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18th Mar 2019 from TwitLonger

会社法ノート⑥/ 企業の買収,・結合・再編 (35ヶ)


略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。orまたは,∴なので,⇒ならば,∵なぜならば。
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◇キャッシュ・アウトの意義
商法14/ 会社法14/ 37/ キャッシュアウトとは、ある者(買収者)が、株式会社(対象会社)の発行する株式の全部を、株主の個別の同意を得ることなく、金銭を対価として取得することをいう。経営政策上の合理性が認められる場合、差止請求権、株式買取価格の決定制度、情報開示など株主保護の仕組みの下で許容される。#会社法
[『LEGAL QUEST会社法』3版377,378頁参照。]

◇キャッシュ・アウトの効力を争う方法
[・#株式の併合や、#全部取得条項付種類株式の全部取得には、効力を争う特別の訴えの制度はない。
 しかし、これらの行為に重大な法令違反がある場合(たとえば、株主総会決議を欠く場合)、当然に無効となる。
 また、これらに必要な株主総会決議または種類株主総会決議に取消事由(会社法831条1項)がある場合、訴えにより決議が取り消されれば、これらの行為も無効である。キャッシュ・アウト対価の不当性は、原則として価格決定手続(182条の5、172条)で、争われるべきである。もっとも、買収者の議決権行使により著しく不当な対価となった場合は、831条1項3号により決議は取り消しうべきものとなる。]

会社法79/ 企業再編19/ 431/ 株式併合,全部取得条項付種類株式の全部取得の効力を争う特別の訴えはない。しかし,#重大な法令違反の場合,当然無効。必要な株主総会決議,種類株主総会決議に #取消事由(会社法831条1項)ある場合,訴えで決議が取り消せば,これらの行為も無効。対価不当性は,原則,#価格決定手続(182条の5,172条)による。
[『LEGAL QUEST会社法』3版380頁参照]

◇買収者の議決権行使により著しく不当な対価によるキャッシュ・アウトが可決された場合
[・株式併合または全部取得条項付種類株式の全部取得によるキャッシュ・アウトの対価の不当性は、原則として価格決定手続(会社法172条・182条の5)の中で争えば足り、それら併合または取得行為の効力に影響しないと解される。
 しかし、買収者の議決権行使により著しく不当な対価によるキャッシュ・アウトが可決された場合、831条1項3号により決議は取り消しうるし、それらの行為の効力も否定できると解する。
 同条項3号の、株主総会決議における特別利害関係人とは、問題となる議案の成立により他の株主と共通しない特殊な利益を獲得し、もしくは不利益を免れる株主をいう。このような株主も、議決権を行使することは妨げられないが、議決の成立によって他の株主に著しい不利益が及ぶのであれば、取消事由となる。
 決議が取り消されれば、株式併合または株式全部取得行為も無効になる。
 なお、平成26年改正により、決議取消しの訴えは、決議が取り消されることにより株主の地位を回復する者(典型はキャッシュ・アウトされた株主)も提起できることが明文で規定された。]

会社法88/ 企業の買収・合併・再編20(株式併合,キャッシュ・アウト,株主総会決議取消訴訟)/ 461/ 株式併合・全部取得条項付種類株式取得によるキャッシュ・アウト対価不当性は,原則,#価格決定手続(会社法182条の5,172条)で争えば足り,併合・取得行為効力に影響なし。例外,#買収者の議決権行使により著しく不当な対価でキャッシュ・アウト可決の場合,決議取消し可(831条1項3号)。行為の効力も否定可。
[『LEGAL QUEST会社法』3版380頁,164頁(,429頁),R29②Q2,参照]

◇特殊支配株主の株式等売渡請求
[・株式会社の総株主の議決権の9割以上を有する者(特別支配株主)は、対象会社の他の株主(売渡株主)全員に対し、その保有株式全部(売渡株式)や、新株予約権等の売渡しを請求できる(会社法179条)。
 買収者が対象会社の議決権のほとんどを有する場合、その株主総会決議の帰趨は決まっているため、キャッシュ・アウトのために決議を要求する必要性は小さい。しかも、キャッシュ・アウトが二段階買収の二段階目の行為として行われる場合に、公開買付けからキャッシュアウト決議までに長期間を要し、他の株主を不安定な地位に立たせるという問題がある。
 こういった理由・問題の解決のために、平成26年度に創設された制度である。]

