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3rd Feb 2019 from TwitLonger

刑訴法ノート⑨/ 公判編まとめ(2) (31ツイート)


記号,略号: ☆問題,事例,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答
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◇違法収集証拠排除法則一般
[・任意性を欠く自白等の供述証拠は、証拠収集方法の違法性が証明力に影響を及ぼすことが多く、かつその場合に証拠排除することにそれほど反対はない。これに対し、違法に収集された非供述証拠、特に違法な押収・捜索の結果得られた証拠物については、その違法が証明力に影響を及ぼさないため、見解が分かれる。]
[・刑罰権の実現は適正な手続きによって行うべきであり、裁判所が違法収集証拠によって判決することは、その違法行為を引き継ぐことになり適正手続の理念に反する。また、政策的にも捜査機関が違法な手続を行うことを防止するには、得られた証拠を排除するのが最も有効である。したがって、違法に収集された非供述証拠も排除すべきである。
 さらにこの証拠に基づき発見されまたは得られた他の証拠の証拠能力も否定すべきである(毒樹の果実理論)。]
[・判例は、一般論として、証拠物の押収手続に、憲法35条および刑訴法218条1項当の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、証拠として許容することが、将来の違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、証拠能力が否定される旨、判示している。]
「・すなわち、①違法の重大性と、②違法捜査の抑制の両面に関する種々の事情を総合して排除の有無を決すべきである(相対的排除説)。具体的には、違法行為の客観的側面(適法な手続きからの逸脱の程度、害された利益の性質・程度等)、違法行為の主観的側面(違法行為の組織性・計画性・反復性、違法の認識の有無ないし程度等)、違法行為と証拠収集との関連性(違法行為が収集手続の中心部分に存したか、違法行為がなくとも証拠を収集できたかなど)等が考慮されるべきである。もっとも、①の要件をみたせば②の要件もみたされると判断されることが多いであろう。」

刑訴法47/ 違法収集証拠/ 476/ 違法に収集された非供述証拠は,その違法が証明力に影響を及ぼさないが,証拠物の押収手続に,#憲法35条・刑訴法218条1項当の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり,証拠として許容することが,#将来の違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合,証拠能力が否定される。
[小林充『刑事訴訟法』新訂版262頁-263頁(最判昭53・9・7刑集32-6-1672)参照]

〇証拠収集手続に違法があるため,証拠物(尿(の鑑定書))の証拠能力が否定される場合
刑訴法判例13/ 最判昭61・4・25参照:採尿手続が違法だと認められる場合も,直ちに尿の鑑定書の証拠能力を否定すべきでなく,#その違法の程度が令状主義を没却するような重大なものであり_右鑑定書の証拠としての許容が_将来における違法な捜査の抑制の見地から相当でないと認められるときに,証拠能力が否定されるべき。
[司法協会『刑事訴訟法講義案』4訂版387頁(刑集40-3-215,最判昭53・9・7刑集32-6-1872)参照。証拠収集手続に違法があるため,証拠物(尿(の鑑定書))の証拠能力が否定される場合。]

〇違法収集証拠の違法の程度が重大なものと評価された事例
刑訴法判例14/ 最判平15・2・14参照:逮捕時逮捕状の呈示なく,その緊急執行もされていない手続的違法あるにとどまらず,#その違法を糊塗するため_内容虚偽の捜査報告書を作成し_公判廷で事実と反する証言をしている等の警察官の態度を総合的に考慮すれば,本件逮捕手続の違法の程度は,令状主義の精神を没却するほど重大!
[司法協会『刑事訴訟法講義案』4訂版389頁(刑集57-2-121)参照。最高裁として初めて証拠能力否定の判断を示したもの。(抜粋要約した判旨の続き)「本件逮捕手続の違法の程度は,令状主義の精神を潜脱し,没却するような重大なもの」。「このような違法な逮捕に密接に関連する証拠を許容することは,将来における違法捜査抑制の見地からも相当でないと認められるから,その証拠能力を否定すべきである。」]

◇派生証拠(毒樹の果実)について
「・派生証拠(毒樹の果実)についても、一律に証拠排除すべきではなく、その収集過程ないし先行する違法手続との関連性、派生証拠の重要性等を総合的に考慮して証拠能力を判断すべきである。例外を根拠づけるものとして、①独立入手源の法理(違法捜査とは無関係の独立の情報源をもっていた場合)、②希釈の法理(第1次証拠と第2次証拠との因果関係が希釈化していた場合)、③不可避的発見の法理(違法捜査がなくとも、独立の捜査により発見したであろうとされる場合)が考えられる。」

