2019年3月(11日~24日)分ツイート:20,その他(民法1,商法11;刑法8)


2019年3月分(1日~24日)ツイート:48,その他(民法1,商法11,民訴法10;刑法26)

2019年3月24日(その他3)
刑法167/ 967/ 自殺者,被殺者の生命は,自分自身に対しては,刑事罰の保護対象でない。⇔他人に対する関係では,自殺者,被殺者の意思に合致した生命侵害も,違法。∵生命の絶対的価値から,自殺者,被殺者の当座意思に優越する要請(#パターナリズム)。⇒例外的な法益侵害⇒#生命主体の意思に反する死の惹起より侵害性軽微。
[山口『刑法各論』2版12頁参照。参考:辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版83頁]

刑法166/ 966/ 教唆は,#人に犯罪遂行意思を生じさせ_犯罪を実行させること。人に犯意を生じさせるに足る教唆行為により,正犯に犯罪意思遂行意思が生じ,それに基づき実行行為が行われ,#その危険の現実化としてTB的結果発生要。正犯行為にTB該当性,Rwが認められる場合に教唆成立(制限従属性)。正犯の罪名と異なり得る。
[山口『刑法総論』3版334頁参照。決意(=犯罪遂行意思)を生じさせる,との表現もよく見る。]

刑法165/ 965/ 自殺関与罪は共犯でなく,独立の犯罪だとしても,生命侵害が処罰根拠である以上,生命に対する現実的危険の発生を未遂成立要件とすべきで,#自殺行為への着手により危険が発生した時点に未遂犯成立。∵同意殺人罪の場合(生命侵害の具体的危険発生時)や,より法益侵害性の高い殺人教唆・幇助の場合との均衡。
[山口『刑法各論』2版13頁-14頁参照。参考:辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版83頁]


2019年3月22日(その他1)
商法144/ 964/ 平成17年前商法と異なり,会社法および施行規則では,「#債務の履行の見込みに関する事項」を会社分割における事前開示事項の1つとし,その理由開示要求せず。⇒#会社分割の安定のため_債務履行の見込みなきことも無効原因としない趣旨。but,連帯債務追及,詐害行為取消,法人格否認の法理で,債権者保護要。
[『LEGAL QUEST会社法』3版420頁参照。参考:辰巳『趣旨・規範ハンドブック2民事系』6版345頁]

2019年3月20日(その他5)
商法143/ 962/ 本人から手形振出権限を付与されていない他人が,手形上に自己の名義を示すことなく,直接に本人名義の署名or記名捺印を手形上に表す方式(機関方式)でした手形振出(#手形の偽造)も,本人は追認可。第三者が当該他人に本人名義の手形振出の権限ありと信ずるにつき正当理由あるとき,民法110条の類推適用可。
[最判昭43・12・24民集22-13-3382『手形小切手判例百選』5版(1997年)〔13〕,前田康『手形法・小切手法入門』初版(1983年)88頁参照。参考:R28予備Q1,最判昭41・7・1判タ198-123『手形小切手判例百選』5版(1997年)31頁2列目]

民法142/ 962/ 民法94条2項の「第三者」,転得者含む。∵真の所有者が虚偽の外観を作出したという帰責性の面で,直接の第三者に対する関係だろうと,転得者との関係であろうと,特段の差ない。⇔110条の「第三者」は(無権)代理行為の直接の相手方のみ,転得者含まない。∵#代理人でない者を代理人と信じ取引した者の保護。
[池田清治『基本事例で考える民法演習』初版(2013年)日本評論社〔第4講〕36頁(最判昭45・7・24民集24-7-1116;最判昭36・12・12民集15-11-2756)参照]