会社法11/ 企業の買収/ 463/ 株式会社の総株主の議決権の9割以上を有する者(#特別支配株主)は,他の株主全員に対し,保有株式等全部の売渡しを請求できる(会社法179条)。#買収者が議決権のほとんどを有する場合_帰趨は決まっている。公開買付けからキャッシュアウトまで,#長期間_他の株主を不安定な地位に立たせる問題もあったため。
[『LEGAL QUEST会社法』3版381頁]

◇特別支配株主の株式売渡請求公告後の株式譲受人の売買価格決定申立適格を否定した最決
会社法90/ 企業の買収/ 464/ 会社法179条の8第1項の売買価格決定申立て制度は,#同条の4第1項・振替法161条2項の通知・公告時点の対象会社株主が,定められた額で株式売渡しを強いられるので,不服ある当該株主に適正対価を得る機会を与える趣旨。#通知・公告で株式売渡し確定後の売渡株式の譲受人は保護対象として想定されていない。
[最決平29・8・30民集71-6-1000(TKC・新・判例解説 Watch ◆ 商法 No.106)参照]

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◇組織再編制度の比較
商法45/ 会社法45/ 202/ #組織再編 手段の多様化。合併は、当事会社が合一するので、賃金体系統一の煩、簿外債務承継のリスクがある。平成11年創設の株式交換・株式移転によれば、それを回避できる。平成12年創設の会社分割によれば、事業譲渡と異なり、債権者の承諾を要せず、債務を他の会社に承継させうる利点がある。
[『LEGAL QUEST会社法』3版387参照,383頁参照]

商法15/ 会社法15/ 38/ 承継型組織再編の対価は組織再編契約で自由に決められる(対価柔軟化)。代わりに、株式買取価格は「公正な価格」とされ、消滅会社等の株主が、組織再編による企業価値の増加分(シナジー等)の公平な分配を受けられる。新設型組織再編では、対価は、設立会社の株式の他は、社債等に限られる。#会社法
[『LEGAL QUEST会社法』3版391頁参照]

◇組織再編の差止め
商法35/ 会社法35/ 190/ 組織再編が法令・定款違反の場合に、株主が不利益をうけるおそれあるとき、株主は差止請求できる(#会社法784条の2第1号、796条の2第1号、805条の2。簡易組織再編は除外)。対価が著しく不当な場合も、特別利害関係人の議決権行使(831条1項3号参照)などを理由に差止請求できる。
[『LEGAL QUEST会社法』3版413頁~415頁参照。 R21②設問4(合併の差止請求),設問6(株主総会決議取消しの訴え,無効確認の訴え)関連。]

商法36/ 会社法36/ 181/ B社株主のA社がB社株主総会で議決権行使し、他の株主に著しく不当な対価で、組織再編が承認された場合、特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議として、決議取消訴訟提起が可能。その認容による法令違反として、#組織再編差止請求訴訟 提起も可能。その双方を本案に仮処分も求めうる。
[『LEGAL QUEST会社法』3版414頁(なお,249頁)参照。R21②設問4(合併の差止請求)関連。]

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☆合併比率の不公正
会社法問題1/ R14①:㈱Aは,㈱Bの総株主の議決権60%保有。A社存続会社,B社消滅会社として合併(会社法749条以下)予定。吸収分割消滅株式会社の株主総会決議(783条1項)前後で,#合併比率不当を訴える株主の手段? 差止め,株式買取請求権,事後開示(791条),組織再編無効の訴え,決議取消事由との関係,429条1項責任追及,等。
[平成14年度旧司法試験第二次試験論文式試験問題と出題趣旨,『LEGAL QUEST 会社法』3版414頁,404頁,427頁-30頁,等(辰巳『趣旨・規範ハンドブック 民事系』6版342頁(東京高判平2・1・31),『会社法判例百選』2版〔90〕)参照]

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☆会社分割と詐害行為取消権
会社法事案5/ 東京高判平22・10・27事案:Y1株式会社の飲食事業・広告宣伝事業のうち,後者が不振で債務超過だったため,飲食事業を新設分割設立会社Y2に承継させ事業再生を計画。Y1の無担保資産のほとんどをY2に承継させたが,リース会社Xへの債務は承継に含まれず,#Xは詐害行為取消権に基づき本件会社分割取消し請求。
[『会社法判例百選』2版〔92〕(会判1355-42)参照。参考:最判平22・10・12民集66-10-3311]

