ 841/ クレジットカード名義人本人に成り済ました他人名義のカードの不正使用は,#カード会員の個人的信用力に基づき無担保での信用許与を可能にするというクレジットカードの前提条件を偽るものなので.詐欺罪成立。カード名義人が使用を許可し,利用代金を決済するもの,と誤信していたとしても,故意阻却せず。
[山口『刑法各論』2版264頁(東京高判昭60・5・9刑月17-5=6-519,最決平16・2・9刑集58-2-89),『ケース&プロブレム 刑法各論』(2006年)弘文堂156頁Q61(詳しくは書かれていませんが,誤信という事情につき,「詐欺罪の客観的構成要件に関する判断か,それとも故意の存否に関する判断か」と問うており,後者の考え方によりました。),参照。R29①。参考:『刑法事例演習教材』(2009年)62頁〔13〕「一線を越えた男友達」]


2019年1月18日(その他1)
刑法104/ 840/ #被害者が生前有していた財物の所持は_その死亡直後もなお継続保護するのが法の目的にかなうので,被害者から財物の占有を離脱させた自己の行為を利用し財物奪取した一連の行為は,全体的に考察し,他人の財物に対する所持を侵害したものというべきで,この奪取行為は,占有離脱物横領でなく,窃盗罪を構成。
[最判昭41・4・8刑集20-4-207(平成29年採点実感(刑事系第1問)6頁)参照。R29①]


2019年1月17日(その他2)
民訴法143/ 839/ 判決理由中の判断に,既判力なし。訴訟物たる権利関係の存否の判断の前提判断に過ぎないから。∴#事実認定や先決的法律関係が他の訴訟で争われても_異なる認定や判断_可。所有権に基づく抹消登記手続請求権が確定されても,別訴で所有権の所在,争える。利息請求権が認められても,別訴で元本債権,争える。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版281頁(最判昭30・12・1民集9-13-1903)参照]

民訴法142/ 838/ 一部不存在確認請求において債務者自認部分に既判力は生じるか? #判例はこのような消極的確認訴訟の訴訟物は債務残額の存否ないしその限度としており.この理解によると,債務者(原告)自認部分に既判力は生じないこととなる。/裁判所の審理作業は債務総額全体に及ぶことから既判力を肯定する見解もある。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版68頁-69頁(最判昭40・9・17民集19-6-1533)参照]


2019年1月15日(その他2)
民訴法140,141/ 836,837/ 全額100万不存在確認請求で,既弁済70万,債務は30万を超えては存在しないとの判決は原告不利,#申立事項範囲超えないので_一部認容判決として可。100万のうち20万超部分不存在確認で,10万を超えて存在しないとの判決は,原告有利,申立事項超。30万を超えて存在しないとの判決は,原告不利,一部認容判決可。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版68頁参照]

/ 債務上限を明示しない債務一部不存在確認の請求の趣旨表示は,訴訟物の特定として十分か? 結論的には,#上限額が請求の趣旨欄に記載されていなくても_請求の原因欄を斟酌して特定されれば足る。給付訴訟でも請求の原因欄を斟酌するし,債権総額自体,争いがありうるから。判例:#一件記録での特定も認める。
[同書同頁(最判昭40・9・17民集19-6-1533)参照]


2019年1月11日(その他4)
民訴法137-139/ 833-835/ 一部請求の明示ある場合,#被告も残部不存在確認の反訴提起ができるから,防御の利益の不当な犠牲にはあたらない。明示がなかった場合,全部請求と見て防御した被告の信頼を保護する必要があるし,#残部請求が前訴の既判力で遮断されても_あえて明示しなかった原告に対し酷ともえいない(判例理論,明示説)。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版66頁(最判昭32・6・7民集11-6-948,最判昭37・8・10民集16-8-172)参照]

/ 明示的一部請求でも,審理は債権全額の存否にわたる以上,#前訴で敗訴した原告が訴え提起することが_特段の事情なき限り_個別・例外的に信義則に反し許されない場合あり。∵一部請求の全部または一部の棄却判決は_残部不存在との判断,#実質的に前訴の蒸し返し,被告の合理的期待に反し,二重応訴を強いる。
[同書同頁注1(最判平10・6・12民集52-4-1147)参照。
 信義則により後訴での主張を遮断した最判昭51・9・30民集30-8-799と同じ処理の仕方ですよね?]

/ 後遺損害は,明示的一部請求そのものではないが,#それと同視してよい事情が認められば_明示的一部請求と理解すべき。その事情としては,後訴請求が前訴で主張立証対象となりえず,当事者の合理的意思からみて,前訴請求に包含されていないことが明らかで,前訴判決もそのような趣旨で判断したといえる場合。
[同書67頁(最判昭42・7・18民集21-6-1559,最判昭61・7・17民集40-5-941)参照。R26③Q3]

民訴法136/ 832/ 裁判所は,当事者が申し立てていない事項につき,判決できない(民訴法246条)。審判対象(訴訟物)提示権能は原告にある。被告にとっては,攻撃防御の最終目標の提示。各当事者が損失の最大限を予測可能となる。裁判所は,#原告の意思(合理的意思),#被告の信頼(防御の利益)を裏切る,#不意打ち裁判はできない。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版63頁参照。R29③Q2(2)(同書64頁イ(最判昭32・1・31民集11-1-133),注1参照)。
 参考:最判平24・1・31(辰巳『趣旨・規範ハンドブック民事系』6版463頁)]


2019年1月6日(その他5)
民訴法132-135/ 828-831/ 権利承継人(Z)が訴訟承継の申立てをするには,独立当事者参加の形式による(#民訴法49条)。承継原因に争いある場合,Zは,前主原告(X)に対し承継原因の主張に係る権利の積極的確認を求め三面訴訟構造となる。争いなき場合,被告(Y)に対する請求のみ定立した片面的独立当事者参加。Xは,Yの同意を得て脱退可。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版325頁参照]