商法142/ 961/ #代理人が権限を越え振り出した約束手形を民法110条で有効とするには直接の相手方が当該代理人に振出権限ありと信ずべき正当な理由あるときに限る。∵正当理由の有無は無権代理人の代理行為の際の具体的事情で決せられるが,第三取得者は通常それを知りえないし,第三取得者への裏書譲渡が無意味になる。
[前田康『手形法・小切手法入門』初版(1983年)75頁,最判昭36・12・12民集15-11-2756『手形小切手判例百選』5版(1997年)〔10〕,参照。参考:R28予備Q1。
 平成28年度司法試験予備試験商法の設問1で関係のありそうな判例。民法110条の表見代理規定は,転得者(第三取得者)には適用されない(「第三者」とは直接の相手方に限る)旨の説明,何回読んでもよくわからなかったが,前田・手形法の本を見直してみて,なんとなくその理由がわかったような気がしています。
 なお,池田清治『基本事例で考える民法演習』初版(2013年)日本評論社の第4講36頁に,民法94条2項の「第三者」には転得者が含まれるが,110条の「第三者」には転得者は含まれない旨書かれていますが,それを読んでもその区別の理由はよくわかっていませんでした。
 110条の判例(昭和36年最判)は約束手形の判例だから前田・手形法に書かれているように,転得者(第三取得者)は含まれないだなーと,やっと記憶の定着ができそうです。]

商法141/ 960/ 定款による株式譲渡制限は,譲渡による取得につき会社の承認を要するにとどまり,相続,合併といった一般承継による譲渡制限株式取得には,承認不要(会社法134条4号参照)。but,#一般承継人が会社にとって好ましい者でない場合_定款で定めれば当該株式の売渡し請求可(174条~177条)。共有持分売渡請求も可。
[『LEGAL QUEST会社法』3版100頁-101頁参照。参考:R30②Q3]

商法140/ 959/ 会社法106条ただし書の同意により,共有に属する株式についての権利行使方法に関する特別の定め(民法264条ただし書)である会社法106条本文の適用が排除される。⇒共有株式につき権利行使者を定めずになされる権利行使は,原則通り民法252条に基づき(共有物の管理),#持分価格の過半数で決せねばならない。
[最判平27・2・19民集69-1-25『会社法判例百選』3版〔12〕,R28予備Q2,参照]


2019年3月18日(その他6)
商法139/ 958/ 一定の事項を株主総会の目的とすることを請求する権利(株主提案権)は,当該株主が議決権を行使できる事項に限られるので(303条1項かっこ書),#議決権を持たない単元未満株主(189条1項)には,株主提案権はない。その他の権利も残余財産分配請求権,配当請求権等の自益権を除き,定款で排除できる(189条2項)。
[https://twitter.com/right_droit/status/1107540217232121856
4:53 - 2019年3月19日]

商法138/ 957/ 内部的意思決定を欠く募集株式発行は無効事由か? 判例は,取引安全を考慮してか,#対外的に代表権ある代表取締役による株式発行を無効としない。公開会社につき,この考え方は維持可能だが,#非公開会社では取引安全を強調すべき必要性_低いし_特別決議による既存株主の持株比率保護_重要,⇒無効とすべき。
[『LEGAL QUEST会社法』3版329頁(最判昭36・3・31民集15-3-645,最判昭46・7・16判時641-97,最判平24・2・24民集66-6-2908)参照]

商法137/ 956/ 承認を受けない競業取引の場合(会社法356条1項1号),利益相反取引と異なり,無効ではない。∵競業取引は会社以外の者と取締役間の取引で,それが無効になっても,会社救済にならない。#競業取引により会社に損害が生じれば_承認の有無にかかわらず_関係取締役は_会社に対し損害賠償責任を負い得る(423条)。
[『LEGAL QUEST会社法』3版225頁参照]

商法136/ 955/ 利益相反取引(会社法356条1項2号3号)に必要な承認を受けない直接取引の相手方に対し,会社は,取引無効主張可。/間接取引の相手方や取締役を受取人として振り出した約束手形の譲受人につき,取引安全のため,#会社は_その取引が利益相反取引に該当し_承認欠缺につき相手方悪意を主張立証要(相対的無効説)。
[『LEGAL QUEST会社法』3版222頁(最大判昭43・12・25民集22-13-3511,最大判昭46・10・13民集25-7-900)参照]