☆株式会社を設立する新設分割と詐害好悪取消権
会社法事案6/ 最判平24・10・12事案:A信金はB有限会社に貸金債権を有し,C株式会社が連帯保証。A→D株式会社→E有限会社と譲渡された本件貸金債権の管理回収を,EがXに委託。Cを吸収合併したF株式会社が新設分割設立会社Yに,債務の引き当てたる唯一の不動産を承継させ,本件債務は承継されず。#Xが詐害行為取消権行使。
[『平成24年度重要判例解説』〔商法7〕(民集66-10-3311)参照。参考:『LEGAL QUEST 会社法』3版421頁,会社分割の無効は会社法828条1項の訴えによってのみ主張できるものとされていること(同条項9号10号)と矛盾しないかの問題。]

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◇組織再編の無効の訴え
商法3/ 会社法3/ 11/ #会社法467条 1項違反の行為は、無効である。株主保護のためである。法的地位の早期安定の見地から、当事者双方から無効主張できるのが原則であるが、譲渡後長期間経過してから当事者の一方が無効を主張することは信義則に反し許されない。
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系336頁参照]

商法4/ 会社法4/ 12/ 親会社の株主総会特別決議を欠く、子会社株式等の譲渡の私法上の効力は無効である。#会社法467条 1項2号の2・309条2項11号が、特別決議を要求する趣旨は、子会社株式等の譲渡が親会社にとって事業譲渡と同様の影響を与えることに鑑み、親会社株主の利益を保護することにあるからである。
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系336頁参照]

商法5/ 会社法5/ 13/ 株式買取請求権における「公正な価格」(#会社法785条、797条、806条)は、シナジー(合併による相乗効果)が生じない場合には、原則として、吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がなかりせば、その株式が有したであろう価格をいうと解する。最決平23・4・19
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系339,340頁参照]

商法6/ 会社法6/ 14/ 株式買取請求権における「公正な価格」(#会社法785条 等)は、シナジーが生じる場合には、なかりせば価格に吸収合併等によるシナジーその他の企業価値の増加分を加えた価格とすべきである。株式買取請求権は、企業再編されなかった場合の経済状態の保障、シナジーの分配を保障するものだから。
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系339,340頁参照]

商法7/ 会社法7/ 15/ 「公正な価格」(#会社法785条、797条、806条)の算定基準日は、株式買取請求をした日である。なぜなら、売買契約と同様の法律効果が発生する時点を基準とすべきと考えるからである。最決平23・4・19
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系340頁参照]

商法8/ 会社法8/ 16/ 合併契約締結には「重要な財産の処分及び譲受け」(#会社法362条4項 1号)として、取締役会決議が必要だが、代表取締役が株式会社の業務に関し一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有することにかんがみ、取締役会決議なくとも、内部的意思決定を欠くにとどまるものとして、有効である。
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系341頁参照]

商法9/ 会社法9/ 17/ 合併比率の不公正も、無効原因とはならない。①合併契約は当事者が互いに有利な条件で締結しようとするものだから、当事者の交渉力等の違いから、若干不公正な合併比率となることはありうるし、②反対株主は株式買取請求権を行使することにより、自己の利益を確保できるからである。#会社法828条
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系341,342頁参照]

商法10/ 会社法10/ 18/ 合併承認の総会決議に瑕疵(取消事由)がある場合は、無効原因となる。なぜなら、総会決議が取り消され得る場合、合併が承認決議なしになされという瑕疵は重大であり、株主を保護する必要があるからである。#会社法783条1項、795条1項、804条1項、309条2項12号
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系342頁参照]

商法11/ 会社法11/ 34/ 総会決議取消しの訴えと合併無効の訴えとの関係は、合併効力発生前は前者のみ、効力発生後は後者のみ可能となる。合併無効の訴えを設けたのは、法律関係の画一的確定をはかるため、合併無効原因となる各種の瑕疵を独立の訴えとして提起することを排斥する趣旨と考えられるからである。#会社法828条
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系342頁参照]

商法12/ 会社法12/ 35/ 決議に取消事由があることを合併の無効原因とする場合の出訴期間は、取消訴訟の出訴期間(831条1項)、決議の日から3ヶ月以内とすべきとの見解もある。
しかし、#会社法828条 は無効原因を限定していないのであるから、合併無効原因の訴えの出訴期間通り、制限はないと解すべきである。
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系342頁参照]

商法13/ 会社法13/ 36/ #会社法782条1項、794条1項、803条1項、施行規則183条6号、192条7号、205条7号で、事前開示事項は「債務の履行に関する事項」と改められており、会社分割の法的安定を図るため、債務の履行の見込みがないことは、会社分割の無効原因とはしない旨改められたものと解する。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック2民事系』6版345頁,『LEGAL QUEST会社法』3版420頁,参照]