/ 義務承継人の参加承継も,基本,民訴法49条と同様。被告Yから債務を承継したZも,XY間の訴訟状態(訴訟資料,生成中の既判力)を利用し紛争解決を図る利益があるので,Xに債務不存在の消極的確認請求定立,Yに積極的確認請求を定立し,参加(#51条前段)。承継原因に争いなき場合,片面的独立当事者参加。Y脱退可。
[同書同頁参照]

/ 義務承継人に対する引受承継は,訴訟係属中,被告Yから第三者Zへ義務承継が生じた場合,原告Xは,それまでの訴訟状態(訴訟資料)を利用し当初の請求を貫徹する利益あり。そこで,旧請求を維持しつつ,Zに対し新請求を定立し,訴訟に引き込む。#同時審判共同訴訟の規律に服する。前主Yは,Xの同意を得て,脱退可。
[同書325頁-326頁参照]

/ #権利承継人に対する引受承継:Yが,訴訟係属中に権利の承継を主張するZに対し,消極的確認請求を定立,訴訟引受けの申立てをする(#民訴法51条後段)。XがYに債務履行請求した場合,Yの,XZ間の債権譲渡(債権喪失)の抗弁と,Zに対する債務不存在の主張とは法律上両立し得ない関係,統一的審判確保要(41条準用)。
[同書326頁参照]

民訴法131/ 827/ 任意的当事者変更:#訴訟係属後_原告が最初の被告以外の者に訴えを向けかえ_あるいは最初の原告以外の者が原告に代わり訴え提起する場合。法律の規定のない当事者の変更。当事者とすべきものを誤ったり,一部の当事者が脱落した場合等,実益あり。表示の訂正と異なる。新訴の提起と旧訴取下げの複合行為。
[森圭司『ベーシック・ノート民事訴訟法』新訂版308頁参照]


2019年1月5日(その他2)
民訴法129,130/ 825,826/ 訴訟物たる権利・法律関係の実体法上の帰属主体(他人)のために,訴訟追行権を有する訴訟担当者(当事者)が追行した訴訟の確定判決の効力は,当該利益帰属主体たる「他人」にも及ぶ。∵訴訟担当者(当該訴訟の当事者)は,#当該請求との関係で当事者適格が認められ_利益帰属主体の攻撃防御の地位と機会_代替。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版285頁参照]

/ 法定訴訟担当のうち,債権者代位訴訟や取立訴訟では,債権者が債務者の財産管理権に介入,利害が鋭く対立する関係にあり,判決効拡張について利益帰属主体(他人)#の代替的手続保障が図れない場合あり。⇒勝訴判決の場合に限る or訴訟告知,独立当事者参加,共同訴訟的補助参加で足る(被保全債権不存在除く)。
[同書同頁,『工藤北斗の合格論証集 商法民事訴訟法』(2014年8月)182頁(大判昭15・3・15,大阪地判昭45・5・28),辰巳『趣旨・規範ハンドブック民事系』6版525,参照]


2018年1月3日(その他1)
民訴法128/ 824/ 当事者が確定されなければ,訴状送達できず,訴訟を開始できないので,基準を明確にし,当事者を迅速に確定する必要あり。したがって,訴状の記載を基準とするのが妥当。もっとも,書面解釈の際,全く形式的に判断するならば,具体的に妥当な結論を導きえない。そこで,#一切の訴状の表示を合理的に解釈すべき。
[『工藤北斗の合格論証集 商法・民事訴訟法』(2014年8月)119頁(大阪地判昭29・6・26)参照]


2018年1月2日(その他3)
民訴法126,127/ 822,823/ 法律関係文書(民訴法220条3号)は,#訴訟以前に挙証者と所持者との間に存した実体的法律関係それ自体_関連事項を記した文書(共通文書),所持人がもっぱら自己使用のために作成した内部文書,除く。契約書,預金通帳,印鑑登録証明書,契約解除通知書など。自己使用文書として,日記,備忘録,議事録,内申書など。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版216頁参照]

/ 法律関係文書(民訴法220条3号)は,#法律関係の形成過程を表示した文書_その生成過程で作成した文書でもよい(有力説?)。審議会議事録(行政訴訟),航空機事故調査報告書(航空機事故訴訟),診療録(医療関係訴訟)など含む。∵証拠の構造的偏在是正,武器対等の原則回復のため。ただ,証言拒絶事由の類推適用要。
[同書216頁本文および注4]

民訴法125/ 821/ 利益文書(民訴法220条3号)は,#挙証者の間接的利益に資することが_文書の性質から客観的に認められれば足る(有力説)。挙証者と所持人その他の共同の利益のために作成されたものも含む。医師作成の診療録は,診療行為の適正確保等が目的で,患者の地位・権利義務関係の証明を予定したものではないが,含む。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版216頁参照]


2019年1月1日(その他1)
民訴法124/ 820/ 「利益」文書(民訴法220条3号)とは,#挙証者の地位や権利を直接に証明_または基礎づけるもの_かつ_それを目的として作成されたもの。挙証者を受遺者とする遺言書,挙証者のための契約の証書,挙証者の代理権を証する委任状,領収書,身分証明書など。争点に関連し,挙証者に有利と予測されるだけでは非該当。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版216頁参照]

©2018@right_droit
ツイフィール: http://twpf.jp/right_droit
ツイッター: https://twitter.com/right_droit
ブログ: http://right-droit.hatenablog.com/archive

Reply · Report Post