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原稿 · @right_droit4

17th Mar 2019 from TwitLonger

会社法ノート①/ 設立,株式 (18ヶ)


略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。orまたは,∴なので,⇒ならば,∵なぜならば。
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◇設立費用
[・定款には設立費用の額として70万円と記載されているのに、発起人が会社のためにAとの間で40万円を支出する契約とBとの間で60万円を支出する契約とを締結しているときの法律関係はどうなるか。
 この場合の法律関係は、行為の時系列によって効果が帰属するか否かが区別される。すなわち、Aとの取引が先に締結されたとすれば、成立後の会社はAには40万円を、Bには30万円を負担する。Bは残額の30万円を発起人等に対して請求するしかない。A、Bのいずれの取引が先になされたかが不明な場合には、A、Bは、債務の額に応じて按分した範囲で会社に請求できる。]

会社法75/ 設立2/ 427/ 定款の設立費用額が70万円なのに,発起人が会社のためAへの40万円支出契約,Bへの60万円支出契約を締結しているとき,法律関係如何。#行為の時系列により効果帰属が決まる。A取引が先なら,会社はAに40万円,Bに30万円負担。Bの残額は発起人等の責任。いずれが先か不明なら債務額に応じ按分し会社に請求可。
[『LEGAL QUEST会社法』3版51頁,R29②Q1(1)参照]

◇財産引受けについて
[・株式会社において、発起人が会社の設立を条件として、成立後の会社のために営業用の財産を譲り受ける行為を、財産引受けという(会社法28条2号)。開業準備行為ともいう。財産の過大評価により資本の充実・維持を害する危険があるので、厳格に規制されている(28条、33条参照)。
 まず、定款に記載されていなければ効力を生じない(28条柱書)。また、原則、検査役の調査(33条1項~6項)、または、価額の相当性につき弁護士等の証明(33条10項3号)を受ける必要がある。]

会社法76/ 設立3/ 428/ 発起人が会社設立を条件に,成立後の会社のため営業用財産を譲り受ける行為を,#財産引受け(開業準備行為)という(会社法28条2号)。財産の過大評価で資本充実・維持を害する危険があるので,#定款に記載なければ無効(28条柱書)。また,原則,検査役の調査(33条1項~6項),または弁護士等の証明(33条10項),要。
[有斐閣『法律学小事典』4版430頁,304頁,『LEGAL QUEST会社法』3版51頁,R29②Q1(2)参照]

◇設立中の会社の発起人の権限
[・設立中の会社の発起人の権限は何か。発起人の権限内の行為は、設立後の会社に責任が及ぶので、問題となる。
 設立中の会社は、会社の設立を目的とするので、設立に直接必要な行為のみならず、設立のために事実上必要な行為もなしうる。したがって、その発起人の権限も設立に直接および事実上必要な行為に及ぶ。言い換えれば、#発起人の権限は会社設立のために法律上・経済上必要な行為にまで及ぶといえる。
 もっとも、会社設立のために事実上・経済上必要な行為すべてについて発起人の権限を認めてしまうと、設立後の会社の資本の充実・維持を害されるおそれがある。そこで、事実上・経済上必要な行為については、定款に記載がある範囲内でのみ、発起人の権限を認めるべきである(会社法28条参照)。]

会社法77/ 設立4/ 429/ 発起人の権限内の行為は,設立後の会社に及ぶ。設立中の会社は,設立を目的とするので,設立に直接必要な行為および事実上必要な行為もなしうる。したがって,発起人の権限も設立に直接・事実(#経済)上必要な行為に及ぶ。しかし,資本充実維持のため,#法律・定款の範囲で権限が認められる(会社法28条参照)。
[『工藤北斗の合格論証集』民法,商法・民事訴訟法21頁以下,会社法『判例百選』2版15頁タテ2,参照]

◇発起人の行為の効果が会社に及ばない場合の発起人の責任
[・発起人の行為の効果が成立後の会社に及ばない場合、発起人が責任を負う。民法117条1項が類推適用される(改正民法の文言は少し変更されている)。同条項は本来、追認があれば遡って有効となる場合の規定である。本人たる会社がまだ成立していない場合は、同条項の類推適用である。
 また、発起人が明示的に会社成立を条件として開業準備行為をしたにもかかわらず、定款に記載しなかった場合、同117条2項に該当しない。なぜなら、発起人が、当該取引の後に、定款に記載することを怠ったのであり、取引時において相手方が「過失によって知らなかった」(同条項)ときとはいえないからである。したがって、同117条1項の類推適用により、相手方は発起人に、履行または損害賠償請求できる。]