刑訴法48/ 違法収集証拠/ 477/ 派生証拠(毒樹の果実)も原則証拠排除されるが,収集過程,先行違法手続との関連性,派生証拠の重要性等を総合考慮。例外,①#独立入手源法理(違法捜査と無関係の独立情報源),②#希釈法理(第1次証拠と第2次証拠との因果関係が希釈化),③#不可避的発見法理(違法捜査なくとも,独立の捜査で発見したであろう)。
[小林充『刑事訴訟法』新訂版263頁,264頁(最判平15・2・14刑集57-2-121)参照。法的判断枠組み(前半は,事実の判断手法(判例参照)。後半は,毒樹の果実理論の下位規範,あるいは,事実認定において,例外的に,派生証拠(毒樹の果実)が証拠排除されない場合の,具体的な理由づけの例(上記の3つの法理))

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◇伝聞証拠とは
[・公判廷外の供述を内容とする証拠で、供述内容の真実性を立証するためのものを伝聞証拠という。ある人(原供述者)の言語的な表現(原供述、言語によるものだけでなく、動作によるものも含まれる)について、その内容をなす事実を証明する証拠資料として用いる場合、これを供述証拠という。この供述証拠が、公判廷に供述代用書面や伝聞供述の形式で証拠として現れる場合が伝聞証拠というわけである。
 伝聞証拠には原則として証拠能力がない(刑訴法320条)。このような証拠法則を伝聞法則という。]

刑訴法62/ 611/ #公判廷外供述を内容とし_その内容の真実性立証に用いる証拠が伝聞証拠。ある人(原供述者)の言語的表現(原供述,動作によるもの含む)につき,内容たる事実を証明する証拠資料が供述証拠。これが,公判廷に供述代用書面や伝聞供述として現れる場合が伝聞証拠で,#原則_証拠能力なし(刑訴法320条,証拠法則)。
[日野浩一郎『刑事公判法演習 理論と実務の架橋のための15講』159頁参照。伝聞証拠とは何か。供述証拠という言葉との関係。ほか]

◇伝聞法則とは
刑訴法88/ 746/ #供述証拠の内容は_ある要証事実を知覚_記憶_叙述することにより証拠となり_内容の真実性を立証するために用いられる。不正確な知識(見間違え,聞き間違え),記憶の喪失・混乱・入替え,故意・過失等による記憶と叙述の不一致などが生じるおそれあり。そこで,#伝聞証拠中_原供述者の供述の正確性_吟味要。
[緑大輔『刑事訴訟法入門』267頁参照]

◇伝聞法則
刑訴法11/ 公判1/ 29/ 伝聞証拠(#刑訴法320条)とは、#公判廷外の供述 を内容とする、公判廷における供述または書面で、供述 #内容の真実性 を立証するための証拠として提出されるものをいう。その内容の真実性は、#反対尋問権の保障 のみならず、#供述態度の観察、#偽証罪の警告 により担保しうると解する。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』5版3刑事系268頁参照]

刑訴法12/ 公判2/ 30/ 証人の死亡等により #主尋問だけで反対尋問ができなかった公判廷の証言 の 証拠能力 も認められると解する。なぜなら、伝聞供述の #内容の真実性 は、#裁判官による証人の供述態度の観察 や、#証人への偽証罪の警告 により、代替しうると考えられるからである。#刑訴法
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』5版3刑事系269頁参照]

刑訴法13/ 公判3/ 31/ 伝聞法則(刑訴法320条)の適用を受けるか否かは、#要証事実との関係で相対的に決せられる。供述 #内容の真実性 が要証事実である場合に、伝聞法則が適用される。これに対し、その供述が本当に存在したか否かが問題である場合(非供述的利用の場合)は、非伝聞とされ、伝聞法則は適用されない。
[ 辰巳『趣旨・規範ハンドブック』5版3刑事系269頁参照]

