2019年1月(23日~28日分)ツイート:その他(刑法22)


2019年1月28日(その他2)
刑法130/ 866/ #行為者には_実行行為をそもそも行わないこと_構成要件的結果発生の回避が求められる。結果回避義務は,過失犯で問題とされるが,刑法の犯罪予防作用はこのような義務を通じ果たされるのだから,それを過失犯に限る理由なく,故意犯にも当然あてはまる。そして,結果回避義務の前提として結果回避可能性要。
[山口『刑法総論』3版53頁参照。山口先生の説かれる「実行行為」概念がまだ理解できない。実行行為とは「因果関係の起点となる行為」であり(同書52頁LL4),「正犯性の認められる行為者の行為」とされるが(68頁LL6),52頁では,「客観的に実行行為としての危険性が認められる場合であっても,行為者にその認識がなく,故意が認められないため,過失致死罪にはなりえても,殺人罪にはならない」という説明がある。それでも,「実行行為にあたるか,それ以前の段階にある行為」(予備行為)との違いは,行使者の認識に求めるわけではないのであろう? 行為者の認識に求めるならば,行為無価値の考え方になってしまうのではないかと思うからである。
 53頁~57頁から考えるに,もしかしたら,結果回避可能性を備えた客観的危険性ある行為,という感じの理解であろうか? 行為者の認識の問題ではなく,当該行為者の客観的な属性(その者に結果回避が可能か)をも考慮した上での行為の客観的危険性があれば,「正犯性の認められる行為者の行為」であり,「因果関係の起点となる行為」である「実行行為」(構成要件的行為)となるのであろうか?
 取り留めない考えを記したのみで,訳のわからないことを書いているかもしれません。すみません。もう少し勉強してから,また書きます(1/28/2019)。]

刑法129/ 865/ 因果関係は,まず構成要件的結果が結果回避義務違反に基づき発生したか,検討要。そして,#行為者に課される結果回避義務を尽くしても回避できない結果を生じさせたとして行為者を罰するのは不当(結果回避可能性要)。条件関係判断に用いられてきた,あれなければこれなし公式は,結果回避可能性判断である。
[山口『刑法総論』3版57頁(「行為なければ結果なしの公式,同書54頁以下」)参照。参考:内田『民法Ⅱ』3版386頁,平井宜雄『債権各論Ⅱ不法行為』(1992年)83頁]


2019年1月27日(その他1)
刑法128/ 864/ 共犯の処罰根拠は,#共犯行為が構成要件的結果を惹起したことにある。教唆・幇助では,#正犯行為を介したTB的結果惹起を要し_教唆・幇助行為とTB的結果との間に因果関係必要。共同正犯でも,#自らの因果的寄与と他の共同者の行為を介した因果的寄与とを併せ_共同正犯行為とTB的結果との間に因果関係必要。
[山口『刑法総論』3版319頁参照]


2019年1月26日(その他5)
刑法126,127/ 862,863/ 刑法38条3項は,自己の行為が違法だと認識していなくとも,犯罪事実の認識あれば,故意責任を問いうる旨規定(法の不知は恕せず)。情状により,刑の減軽あり。しかし,違法だと知らなかったことに相当な理由があり,そのことに過失なき場合(#違法の意識の可能性なき場合),非難できず,責任を問えないと解する。
[平野『刑法概説』92頁参照。違法性の意識の可能性必要説]

/ 故意犯成立に違法の意識を要するとする見解を,故意説,#違法の意識の可能性あれば,故意の責任を問えるという見解を,責任説という。#違法の意識の可能性は_故意_過失に共通の_かつ_別個の責任要素(責任阻却事由)で,#違法性阻却事由不存在は_構成要件該当事実と同様_故意の認識対象と解する(制限責任説)。
[同書94頁-95頁,77頁-78頁参照。
 なお,司法協会『刑法総論講義案』三訂補訂版は,違法性の意思の可能性がなければ,(責任)故意を阻却すると解している。
 平野先生のとる制限責任説との違いは,違法性の意識の可能性がなければ,故意を阻却するか(刑法総論講義案),故意の上位概念である責任を阻却するか(刑法概説),である。山口教授も制限責任説をとられる(『刑法総論』3版266頁-268頁参照)。]

刑法124,125/ 860,861/ 刑法246条2項の客体たる財産上の利益は,有体物以外の財産的利益を広く含むが,#移転性のある利益に限られる。情報・サービス(役務)などにつき,詐欺罪などの移転罪成立は一般に肯定できない。もっとも,有償サービスにつき,#請求しうる料金を免脱されたという財産上の損害,利益の取得あり,2項詐欺罪成立。
[山口『刑法各論』2版247頁-248頁参照]