会社法78/ 設立5/ 430/ 発起人の行為の効果が成立後の会社に及ばない場合,発起人は,#民法117条1項の類推適用により,責任を負う。発起人が明示的に会社成立を条件として開業準備行為をしたにかかわらず,取引後に,#定款記載を怠った場合,取引時に相手方が「過失によって知らなかった」とはいえないので,同条2項にはあたらない。
[会社法『判例百選』2版15頁タテ2,R29②Q1(2),参照。後半は,29年度民事系第2問設問1(2)では問われてはいないが,その事案について自分で考えてみたものです。]

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◇見せ金
[・見せ金とは、発起人が払込取扱機以外の者から借り入れた金を払込みに充てて会社を設立した上、会社の成立後それを引き出して借入金の返還に充てる行為をいう。
 このような見せ金を全体としてみると、個々行為は仮装払込みのためのカラクリの一環をなしているに過ぎないので、無効と解すべきである。
 ただし、見せ金による払込みと適法な払込みとの区別は慎重に判断されるべきであり、具体的には、①借入金を返済するまでの期間の長短、②会社資金としての運用の事実、③借入金の返済と会社の資金関係との関係などの事情をもって総合判断すべきである。]

会社法95/ 設立6 / 556/ 見せ金は,#発起人が払込取扱機以外から借入し払い込み_会社を設立_会社成立後引き出し借入金返還に充てる行為。個々の行為も,全体としては,仮装払込みのカラクリの一環なので,無効。適法行為との区別は,①借入金返済までの期間長短,②会社資金としての運用事実,③返済と会社資金との関係など総合判断。
[工藤『合格論証集 商法 民事訴訟法』19頁-20頁参照]

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◇株式の譲渡
[・平成16年の商法改正で、会社は定款で定めれば株券を発行しなくてよいものとされたが、会社法(平成17年)はさらに進んで、会社は定款で定めた場合のみ、株券を発行するものとした(214条)。また、上場社については、平成21年1月の「社債、株式等の振替に関する法律」(振替法)の施行に伴って株券が廃止され、上場株式の譲渡は、すべて同法の下での振替制度によって行われることとなった。]

会社法105/ 662/ 平成16年商法改正で,会社は定款で定めれば株券を発行しなくてよいとされたが,会社法(17年)はさらに,#会社は定款で定めた場合のみ_株券を発行するものとした(214条)。また,上場会社では,「社債,株式等の振替に関する法律」(振替法,21年)により株券を廃止し,#振替制度で上場株式譲渡を行うことになった。
[『LEGAL QUEST会社法』3版103頁,115頁参照]

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◇基準日制度
[・株式が広く流通し,頻繁に譲渡が行われる会社では,だれが株主名簿上の株主か会社が確定するのに相当時間を要する場合がある。そこで,会社は一定の日を基準日として,その日時点の株主名簿上の株主を,後日における権利行使者と定めうる(会社法124条1項)。
 基準日以降も株式譲渡は可能だし,株主名簿の書換えもできるが,基準日株主が,権利行使時の株主名簿上の株主となる。権利行使時の真の株主とあまり乖離するのは好ましくないので,基準日は権利行使日の3か月以内の日でなくてはならない(124条2項)。基準日を定款で定めた場合を除き,当該基準日の2週間前までに公告を要する(同条3項)。
 基準日後に募集株式の発行(199条)等によって新たに株主になった者は,会社が認めれば,株主総会における議決権を行使できる(124条4項)。しかし,基準日後に他の株主から株式を譲り受けた者の議決権行使を会社が認めることは、基準日時点の株主の権利を害するため、許されない(同条ただし書参照)。]

会社法91/ 株式14/ 465/ 株式が広く流通,譲渡される会社は,株主名簿上の株主確定に相当時間を要する場合がある。そこで,#会社は一定の日を基準日とし(権利行使日の3か月以内,会社法124条2項),その日の株主名簿上の株主を後日の権利行使者と定めうる(同条1項)。#定款で定めた場合を除き,基準日の2週間前までに公告要(同条3項)。
[『LEGAL QUEST会社法』3版113頁参照]

会社法92/ 株式15/ 465/ #基準日後に募集株式の発行(会社法199条)等によって,新たに株主になった者は,会社が認めれば,株主総会における議決権を行使できる(124条4項)。しかし,#基準日後に他の株主から株式を譲り受けた者の議決権行使を会社が認めることは_基準日時点の株主の権利を害するため許されない(同条項ただし書参照)。
[『LEGAL QUEST会社法』3版113頁参照。募集株式の発行等の株主総会決議を経て新たに株主になった者と異なり,株主総会決議を経ずに他の株主から譲り受けた者の場合]