刑訴法24/ 公判11/ 241/ 領収書が相手方に #交付 されていれば、記載内容から直接でなく、領収書の存在とそれが相手方に交付された事実とから、領収書の記載内容に相当する #金員授受の事実 を推認することは、経験則に適う合理的な推認であり、伝聞法則に反しない。記載内容の真実性から #独立した証拠価値 がある。
[古江『事例演習刑事訴訟法』初版239頁参照。領収書が,非伝聞証拠にあたる場合。]

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☆現在の心理状態を述べる供述
刑訴法問題17/ 古江事例演習刑訴法初版〔22〕参照:Xは,Vに対する強姦致死罪で起訴され,犯人性を否認したところ,証人Wは,検察官からの主尋問に対し,「Vから,生前,『Xは嫌いだ。いやらしいことばかりするから』と打ち明けられた」旨証言。弁護人は,伝聞排除されるべき旨の異議を直ちに申し立てた。異議は容認されるか。
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』〔22〕参照]

〇米子強姦致死事件
刑訴法判例18/ 最判昭30・12・9参照:強姦致死事件被害者Vの原供述『あの人は好かんわ,いやらしいことばかりする』を内容とする情夫Wの証言につき,Xが同意情交を主張する場合,V同意を否定する情況証拠として,Vの嫌悪感を立証するためなら,精神状態の供述(非伝聞)。#犯行自体の間接事実たる動機の証拠とするなら_伝聞。
[上口裕『刑事訴訟法』2版379頁注5(刑集9-13-2699,米子「あの人は好かんわ」事件)参照。参考:古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版232頁。
 情況証拠は,非供述証拠(ことば非供述的利用など)としての間接事実を言うようである(上口・同書378頁,343頁)。間接証拠とは,要証事実を推認させる事実(間接事実=情況証拠)を内容とする証拠であって,その内容である(いくつかの)間接事実に,論理則や経験則をあてはめて,要証事実を証明する証拠(344頁)。
 間接事実は要証事実を推認させ得る(いくつかの)事実の一つに過ぎないが,間接証拠は,(いくつかの)間接事実に論理則や経験則をあてはめて,要証事実を推認する証拠(その内容が,一つの間接事実であることもあればあれば,いくつかの間接事実であることもある)と,集合的な概念として捉えることに親しむ?]

◇米子「あの人すかんわ」事件
刑訴法89/ 747/ 証人W証言中,V原供述のうち『Xは嫌いだ』部分は,Xの犯人性が争点なら,関連性なし。行為主体性確定後,合意情交か強姦かが争点なら,V強姦致死罪立証に関連性あり,かつ非伝聞(#精神状態の供述)。『いやらしいことばかりする』部分は,#強姦動機を推認させる間接事実として内容真実性が問題となる伝聞証拠。
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版232頁〔22〕(最判昭30・12・9刑集9-13-2699,米子「あの人好かんわ」事件)参照。
1.動機とはなんであろうか? 犯罪積極的成立要件たる客観的構成要件(構成要件的行為,結果,因果関係),責任要件(故意・過失)のうち,主観的要件たる故意そのものではないであろう。動機(・企図)も,故意(・過失)という主観的犯罪成立要件などを推認するための間接証拠ということであろう? 参考:司法協会『刑事訴訟法講義案』4訂版287頁に,「動機・企図」との記述があり,やはり,故意そのものではないようである。
2.要証事実がなんであるかといことと,争点とは区別するとわかりやすいかもしれない。争点が同意に基づく情交か,強姦かなら,『Xは嫌いだ』,『いやらしいことばかりする』は,前者は非伝聞(精神状態の供述)として要証事実となり,後者は伝聞証拠として要証事実となるということだろう。
3.「殺すのを見た」→「殺した」のような推論が確実で、両者が等価値であるとき,後者「殺した」が要証事実であるが,昭和30年最判の事案の『いやらしいことばかりする』=「平素いやらしい行動をしていた」→「動機」を推論する過程の関係は,確実な推論(等値できる)とはいえず,前者は後者を推認する間接事実の1つである場合,前者が要証事実であり,争点は,動機が認められるか否か。]

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◇共謀に関する犯行計画メモ
刑訴法91/ 882/ 意思,計画記載メモは,#その意思_計画立証のためには_伝聞禁止法則不適用。知覚,記憶,表現叙述を経る伝聞証拠と違い,知覚,記憶を欠くから,真摯な作成過程が証明されれば,原供述者への反対尋問不要。#共謀に関する犯行計画記載メモも同様。ただ,#共犯者全員共謀の最終的意思合致が確認されていること要。
[東京高判昭58・1・27判時1097-146『刑事訴訟法判例百選』10版〔79〕]