商法135/ 954/ 取締役会決議を欠く代表取締役の行為も直ちに無効となるわけではない。重要財産の処分,多額の借財(会社法362条4項1号2号)などが取締役会決議なしに行われた場合に,#判例は_原則_有効だが_相手方が決議を経ていないことを知りor知りえたときは無効とする。⇔相手方の悪意・重過失を要求する学説もある。
[『LEGAL QUEST会社法』3版189頁(最判昭40・9・22民集19-6-1656)参照]

商法134/ 953/ #重要な業務執行決定を取締役会決事項とするのは会社利益保護の趣旨なので,取締役会決議欠缺を理由とする取引の無効は,#原則_当該会社のみ主張可。当該会社以外の者は特段の事情(取締役会が無効の主張をしている等)なき限り取引無効を主張不可。例:取締役会決議を欠く債権譲渡の債務者による無効主張。
[『LEGAL QUEST会社法』3版190頁,189頁(最判平21・4・17民集63-4-535)参照]

2019年3月11日(その他5)
刑法164/ 952/ 抽象的事実の錯誤とは,行為者が認識・予見した事実が該当するTBと,実際に生じた事実が該当するTBとが異なる場合(異なったTBにまたがる事実の錯誤)。それぞれのTBの(形式的・実質的)重なり合い(符合)が肯定できる限りで故意犯成立。#TBの実質的重なり合いの場合_保護法益の共通性・重なり合いを要する。
[山口『刑法総論』3版235頁,234頁,237頁参照]

刑法163/ 951/ 名誉は,内部的名誉(人の真価),外部的名誉(社会の評価),主観的名誉(名誉感情)に区別される。名誉棄損罪の「人の名誉」は,#外部的名誉で,人についての事実上の(積極的な)社会的評価(#事実的名誉)。⇔人の真価に対応した評価:規範的名誉。∴虚名も保護対象。∵「事実の有無にかかわらず」名誉棄損罪成立。
[山口『刑法各論』2版134頁,135頁参照]

刑法162/ 950/ 判例は,強盗・強制性交等致死罪(刑241条3項)を結果的加重犯とする理解から,殺意ある場合を含まず,#殺意ある場合_強盗殺人罪と強盗・強制性交等罪(1項)との観念的競合とする。but,強盗の二重評価,前提とする機会説,疑問。刑の均衡,強盗致死傷罪の拡張された手段説をとり,殺意ある場合を含むと解すべき。
[(山口『刑法各論』2版242頁-243頁(大判昭10・5・13刑集14-514,大阪高判昭42・5・29高刑集20-3-330)参照。強盗致死傷罪(刑240条)の成立に関わる強盗の機会の議論における,拡張された手段説(山口説)とは,強盗罪の手段たる暴行・脅迫と,事後強盗類似の状況における暴行・脅迫から死傷結果が生じた場合に,同罪の成立を認める見解(同書236頁参照)。]

刑法161/ 949/ 「頒布」(刑法175条1項後段)は,不特定or多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他記録を存在するに至らしめること。
Xら運営配信サイトは,インターネットを介しダウンロード操作で自動的にデータ送信する機能あり,#顧客による操作は送信の契機にすぎず,Xらは,これに応じデータ送信しており,頒布に該当。
[最決平26・11・25刑集68-9-1053『27年度 重要判例解説』〔刑法7〕参照]

刑法160/ 948/ わいせつ物頒布等罪(刑法175条1項2項)のTB的行為は,頒布,公然陳列,有償頒布目的所持。頒布とは,#有償_無償を問わず,不特定または多数人に対する対象物の交付。現実の交付要。頒布相手方の行為は,当然予想される対向行為だが,処罰規定ない。相手方として関わるにすぎない行為は当罰性低いとの考慮から。
[山口『刑法各論』2版510頁-511頁参照]

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2019年3月(1日~10日)分ツイート:28,その他(民訴法10;刑法18)
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