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◇事業譲渡
商法1/ 会社法1/ 9/ 事業譲渡(#会社法467条 1項)とは、①一定の事業目的のために組織化され、有機的に一体として機能する財産を譲渡し、これによって、②事業活動を譲受会社に受け継がせ、③譲渡会社が、法律上当然に21条の競業避止義務を負うものをいう。法の解釈の統一性を保つため、21条以下と同様に解する。
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系335頁参照]

商法2/ 会社法2 / 10/ 「事業の重要な一部の譲渡」(#会社法467条 1項2号)とは、株主の重大な利害に関わる事業再編か否か、量的・質的な側面から判断される。量的基準として、譲渡資産の帳簿価格のほか、売上高、利益、従業員数等を総合的にみて、事業全体の10%を超えていることが必要である。
[『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系336頁参照]

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〇ニッポン放送事件決定
会社法判例9/ 東京高決平17・3・23参照:#現に経営支配権争いが生じている場面での経営支配権の維持・確保目的の新株予約権発行は_原則_不公正な発行として差止請求を認めるべき(主要目的ルール)。誰を経営者としてどのような事業構成の方針で会社を経営させるかは,株主総会で取締役選任を通じ資本多数決で決すべき。
[『LEGAL QUEST会社法』3版441頁-442頁(判時1899-56,ニッポン放送事件)参照]

◇取締役会による防衛策
[・現に経営支配権争いが生じている場面において、経営支配権の維持・確保を目的(主要目的)とした新株予約券の発行がされた場合には、原則として、不公正な発行として差止請求が認められるべきである(主要目的ルール)。誰を経営者としてどのような事業構成の方針で会社を経営させるかは、株主総会における取締役選任を通じて株主が資本多数決によって決すべき問題というべきだからである。
 もっとも、株主全体の利益保護の観点から当該新株予約権発行を正当化する特段の事情があること、具体的には、敵対的買収者が真摯に合理的な経営を目指すものではなく、敵対的買収者による支配権取得が会社に回復し難い損害をもたらす事情があることを会社が疎明、立証した場合には(主要目的ルールの例外)、当該新株予約券発行を差止めることはできない。]

◇支配権維持・確保目的の新株等の発行が例外的に適法となる特段の事情の具体例(4類型)
[・支配権維持・確保目的の新株等の発行が例外的に適法となる特段の事情として、以下の4類型をあげることができる。
 買収者が、①ただ株価をつり上げて株式を高値で会社関係者に買い取らせる目的(グリーンメーラー)、②対象会社の知的財産権やノウハウ等を買収者に移譲する目的、③対象会社の資産を買収者の債務の担保や弁済原資として流用する目的、④会社経営を一時的に支配して事業に当面関係していない高額資産等を売却処分させ、売却資金により一時的高配当させる目的、で買収する場合である。
 しかしこれらのうち、③は、対象会社の資産を担保にして買収資金の融資を受ける方法(レバレッジド・バイアウト(LBO)、MBOなどに通常利用される方法)を、また、④は、遊休資産を処分し株主に分配するという経済合理性のある行為を含みうる点で、問題がある。効率的な買収を阻害する結果とならないよう、この4類型は合理的に解釈する必要がある。]

会社法96,97,98/ 企業の買収・結合・再編23,24,25/ 557,558,559/ 現に経営支配権争いが生じている場面で,#経営支配権の維持・確保を主要目的とする新株予約券発行は,原則,不公正な発行として差止請求が認められるべき。誰を経営者としてどのような事業構成の方針で会社を経営させるかは,#株主総会における取締役選任を通じ株主が資本多数決により決すべき問題だから。

/ もっとも,#株主全体の利益保護の観点から当該新株予約権発行を正当化する特段の事情,具体的には,敵対的買収者が真摯に合理的経営を目指すものでなく,#敵対的買収者による支配権取得が会社に回復し難い損害をもたらす事情あることを会社が疎明_立証した場合(例外),当該新株予約券発行を差止めできない。

/ 支配権維持・確保目的の新株等発行が適法となる特段の事情。買収者が,①株価をつり上げ株式を高値で会社関係者に買い取らせる目的(#グリーンメーラー),②#知的財産権やノウハウ等を横取る目的,③対象会社資産を買収者の債務の担保等に流用する目的,④高額資産等を売却処分させ一時的高配当させる目的。
[『LEGAL QUEST会社法』3版441頁-442頁(東京高決平17・3・23判時1899-56,ニッポン放送事件)参照。取締役会の判断による敵対的防衛に対する防衛策(新株予約権発行)への差止請求が認められるか(主要目的ルール,および,例外),例外の4類型]