◇犯行計画メモ
刑訴法26/ 公判13/ 243/ 犯行計画メモが関与者に #回覧 され、共謀内容の確認に供された場合、当該メモを用いて謀議が形成されたのであり、当該メモ紙は共謀の #意思形成手段として用いられたツール(道具)であり、その存在自体プラス記載内容に独立の証拠価値があり、共謀の意思形成過程を証明する情況証拠となりうる。
[古江『事例演習刑事訴訟法』初版241頁参照。犯行計画メモが関与者に回覧された場合。『プラス記載内容』の部分等,私の補った言葉ですので,正確を期されたい方は,出典でご確認下さい。]

刑訴法25/ 公判12/ 242/ ①犯罪計画の記載されたメモの存在、②内容が実際の犯行に合致、③#被告人の支配領域内で発見、という事実は、被告人の共謀への加担の情況証拠の1つとなり、メモは記載内容の真実性から独立した証拠価値(固有の証拠価値)を有するので、メモの存在と記載内容自体を要証事実とすれば、非伝聞である。
[古江『事例演習刑事訴訟法』初版241頁参照。共犯者とされる者作成の犯行計画メモが,被告人の支配領域内で発見された場合)]

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〇(犯行)再現実況見分調書
刑訴法判例5/ 最判平17・9・27参照:捜査機関が任意処分として行う検証を,実況見分と呼び,結果を記録したものが実況見分調書で,#伝聞証拠。再現実況見分調書からは心証形成しないことが前提だが,#本件では証拠の標目欄に掲げられたこと等から_実質上_再現されたとおりの犯罪事実の存在を要証事実とすると考えられた。
[『刑事訴訟法判例百選』10版〔83〕(刑集59-7-753)参照。被疑者,被害者,目撃者などによる再現実況見分調書は,これにより裁判官のが心証形成にしないことを前提とするが,本件では,当該事案の争点や公判経過のほか,本件両書証が第1審で証拠の標目欄(刑訴法335条1項)に掲げられたことに鑑み,(結果的に)実質において,再現されたとおりの犯罪事実の存在の心証を裁判官に抱かせることを目的とする,すなわち,当該犯罪事実の存在を要証事実とする伝聞証拠と,最高裁は考えたということだろう。参考:R21②,25②]

刑訴法判例6/ 最決昭59・12・21:犯行状況等を撮影したいわゆる現場写真は,非伝聞証拠である旨判示し,写真による記録過程の伝聞性を否定。最判平17・9・27:#再現者が行動で示した供述を撮影したいわゆる供述写真は伝聞証拠だが,写真による記録過程部分の伝聞性は否定。⇒#記録過程の正確性担保のための署名押印不要。
[『刑事訴訟法判例百選』10版191頁タテ5右欄(順に,刑集38-12-3071,刑集59-7-753)参照。いわゆる現場写真と,いわゆる供述写真の違い,ぱっと見わかりにくかったが,こういうことなんだなー。参考:同書〔89〕]

◇刑訴法321条3項
刑訴法29/ 公判14/ 331/ 捜査機関が強制処分として行う検証(#刑訴法218条_220条1項2号)の結果を記載した書面のみならず、#任意処分として行う検証の結果を記載した書面(#実況見分調書)も、書面の性質として検証調書と全く同じと解せるので、#321条3項所定の書面に含まれる。検死調書(229条)も同様。
[『刑事訴訟法講義案』四訂版295頁(最判昭35・9・8刑集14-11-1437),R21②設問2,参照。参考:辰巳『趣旨規範ハンドブック』刑事系5版278頁1つ目の論点。]

刑訴法41/ 公判19/ 346/ 犯罪事実の存在を要証事実とする実況見分調書や写真撮影報告書等の証拠能力は、刑訴法326条の同意なき場合、321条3項要件充足を要するほか、再現者の供述の録取部分、写真については、再現者が被告人以外の者の場合、#321条1項2号・3号、被告人の場合、322条1項の要件充足を要する。
[最判平17・9・27刑集59-7-753(『刑事訴訟法判例百選』10版〔83〕190頁)参照。R21②設問2]

