2019年3月(1日~10日)分ツイート:28,その他(民訴法10;刑法18)


2019年3月10日(その他16)
刑法158,159/ 946,947/ 事実の摘示は「#公然と」なされなくてはならないが,公然とは,#適示された事実を不特定または多数の人が認識しうる状態をいうと解する。不特定とは,#摘示の相手方が特殊な関係によって限定された者ではないことをいい,多数というためには,単に複数であればよいのではなく,#相当の多数たることを要する。
[山口『刑法各論』2版136頁(大判昭6・6・19刑集10-287,最判昭36・10・13刑集15-9-1586)参照]

/ 事実摘示の直接の相手方が特定少数人でも,その者らを通じ不特定多数人へ伝搬する場合もなお「公然」といいうるとする伝播性の理論(判例)は疑問。公然性は摘示行為態様としての要件といえるし,名誉棄損罪の成立要件として社会的評価下落危険発生(名誉棄損)に加え,#公然性で限定する意味が失われるから。
[山口『刑法各論』2版136頁-137頁(大判大8・4・18新聞1556-25,大判昭3・12・13刑集7-766,最判昭34・5・7刑集13-5-641)参照]

刑法157/ 945/ 胎児は,堕胎罪で独立の行為客体とされる場合を除き,#母体の一部を構成するので_胎児に病変を生じさせることは人に病変を発生させること,胎児が出生後病変に起因し死亡の場合,人に病変を生じさせ人の死の結果をもたらしたもの,病変発生時客体が人たることを要するかにかかわらず,業務上過失致死罪成立。
[山口『刑法各論』2版24頁(最決昭63・2・29刑集42-2-314)参照]

刑法156/ 944/ 「一個の行為」(刑法54条1項前段,観念的競合)とは,#法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで_行為者の動態が社会的見解上1個のものとの評価を受ける場合。1個の行為(#1個の意思決定)による複数法益侵害惹起で,複数行為(複数意思決定)による複数法益侵害惹起より相対的に責任減少。
[山口『刑法総論』3版407頁(最大判昭49・5・29刑集28-4-114)参照]

刑法154,155/ 942,943/ 正犯が実現した構成要件該当事実が共犯の認識・予見したものより重い場合,たとえば,窃盗教唆したところ,正犯は強盗を行った場合,#正犯が実現した構成要件該当事実には共犯が認識した構成要件該当事実が含まれており_共犯の認識に対応した軽い罪の共犯が成立。したがって,上記の例では,窃盗の共犯成立。
[山口『刑法総論』3版363頁(最判昭25・7・11刑集4-7-1261)参照]

/ 正犯が基本犯を遂行するという意思で加功したところ,正犯により結果的加重犯が実現された場合,たとえば,#傷害を教唆したところ_正犯により傷害致死が実現された場合,共犯に過失結果が生じる点につき過失が認められれば,結果的加重犯である傷害致死罪の共犯成立と解する(判例は,過失を要求していない)。
[山口『刑法総論』3版363頁(大判大13・4・29刑集3-387)参照]

刑法150-153/ 938-941/ 共謀罪(conspiracy)とは,日本法にはなかった概念で,複数の者で犯罪を共謀(#犯罪の計画について合意)すること自体が独立の罪とされるもの。英米法の伝統をもつ国々で用いられてきた。アメリカでは,共謀罪は,#殺人罪とは独立の犯罪類型。日本刑法は,英米法ではなく,ヨーロッパ大陸法の伝統に属している。

/ 大陸法:再審のような特別の場合でない限り,最高裁で決着と考え,司法の権威と責任を信頼。⇔英米法:検察官と弁護側が裁判ゲームのプレーヤー,裁判所は審判員。いかなる範囲で決着するか,裁判所に決める権限,責任ない。∴#プレーヤー達が扱っていなかった争点は後でいくらでも新しい裁判の対象にできる。

/ 英米法における共謀罪では,顕示行為(overt act)と呼ばれる行為が処罰要件とされる場合あり。#共謀が単なる空想でなく現実の計画であることを示すような_いわば氷山の一角と見られる行為。それ自体,人身や財産に対する危険を含む必要ない。英米法の伝統をもつ国の多くで陪審制,一般的な司法取引も採用。

/ 陪審制では,12人の市民だけで事実認定せねばならないため,#客観的な証拠が相当程度集められてないと_共謀罪認定できない。⇒共謀罪訴追が行われるのは,ロス疑惑事件など,実際に被害ある事件であること,多。一方,共謀事実を明らかにするには参加者による報告が有効なため,司法取引制度とセットの国,多。
[高山『共謀罪の何が問題か』岩波ブックレット(2017年)2頁参照]