/ 債務の履行や弁済の一時猶予も財産上の利益にあたり,2項詐欺罪が成立しうる。もっとも,財産的利益の具体的内実・実質的内容を問うべきであり,#債権の財産的価値が減少し_債権者に実質的な被害が生じるという特段の事情ある場合に限るべき。財物の移転と同視しうるだけの具体性・確実性ある場合である。
[同書249頁-250頁(大判明44・10・5刑録17-1598,大判大12・6・14刑集2-537,最決34・3・12刑集13-3-298/ 最判昭30・4・8刑集9-4-827)参照]

刑法123/ 859/ 詐欺罪(刑法246条)は,移転罪だが,強取罪と異なり,瑕疵ある意思に基づく占有移転を要件とする交付罪である。#人を人を欺く行為により錯誤を生じさせ_錯誤に基づく交付行為により物・利益の移転がなされ_物・利益の喪失という法益侵害を惹起する特定の因果関係が認められれば,既遂。個別財産に対する罪。
[山口『刑法各論』2版244頁参照]


2019年1月25日(その他5)
刑法122/ 858/ 正当防衛では,被侵害法益が侵害者法益に対し質的に優越,⇒緊急避難の法益衡量原理と異なり,より侵害性の小さい防衛行為不存在という補充性を要しない。だからといって,防衛のためならいかなる行為でも正当化されるわけではない(∵過剰防衛)。正当化される防衛行為の範囲(#防衛手段としての相当性)如何?
[山口『刑法総論』3版]134頁参照]

刑法121/ 857/ 判例は,防衛の意思を要求する。正当防衛にあたる事実の認識(心理状態)と考えられるが,憤激・逆上していても,攻撃意思が併存していても,認められる。/しかし,#違法性は客観的にきまるべきなので_防衛意思を要求すべきでない。相手方の侵害を知らず攻撃しても,正当防衛成立(偶然防衛,情況により未遂犯)。
[平野『刑法概説』54頁,山口『刑法総論』3版131,130頁,参照。
 防衛の意思につき,大塚仁教授は,「急迫不正の侵害を意識しつつ,これを避けようとする単純な心理状態」とされ,それは「防衛の認識,対応の意識」(曽根教授)とも言い換えられるもの,さらに,正当防衛にあたる事実の認識,ないし,正当防衛状況その他正当防衛にあたる事実の認識(単なる事実の認識?)とも言い換えられるのであろう。判例は,そういった単なる認識以上の意義を,防衛の意思に与え,憤激・逆上している場合や,攻撃の意思が併存する場合も,そのような正当防衛にあたる事実の認識(単純な心理状態)である防衛の意思は否定されない(←これが単なる認識以上の意義?),としているのであろう(山口同書同頁参照)。
 両説の違いは,偶然防衛を正当防衛と認めるかどうかだけのようである。]

刑法120/ 856/ 侵害予期があっても侵害の急迫性は直ちに失われないが,#積極的加害意思ある場合(反撃行為の予備段階),急迫性失われる。憤激・逆上しても,攻撃の意思が併存しても,防衛の意思は必ずしも否定されないが,#積極的加害行為が認められもっぱら攻撃意思で反撃したと考えられる場合(反撃行為の実行段階),否定。
[山口『刑法総論』3版134頁(最決昭52・7・21刑集31-4-747,最判昭50・11・28刑集29-10-983)参照]

刑法119/ 855/ 防衛の意思は,憤激・逆上しても否定されず,攻撃の意思とも併存しうるが,#積極的加害行為に現れた純然たる攻撃意思により否定される。防衛の動機が多少なりともあれば防衛意思は認められるが,攻撃の動機・意思が他の動機を圧倒しもっぱら攻撃意思による,#意図的な過剰行為(積極的加害行為)あれば,否定。
[山口『刑法総論』3版129頁-130頁(最判昭50・11・28刑集29-10-983)参照]

刑法118/ 854/ 予期だけで侵害の急迫性は失われないが,#侵害を予期した上で_積極的加害意思で侵害に臨んだ場合_急迫性は認められない。判例上,防衛の意思要件が緩やかに解され,防衛の意思なしとして正当防衛が否定される事例は限られるが,侵害予期時点に遡り,積極的加害意思で侵害に臨んだことを根拠に正当防衛否定。
[山口『刑法総論』3版125頁(最決昭52・7・21刑集31-4-747)参照]


2019年1月24日(その他6)
刑法117/ 853/ Xが共犯者数名と住居侵入・強盗を共謀し,共犯者の一部が家人在宅の住居に侵入した後,見張り役共犯者が住居内の共犯者に電話で,犯行はやめた方がよい,先に帰る,などと一方的に伝え,#Xも以後の犯行防止措置を講ずることなく,見張り役と共に離脱,残った共犯者が強盗した場合,共謀関係の解消認められない。
[山口『刑法総論』3版379頁(最決平21・6・30刑集63-5-475,強盗につき実行の着手前で,残った共犯者に離脱をしようとする者らが離脱の意思を伝え,それにも関わらず残った共犯者らが強盗を行った場合でも,共犯関係の解消(共犯関係からの離脱)には,以後の犯行を防止する措置を講ずることが必要であるとされた事例)参照]