◇再伝聞
刑訴法42/ 公判20/ 347/ 供述者本人に刑訴法321条1項事由あるとき、供述証拠に証拠能力を認めたのは「#公判準備・公判期日における供述」(324条参照)にかえ書類を証拠とすることを許したものだから、321条1項により証拠能力を認むべき供述調書中の伝聞にわたる供述は「公判準備・公判期日における供述」と同等。
[最判昭32・1・22刑集11-1-103(『ケースブック刑事訴訟法』3版有斐閣593頁)参照]

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◇退去強制がなされた場合の検面調書について
[・検察官が、証人となるべき外国人がいずれ国外に退去させられ公判準備または公判期日に供述することができなくなることを認識しながら殊更にそのような事態を利用しようとした場合、裁判官または裁判所が証人尋問の決定をしているにもかかわらず強制送還が行われた場合等、当該外国人の検察官面前調書を証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるときは、これを事実認定の証拠とすることが許容されない。]

刑訴法76/ 698/ 検察官が,証人がいずれ国外退去させられ公判期日等に供述不能になることを認識しながら殊更にそのような事態を利用しようとした場合,証人尋問決定されているにもかかわらず強制送還した場合等,#当該外国人の検察官面前調書の証拠請求が手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるとき証拠能力なし。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック刑事系』5版275頁(最判平7・6・20)参照]

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〇特信情況(刑訴法321条1項2号後段)
刑訴法判例12/ 最判昭30・1・11参照:検察官面前調書に関する(相対的)特信情況(刑訴法321条1項2号後段)の判断資料につき,#必ずしも外部的な特別事情でなくても_供述内容自体で信用性ある情況の存在を推知せしめる事由となる。外部的事情を基準とし副次的にこれを推認する資料として調書の供述内容も考慮可とする趣旨。
[『刑事訴訟法判例百選』10版〔A38〕(刑集9-1-14)参照]

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◇刑訴法321条1項3号の要件
[・刑訴法321条1項3号は第三者の伝聞証拠についての基本形である。他の伝聞例外規定は、本号の要件をそれぞれの理由により軽減したものである。
 その要件は、供述者が被告人以外の者であることのほか、①供述者が死亡、精神もしくは身体の故障、所在不明または国外にいるため公判準備または公判期日において供述することができないこと(供述不能)、②その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであること(不可欠性)、③その供述が特に信用すべき情況の下にされたものであること(絶対的特信情況)である。
 ①②が必要性の、③が信用性の情況的保障(供述が信用できる外部的情況の存在)の趣旨であり、その双方が要求されている。
 ②は、その供述を証拠とするかどうかで、事実認定に著しい差異を生じさせる可能性がある場合である。]

刑訴法63/ 612/ 刑訴法321条1項3号は第三者の伝聞証拠の基本形。#他の伝聞例外規定は_本号の要件をそれぞれの理由で軽減したもの。その要件は,供述者が被告人以外の者のほか,①供述不能,②その供述の不可欠性,③絶対的特信情況である。①②が必要性,③が信用性の情況的保障(供述が信用できる外部的情況の存在)の趣旨。
[日野浩一郎『刑事公判法演習 理論と実務の架橋のための15講』164頁,165頁参照。刑訴法321条1項3号について]

◇「供述することができないとき」(刑訴法321条1項各号)
[・「死亡」等の事由(刑訴法321条1項各号)は、公判準備もしくは公判期日に供述者の供述が得られない場合を例示しているのであり、供述の再現不能を示すその他の事由を含むと解される(例示列挙)。そこで、公判廷で証言拒絶権を行使した場合もこの要件にあてはまる。共同被告人の事件で、相被告人が黙秘権を行使したときも同様である。これらの場合、公判廷の供述が全く得られない点では、死亡、所在不明等の列挙事由と異なるところはないからである。また、書面を証拠としても、証言拒絶権を侵したことにはならない。]

刑訴法56/ 596/ 死亡等の事由(刑訴法321条)は,公判期日等に供述者供述が得られない場合の例示で,供述再現不能を示す他の事由,含む。公判廷で証言拒絶権行使,相被告人が黙秘権行使の場合,該当。#公判廷の供述が全く得られない点_死亡_所在不明等の列挙事由と異ならないから。書面を証拠としても,証言拒絶権侵害でない。
[司法協会『刑事訴訟法講義案』4訂版311頁(最判昭27・4・9刑集6-4-584,最判昭28・4・16刑集7-4-865,最決昭44・12・4刑集23-12-1546)参照。公判廷での証言拒絶権行使等は,刑訴法321条1項各号の要件に該当するか]