刑法149/ 937/ 2017年「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」は,共謀罪法案と実質的に同じ。テロに照準を合わせた条文は入ってない。∵共謀罪法案は,オリンピック招致でなく,国連国際組織犯罪防止条約(越境犯罪防止条約,パレルモ条約)への参加目的,#マフィア対策目的の条約。
[高山『共謀罪の何が問題か』岩波ブックレット(2017年)4頁-6頁参照]

刑法146-148/ 934-936/ #甲が暴行を用い乙女を強姦しつつある際に,共に犯罪を犯す意思で,甲不知の間に,乙女の足を押さえていた丙につき片面的共同正犯を否定し,①強姦罪(刑法177条)の片面的幇助犯or②暴行罪(208条)の正犯とする解釈は妥当か。①確かに,自ら姦淫行為を行っていない丙を強姦罪の直接正犯とすることはできない。

/ 自ら姦淫行為を行っていない丙を強姦罪の直接正犯とはできないが,#共同正犯たりうることまで排除しない。#強姦罪は自手犯ではないので,自分自身で姦淫せずとも,共同正犯or間接正犯形態で関与可能だから。むしろ,#正犯とは実行行為を行う者と解する立場からは,丙を強姦罪の片面的幇助とすることは危険。

/ #暴行は強姦罪の実行行為の一部なので,丙を幇助犯とする結論を得るために,実行行為を行う幇助犯の肯定かor実行行為か否かを意思疎通の有無に依存させ主観的に捉えるか,しかないから。but,いずれも,実行行為の有無に正犯と共犯の区別基準をみる意義,半減。②の同時犯構成も,結合犯事例のみ有効で,問題。
[大越『刑法総論』4版(2007年)195頁-197頁参照]

民訴法153/ 933/ 同時審判申出共同訴訟で,#控訴するか否か各人の自由。∴代理権なしとしてXがY1に敗訴,Y2に勝訴の場合,Y2だけ控訴したなら,控訴審でY2が勝訴し,Xが両負けになる可能性あり。控訴期間徒過直前の控訴に備え,Xは念のため第一審の1.5倍の印紙代を払い控訴要。Y2控訴なき場合,取り下げ,控訴手数料半額還付。
[高橋『重点講義 民事訴訟法 下』補訂版(2006年)286頁,R24③Q3,参照]

民訴法152/ 932/ 民訴法46条の効力は判決確定後補助参加人が被参加人に判決の不当を主張することを禁ずる効力。判決主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についてだけでなく,判決理由中での事実認定や先決的権利関係についての判断(#判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定や法律判断など)にも及ぶ。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版315頁(最判昭45・10・22民集24-11-1583,最判平14・1・22金法1645-49),R24③Q2,参照]


2019年3月9日(その他4)
刑法144,145/ 930,931/ 片面的共犯:#意思の疎通なく_共同加功の意思ある者が_他者の犯罪行為に_一方的に関与する場合。意思疎通ある通常の共犯と,単に正犯の競合にすぎない同時犯と中間概念。判例は,片面的従犯は肯定するが,片面的共同正犯否定。#意思疎通こそが_共同正犯の一部実行全部責任を基礎づけると考えるからだろう。
[大越『刑法総論』4版(2007年)194頁参照]

/ #共同正犯の全部責任は_因果関係に基づく。相手の心理を通じ行う方法,相手の行為・結果に直接働きかける物理的方法でも,可能。#犯罪結果惹起に共同者間の意思疎通は必然でない。∴甲が乙女に強姦しつつあるとき,共に犯罪を犯す意思で,甲不知の間に乙女の足を押さえた丙に,強姦罪の片面的共同正犯成立。
[大越『刑法総論』4版(2007年)194頁-197頁参照]

刑法143/ 929/ Xは被害者が騙されたふりをしているとの事情を認識しておらず,一般通常人にも,認識し得なかったといえるから,#被害者が騙されたふりをしているという事情は_行為の危険性判断の際_基礎事情から排除・捨象して考えるべき。⇒被害者が騙されて発送した荷物受領に実行行為性あり,未遂犯として可罰性あり。
[平成29年度『重要判例解説』147頁(福岡高判平28・12・20判時2338-112)参照]

刑法142/ 928/ #法益の欠如_法益衡量が,違法性阻却の実質的基準・原理。被害者が法益侵害惹起に対し瑕疵なき意思で同意している場合(#被害者の同意)。法益の要保護性あるが,その侵害惹起が,別法益保護のため必要で,侵害法益(惹起される法益侵害)と保護法益(回避される法益侵害)を衡量し,#同等か_後者が優越する場合。
[山口『刑法総論』3版110頁参照]