会社法99/ 企業の買収・結合・再編26/ 560/ しかしこれらのうち,③は,#対象会社の資産を担保にして買収資金の融資を受ける方法(レバレッジド・バイアウト(LBO)。MBOなどに通常利用される方法)を,また,④は,#遊休資産を処分し株主に分配するという経済合理性のある行為を含みうる点,問題。効率的買収を阻害しないよう,この4類型を合理的に解釈要。
[『LEGAL QUEST会社法』3版443頁参照。裁判例の呈示したいわゆる4類型の問題点]

◇より限定的な目的で取締役会の判断で防衛策を行使すること
[・企業の経営支配権の争いがある場合、現経営陣と敵対的買収者のいずれに経営を委ねるべきかの判断は、株主によってされるべきである。
 対象会社の取締役会としては、株主に適切な情報提供を行い、その適切な判断を可能とする目的で、敵対的買収者に対して事業計画の提案と相当な検討期間の設定を任意で要求することができるのみならず、合理的な要求に応じない買収者に対しては、株主全体の利益保護の観点から相当な手段を採ることが許容される場合が存する。]

会社法100/ 企業の買収・結合・再編27/ 561/ 経営支配権争いある場合,現経営陣と敵対的買収者のいずれに経営を委ねるべきか,#株主が判断。対象会社の取締役会は,株主に適切な情報提供,判断を可能にさせる目的で,#買収者に対し事業計画の提案と相当な検討期間の設定を要求でき,合理的要求に応じなければ,#株主全体の利益保護のため相当手段採れる。
[『LEGAL QUEST会社法』3版443頁(東京地決平17・7・29判時1909-87,日本技術開発事件)参照。情報提供と検討期間確保目的のための,取締役会による防衛策]

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◇差別的行使条件付新株予約権の無償割当ての意義と募集新株予約権の発行の差止め
会社法101/ 企業の買収・結合・再編28/ 571/ 会社法247条は,「#第238条第1項の募集に係る新株予約権の発行」の差止請求であるため,247条を277条以下の新株予約権無償割当てに直接適用できない。しかし,#新株予約権無償割当ての内容次第で既存株主の不利益生がじうるため,247条類推適用により救済策として新株予約権無償割当差止請求を認めるべき。
[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版316頁(東京高決平17・6・15判時1900-156,東京地決平19・6・28金判1270-12)参照。会社法247条の類推適用]

◇差別的行使条件付新株予約権の無償割当てと株主平等原則
会社法102/ 企業の買収・結合・再編29/ 572/ 株主は株主としての資格で新株予約権無償割当てを受けるが,#新株予約権の内容同一性が前提(会社法278条2項)と解されるので,株主平等原則(会社法109条)の趣旨が及ぶ。差別的行使条件付新株予約権無償割当ては,同原則の直接違反ではないが,#その背後にある衡平の理念に鑑み実質的に合理性の有無,判断要。
[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版317頁(最判平19・8・7民集61-5-2215)参照。新株予約権無償割当てと平等原則]

会社法103/ 企業の買収・結合・再編30/ 573/ #特定株主の経営支配権取得に伴い会社企業価値毀損_会社利益ひいては株主共同利益が害される場合,防止のための当該株主の差別的取扱いも,#衡平の理念に反し相当性を欠かない限り,株主平等原則に反しない。判断の前提事実の不存在・虚偽等,正当性を失わせるような重大瑕疵なき限り,株主自身の判断尊重。
[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版318頁(最判平19・8・7民集61-5-2215)参照。特定の株主の差別的取扱いに合理性が認められるかの判断の仕方]

◇差別的行使条件付新株予約権の無償割当てと不公正発行
会社法104/ 企業の買収・結合・再編31/ 574/ #公開会社の株主総会に他の株主選別権限は当然にはなく,特定株主による会社支配権取得阻止権限は認められない。決議が行われたとしても,差別的行使条件付新株予約権無償割当ては,直ちには正当化されない。不公正発行非該当につき,#買収防衛策を発動する会社側にかなり重い立証責任が課されると解する。
[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版319頁参照。公開会社における差別的行使条件付新株予約権無償割当ての合理性・適法性の立証責任]

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