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◇絶対的特信情況
刑訴法19/ 公判8/ 144/ 本件供述調書は国際捜査共助に基づいて作成されたものであり、犯罪事実の証明に欠くことができず、日本の捜査官、検察官立会の下での取調べに際し、共犯者2名に対し黙秘権が実質的に告知され、両名に対し肉体的、精神的強制が加えられた形跡もなく、#刑訴法321条1項3号 により証拠採用できる。
[最判平23・10・20刑集65-7-999『刑事訴訟法判例百選』10版〔82〕参照。参考:福岡一家4人殺人事件 http://yabusaka.moo.jp/fukuokaikka.htm など参照。]

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◇国外退去の場合
[・出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」という)による退去強制(24条)により外国に在る者は、公判廷での証言を期待できない(5条1項9号)。したがって、供述不能に該当する場合が大半である。
 しかし、検察官調書作成時点では日本国内にいたのであり、国家機関により退去強制が行われて供述不能の状態が作出されていることから、被告人の反対尋問権の保障(憲法37条2項)や適正手続の理念に照らすと、その証拠請求が手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるときは、証拠とすることが許容されない場合がある。
 それは、①検察官において、供述者が国外に退去させられて公判期日に供述できなくなると認識しながら殊更その事態を利用した場合、②その供述者について承認尋問が決定されているにもかかわらず強制送還が行われた場合などである。]

刑訴法64,65/ 614.615/ 退去強制(入管法24条)により外国に在る者は供述不能に当たり得るが,検察官調書作成時点で国内におり,#国家機関により退去強制が行われて供述不能の状態が作出されていることから,被告人の反対尋問権保障(憲法37条2項)や適正手続理念に照らし,その証拠請求が手続的正義の観点から公正さを欠く場合あり。

/ 退去強制により外国に在る者の,検察官調書の証拠請求が手続的正義の観点から公正さを欠く場合,証拠として許容されない。①#検察官が_供述者が国外に退去させられ期日に供述不能となると認識しながら殊更その事態を利用した場合,②#その供述者の承認尋問決定があるにかかわらず強制送還された場合など。
[日野浩一郎『刑事公判法演習 理論と実務の架橋のための15講』169頁(最判平7・6・20刑集49-6-741)参照。退去強制された者の検察官面前調書の証拠能力が認められない場合]

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☆証明力を争う証拠ーー弾劾証拠
刑訴法問題15/ 刑訴法R29②Q2-1参照:甲らは,取調べで被疑事実を認めたが,Tの覚せい剤密売関与否定。甲はその後,T関与を認め,乙は一貫し否定。丁は覚せい剤取締法違反(営利目的共同所持)で逮捕され,検察官送致,勾留後,H裁判所に公判請求された。第2回公判期日の甲証言の証明力を争うため取調べ請求された各証拠の適否?
[平成29年度司法試験 刑訴法論文問題設問2小問1参照。参考:最判平18・11・7刑集60-9-561(『刑事訴訟法判例百選』10版〔87〕)]

〇証明力を争う証拠――①自己矛盾供述に限られるか,②供述者の署名押印を欠くものも含まれるか
刑訴法判例17/ 最判平18・11・7参照:刑訴法328条は,公判期日等の被告人,証人などの供述が,別機会のその者の供述と矛盾する場合,矛盾供述したこと自体の立証を許すことで,公判期日等のその者の供述の信用性減殺を図ることを許容する趣旨。⇒同人の供述書,供述録取書等,厳格な要件をみたす証拠に表れている部分に限る。
[司法協会『刑事訴訟法講義案』4訂版335頁[206](刑集60-9-561)参照]

☆証明力を争う証拠――回復証拠
刑訴法問題16/ 刑訴法R29②Q2-2参照:甲らは,被疑事実を認め,Tの覚せい剤密売関与につき,甲は一時否定,その後認め,乙は一貫否定。丁は覚せい剤取締法違反(営利目的共同所持)でH裁判所に公判請求され,第2回公判期日の甲証言の証明力を争うため別機会の甲供述が取り調べられた場合,甲証言の証明力の回復証拠取調べ,許容?
[平成29年度司法試験 刑訴法問題設問2小問2参照。回復証拠]

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