◇株主名簿の備置きと閲覧等請求
[・会社は、株主名簿を本店(株主名簿管理人がある場合はその営業所)に備え置き(会社法125条1項)、株主・債権者・親会社社員の閲覧等請求に供さなくてはならない(同条2項~5項)。会社は一定の拒絶事由に該当する場合を除き、株主・債権者からの閲覧等請求を拒絶できない(同条3項)。たとえば、いわゆる総会屋である株主が、会社に対する利益供与の要求を拒絶されたことへの報復として閲覧等請求をする場合は、株主が「その権利の確保又は行使に関する調査以外の目的」(同項1号)あるいは株主の共同の利益を害する目的(同項2号)で閲覧等請求を行ったものとして、会社は当該請求を拒絶できる。
 他方、会社を敵対的に買収しようとする株主が、他の株主に公開買付けに応じるよう勧誘する目的および委任状勧誘をする目的で閲覧等請求をすることは、株主の権利の確保または行使に関する調査の目的があるといえ、会社は当該目的を理由にして閲覧等請求を拒絶できない。]

会社法106,107/ 663,664/ 会社は,#株主名簿を本店(株主名簿管理人ある場合,その営業所)に備え置き(会社法125条1項),株主・債権者・親会社社員の閲覧等請求に供する(同条2項~5項)。一定の拒絶事由に該当する場合(総会屋による利益供与要求を拒絶されたことへの報復としての閲覧等請求など)を除き,請求を拒絶できない(同条3項)。

/ 総会屋株主が,利益供与要求拒絶の報復として閲覧等請求する場合,権利確保・行使に関する調査以外の目的(会社法125条3項1号)または株主の共同利益を害する目的(2号)として,#会社は拒絶可。
敵対的買収株主が,#公開買付け・委任状勧誘目的で請求する場合,権利確保・行使に関する調査目的あり,#拒絶不可。
[『LEGAL QUEST会社法』3版114頁参照]

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◇振替株式の権利行使の方法
[・振替株式については、株式の譲渡のたびに株主名簿の名義書換えが行われるわけではない。
 まず、会社が株主総会の開催や剰余金の配当等を行うため、権利行使者を決めるための一定の日(基準日(会社法124条)や効力発生日(180条2項2号)等)を定めたときは、振替機関(㈱ほふり)は会社に対し、当該一定の日に振替口座簿に記載された株主の氏名(名称)・住所や保有株式の種類・数等を速やかに通知しなければならない(振替法151条1項。総株主通知)。総株主通知を受けた会社は、通知事項を株主名簿に記載・記録する。これにより、当該一定の日に株主名簿の名義書換えがされたとみなして(振替法152条1項)、株主の権利行使が行われる。
 また、株主が会社に対して少数株主権等(振替法147条4項参照)を行使しようとするときは、自己が口座を有する口座管理機関(証券会社等)を通じて振替機関に申出をすることにより、保有振替株式の種類・数等の事項を会社に通知してもらうことができる(振替法154条3項~5項。個別株主通知)。この場合、当該株主は株主名簿の記載・記録に関わりなく(同条1項)、当該通知の後4週間以内に少数株主権等を行使できる(同条2項、同法施行令40条)。個別株主通知は、株主たることを会社に対抗する手段として株主名簿の名簿書換え(130条1項)に代わるものであるから、会社が少数株主権等を行使した株主の株主資格を争った場合には、当該株主は、当該通知を経なければ、会社に対し少数株主権等を行使できない。]

会社法108,109/ 665,666/ #権利行使者につき一定の日(基準日(会社法124条),効力発生日(180条2項2号)等)を定めたときは,振替機関(㈱ほふり)は会社に,当該の日の振替口座簿記載株主の氏名(名称)・住所,保有株式の種類・数等を通知要(振替法151条1項,#総株主通知)。株主名簿に記載・記録され(152条1項),株主の権利行使可能となる。

/ 少数株主権等を行使しようとするときは,自己が口座を有する口座管理機関(証券会社等)を通じ振替機関に申し出,保有振替株式の種類・数等を会社に通知してもらう(振替法154条3項-5項,#個別株主通知)。当該株主は株主名簿の記載・記録に関わらず(1項,#対抗要件),通知後4週間内に少数株主権等行使可(2項)。
[『LEGAL QUEST会社法』3版117頁,118頁(最判平22・12・7民集64-8-2003。なお,最決平24・3・28民集66-5-2344)参照]