刑法116/ 852/ 共犯関係の解消のため,犯行防止措置を要するのは,犯行継続のおそれに基づく負担(作為義務)。#それまでの行為の違法性が阻却される場合,負担を課す理由がない。正当防衛行為を共同し,相手方の侵害終了後,一部共同者が構成要件的行為を続けた場合,共犯関係の解消でなく,追撃行為に新たな共謀あるか問題。
[山口『刑法総論』3版380頁(最決平6・12・6刑集48-8-509)参照]

刑法114,115/ 850,851/ 強盗以外目的で暴行・脅迫を用い相手方の反抗を抑圧した後,財物奪取意思を生じ,反抗抑圧状態を利用し財物奪取した場合? #強盗罪成立には財物奪取に向けた暴行・脅迫が必要だから_新たな暴行・脅迫を要すると解する。また,∵抗拒不能に乗じた性交等を罰する刑法178条2項のような規定が,強盗罪に不存在。
[山口『刑法各論』2版221頁参照]

/ 新たな暴行・脅迫は,#相手方の反抗を抑圧した者が_すでに反抗を抑圧されている者に対し行う暴行・脅迫なので_通常の場合に比し程度の低いもので足り_反抗抑圧状態を維持・継続させるもので足りる。しかし,暴行・脅迫による犯行抑圧状態惹起を要し,#単なる反抗抑圧状態不解消という不作為では足りない。
[同書222頁(東京高判昭48・3・26高刑集26-1-85)参照]

刑法113/ 849/ 反抗抑圧に足りない程度の暴行・脅迫を用いたところ,被害者が特別憶病などの事情で実際に反抗を抑圧された場合? 暴行・脅迫は反抗抑圧手段としての要件なので,実際に反抗抑圧効果生じた場合,強盗罪成立可。#被害者特性を考慮した判断が客観的判断にかなう。事情不知の場合,強盗の故意なく,恐喝の故意。
[山口『刑法各論』2版218頁参照]

刑法112/ 848/ #事後強盗罪は_窃盗罪と暴行・脅迫罪の結合犯と解する。窃盗,暴行・脅迫が法益侵害の内容をなし,暴行・脅迫は実際に行われること要。#財物に対する罪なので,窃盗の既遂・未遂により,同罪の既遂・未遂が決まる。#暴行・脅迫にのみ関与した後行者は_承継的共犯の成否にかかり_暴行・脅迫罪の共犯となる。
[山口『刑法各論』2版233頁参照。山口教授は,後行者の加功前の事実につき承継的共犯否定され,中間説的な考え(加功後の事実につき共犯関係を認める)を採られるので,事後強盗の途中から暴行・脅迫にのみ関与した後行者は,加功前の窃盗につき共犯責任を負わない,という理屈のようである。]


2019年1月23日(その他3)
刑法109-111/ 845-847/ 強盗罪の手段としての暴行・脅迫は,#被害者の反抗を抑圧するに足る程度のものでなければならない。それは,#社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足る程度のものかという客観的基準による。具体的事案の被害者の主観が基準ではない。その際,#被害者側の事情_行為の状況_行為者側の事情を総合判断。
[山口『刑法各論』2版217頁(最判昭24・2・8刑集3-2-75,東京高判昭29・10・7東高刑時報5-9-380,東京高判昭37・10・31東高刑時報13-10-267)参照]

/ #客観的に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫が行われたが_現実に抑圧されなかった場合,判例は強盗既遂とする。しかし,強盗罪は,暴行・脅迫により被害者の反抗が抑圧されて,財物が奪取されるという因果経過必要。∵交付罪たる恐喝罪との区別。この場合,#強盗未遂と恐喝既遂の観念的競合。
[同書同頁(最判昭24・2・8刑集3-2-75/ 大阪地判平4・9・22判タ828-281,現在の実務は実際にはこの考えに従っていると解されるとのこと。)参照]

/ 暴行がもっぱら財物を直接奪取する手段として用いられた場合,#反抗抑圧に向けられてないので,強盗罪不成立。⇒ひったくりは,通常,窃盗罪。もっとも,ひったくろうとしたハンドバックの紐をつかんだまま離さない女性被害者を自動車で引きずり転倒させたりした場合,反抗抑圧手段としての暴行,強盗罪成立。
[同書218頁-219頁(最決昭45・12・22刑集24-13-1882/ 札幌地判平4・10・30判タ817-215(恐喝未遂罪としたもの))参照]

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