3:56 - 2019年3月6日/ @right_droit2/ 気になる判例,論点,論文問題などございましたら,お知らせください。できる限りそれについてツイート致します。お互いに情報交換などして,法律の理解が深まればいいなと思っています。よろしくお願い致します。


2019年3月5日(その他2)
民訴法151/ 927/ 債権者代位は法定訴訟担当にあたり,被担当者に判決効拡張(民訴法115条1項2号),勝訴・敗訴区別なし,という従来の考え方に対する問題提起:法定訴訟担当にあたる場合でも対抗型と吸収型があり,#債権者代位の場合担当者と被担当者とに利害関係の対立あり(対抗型)。∴被担当者への判決効の当然拡張は不相当?
[伊藤ほか『民事訴訟法の論争』有斐閣(2007年)79頁(三ケ月教授の有名で,重要な問題提起)参照。参考:平成29年民法423条の6で,債務者への訴訟告知が定められているので,三ケ月先生の提起された問題は立法的に解決されているようである。参考:R25予備Q(2)]

民訴法150/ 926/ 債権者代位訴訟の訴訟物は,債務者の第三債務者に対する権利。その管理権に基づき債権者代位訴訟が行われ(法定訴訟担当),判決効は債務者に有利にも不利にも及ぶ(民訴法115条1項2号)。もっとも,債務者は,#代位債権者が実は債権者でなかったことを証明し,その当事者適格を否定し,判決効の拘束を免れうる。
[高橋『重点講義 民事訴訟法』新版(2000年)218頁(大判昭15・3・15)参照。参考:R25予備Q1(1)イ(2)]


2019年3月3日(その他6)
民訴法149/ 925/ #推定とは_ある事実から他の事実を推認すること,経験則がこれを可能にする。事実認定の際,裁判官の自由心証主義の一作用として経験則を適用し行う場合を事実上の推定という。#経験則が法規化され_法規の適用としての場合が法律上の推定。後者には,事実推定と権利推定とがあり,挙証者の立証負担を軽減。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版240頁参照]

民訴法148/ 924/ 裁判官は証拠調べの結果と弁論の全趣旨に基づく心証により要証事実存否,判断。いかなる証拠にどの程度,証拠力(証拠価値)を認めるかも判断(#証拠力の自由評価)。当該証拠を提出者に有利,不利にも評価可。一方当事者提出の証拠は,相手方援用せずとも,相手方に有利な事実認定に供しうる(証拠共通の原則)。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版229頁,230頁参照]

/ @Renpy0101 いいね有難うございます。内容がよく伝わらないものばかりかと思います。私自身も後で読んで意味が掴めないものが結構あるからです。すみません。今週,民訴法勉強します。意味の通らないものや,他,疑問に思ってる論点等ありましたらお知らせ下さい。できる限りそれについてもツイートします

民訴法144-147/ 920-923/ 口頭弁論は,裁判長の定める口頭弁論期日に(民訴法87条,93条),裁判長指揮で行われる(148条)。まず,原告が訴状の「請求の趣旨」記載事項陳述,被告が反対の申立て(訴え却下or請求棄却の申立て)を行う(必要的でなく,請求認諾がされることもある)。#この当事者の終局判決を求める陳述を本案の申立てという。
[森圭司『ベーシック・ノート民事訴訟法』新訂版(2006年)180頁参照]

/ 次に,原告,被告は,根拠たる法律上・事実上の主張をし,相手方主張に認否する。法律上の主張:具体的権利関係の存否に関する自己の認識,判断の報告たる陳述(被告:権利抗弁)。#相手方認めれば権利自白_争えば_基礎づける事実主張要。事実上の主張:具体的事実の存否に関する自己の認識,判断の報告たる陳述。
[同上]

/ 原告が,訴訟上の請求を基礎づけるため主張立証責任を負う請求原因事実(#権利根拠規定の要件事実)が,まず主張される。被告の認否は,認める(自白),争う,不知,沈黙。被告は,原告請求を理由なからしめるため,自ら主張立証責任を負う抗弁事実主張可。以下,原告の認否,再抗弁(その認否),再々抗弁(その認否)。
[同上]

/ 相手方に争われた事実(不知は争ったものと推定,159条2項)は証拠で証明要(#179条)。当事者は証拠の申出をする(180条)。裁判所が,その採否を判断し(181条),証拠調べ。#当事者の主張立証が十分尽くされ,「事件が判決に熟」せば(243条)。裁判所は,口頭弁論を終結し,判決言渡期日を定め(251条),判決言渡し。
[同書180頁-181頁参照]

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2019年2月ツイート:40,判例(刑訴法1);その他(憲法10,行政法10;民法9;刑訴法10)

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