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◇株式の併合,分割
[・株式の併合(会社法180条1項)とは、数個の株式をあわせて、より少ない数の株式にすることである。
株式の分割(183条1項)とは、逆に、株式を分割して、より多い数の株式にすることである。
どちらも、各株主の保有株式数を一律・按分比例的に減少または増加させるものである。]
 
商法31/ 会社法31/ 186/  株式の併合(#会社法180条1項)は、数個の株式を合わせ、より少ない数の株式にすること、株式の分割(183条1項)は、逆に、既発行株式を、それより多い数の株式にすることである。前者には株主総会特別決議を要する。株主の地位を失い、端数の金銭処理に甘んじるべき株主が生ずるからである。
[『LEGAL QUEST会社法』3版125頁参照]

◇株式の併合の手続
[・株式の併合をするには、株主総会の特別決議により、併合の割合や効力発生日等を定める必要がある(会社法180条2項・309条2項4号)。株主の利害に重大な影響を与えるものだからである。取締役は、当該株主総会で、株式併合を必要とする理由を説明しなければならない(180条4項)。
また、当該株主総会で、効力発生日における発行可能株式総数(113条参照)を定める必要がある(180条2項4号)。公開会社では、効力発生日における発行済株式総数の4倍を超えることができない(同条3項)。たとえば、従前の発行可能株式総数1万株、発行済株式総数3000株の公開会社が、2株を1株に併合する場合、効力発生日の発行済株式総数は1500株となる。そのため、発行可能株式総数を、1500株の4倍以下、すなわち、6000株以下に変更する(減少させる)必要がある。既存株主の持株比率の低下の限界を定めるため(既存株主の持株比率維持のため)である。]
 
会社法85/ 株式12/ 440/ 株式併合は株主総会特別決議で,#併合割合,効力発生日,発行可能株式総数等の定め要(会社法180条2項・309条2項4号)。株主の利害に重大な影響があるから。取締役は株主総会で,#株式併合を要する理由説明要(180条4項)。公開会社の発行可能株式総数は,効力発生日における発行済株式総数の4倍以下(同条3項)。
[『LEGAL QUEST会社法』3版125頁,126頁,R29②Q2,参照]

◇株主の保護
[・株式の併合は株主の利害に重大な影響を与えるため、併合により端数となる株式が単元未満株式に限られるような場合を除き(会社法182条の2第1項)、以下の株主保護手続がとられる。
①端数株式の買取請求権(182条の4)。②差止請求権(182条の3)。③事前の情報開示(181条。182条の2、施行規則33条の9)。④事後の情報開示(182条の6、施行規則33条の10)。]
 
会社法86/ 株式13/ 441/ 株式併合は株主の利害に重大な影響を与えるため,①#端数株式買取請求権(会社法182条の4),②#差止請求権(同条の3),③#事前情報開示(181条,182条の2.施行規則33条の9),④#事後情報開示(182条の6,施行規則33条の10)で保護される。併合により端数となる株式が単元未満株式だけの場合を除く(同条の2第1項)。
[『LEGAL QUEST会社法』3版126頁参照]

◇株式無償割当て
商法32/ 会社法32/ 187/ 株式無償割当て(#会社法185条)は、会社が株主の保有株式数に応じて、当該会社の株式を無償で交付するすることである。株式の分割と経済実質を同じくする。ただし、無償割当てでは、発行済株式と異なる種類の株式の割当ても可能である。分割は自己株式にも効力が及ぶが、無償割当てでは及ばない。
[『LEGAL QUEST会社法』3版128頁、129頁参照]
 
◇単元株制度
商法33/ 会社法33/ 188/ 単元未満株主には議決権がない(#会社法189条1項。188条1項・308条1項ただし書)。株主提案権等、議決権前提の権利もない(303条等)。その他の権利は、残余財産請求権(189条2項5号)や配当請求権(同条項6号、施行規則35条1項7号ニ)等の自益権を除き、定款で排除できる。
[『LEGAL QUEST会社法』3版130頁参照。株主提案権につき,T19(40イ)参照。]
 
商法34/ 会社法34/ 189/ 単元未満株式を譲渡により取得した場合の株主名簿の名義書換請求権(#会社法133条)は、定款で排除可能であり(施行規則35条1項4号参照)、株券発行会社は単元未満株主に株券を発行しない旨を定款で定めうる(会社法189条3項)。このような定款の定めで、単元未満株式の流通阻止を図れる。
[『LEGAL QUEST会社法』3版130頁参照]

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