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30th Mar 2019 from TwitLonger

刑訴法短文⑤-2/ 任意捜査と強制捜査 (25ヶ)


略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。⇒ならば,∴なので(したがって,よって,ゆえに),∵なぜならば,⇔これに対し(て),orまたは,butしかし(もっとも),exたとえば。
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◇強制処分
[・強制処分(刑訴法197条1項ただし書)とは、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない処分いう。その程度に至らない有形力の行使は、任意捜査においても許容される場合がある。ただ、強制手段にあたらない有形力の行使であっても、何らかの法益を侵害しまたは侵害するおそれがあるのだから、状況のいかんを問わず常に許容されるものではなく、必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される。]

刑訴法51/ 505/ 強制処分(刑訴法197条1項ただし書)は,#個人意思を制圧し_身体_住居_財産等を制約し強制的に捜査目的を実現するなど,特別の根拠規定なければ許容されない処分。その程度に至らない有形力行使も,何らか法益侵害のおそれあるので,#必要性_緊急性など考慮し_具体的状況下_相当と認められる限度でのみ許容。
[最決昭51・3・16刑集30-2-187(『刑事訴訟法判例百選』10版〔1〕),R27②採点実感(刑事系科目第2問)3頁,参照]

◇強制の処分
刑訴法4/ 22/ 「強制の処分」(#刑訴法197条1項 ただし書)とは、人の(明示ないし黙示の)意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、重要な権利・利益の侵害となるため、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段による場合をいう。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』刑事系5版189頁,190頁,寺崎『刑事訴訟法』3版73頁注17,など参照]

◇任意捜査
刑訴法5/ 23/ 任意捜査とはいえ何らか法益を侵害し、侵害するおそれがあるから、捜査のため必要な限度、①捜査の必要性・緊急性等を考慮し、②具体的状況のもと、相当と認められる限度、でのみ許される。①事案の性質、容疑の程度、②被疑者の意思、取調べの時間帯・長さ、行動の規制状況が考慮事情となる。#刑訴法
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』刑事系5版190頁参照]

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◇被告人の自白を同房者を通じて得ようとする捜査手法
刑訴法6/ 24/ 被告人の自白を同房者を通じて得ようとうする捜査手法は違法である。これは任意捜査の限界を超える。身柄留置を犯罪捜査に濫用するものであり、他の捜査手法を用いることが困難であったということもできないから、捜査手法として相当性を欠く。#刑訴法
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』刑事系5版191頁(福岡地小倉支判平20・3・5)参照]

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◇任意同行
刑訴法1/19/ 司法警察活動としての任意同行は、相手方の任意の承諾に基づく限り、任意捜査の一方法として認められると考えられる。任意同行を求めることが、被疑者のプライバシーの保護に資する面があるからである。#刑訴法
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』刑事系5版191頁3つ目の論点参照]

◇任意同行と実質的逮捕区別における考慮事由
刑訴法2/ 20/ 任意同行と実質的逮捕との区別は、①同行の時期・場所、②方法、③同行後の取調べ状況等の事情から総合判断すべきである。#刑訴法

①同行の時刻・場所、②方法・態様、③被疑者の属性、④同行の必要性、⑤被疑者の対応、⑥同行後の取調べ状況、⑦捜査官の主観的意図等から総合判断すべきである。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』刑事系5版191頁4つ目の論点参照]

◇任意出頭・同行を求めて行う取調べ
刑訴法3/ 21/ 任意出頭・同行を求めて行う取調べは、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様および限度において許容される。任意捜査といえども、何らかの法益侵害・そのおそれから、無制約には認められないからである。#刑訴法
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』刑事系5版192頁の1つ目の論点参照]

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☆宿泊を伴う被疑者取調べ
刑訴法問題7/ 緑・刑訴法入門55頁参照:警察官KはAに対し殺人罪の嫌疑を抱き,取調べのため警察署に出頭を求め,取調べで嫌疑を深めたKは,さらに取り調べるためAを旅館に3泊させ,警察署で取り調べた。Aは宿泊希望の旨の答申書提出。常時警察官が交代でホテル周辺に張り込み,A動静を監視。任意処分として適法な取調べか?
[緑大輔『刑事訴訟法入門』55頁事案(最決昭59・2・29刑集38-3-479,高輪グリーンマンション事件を簡略化したもの)参照]

◇宿泊を伴う取調べ
[・任意捜査においては、強制手段すなわち、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当できない手段を用いることが許されないのはいうまでもないが、任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは、そのような強制手段によることができないだけでなく、さらに、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様および限度において、許容されるものである。]
[・Xの住居はT警察署からさほど遠くはなく、深夜であっても帰宅できない特段の事情も見当たらない上、第1日目の夜は、捜査官が同宿しXの挙動を直接監視し、第2日目以降も、捜査官らがホテルに同宿こそしなかったもののその周辺に張り込んでXの挙動を監視しており、しかもこの間午前中から深夜に至るまでの長時間、連日にわたって本件についての追及、取調べが続けられたものであって、これらの諸事情に徴すると、Xは、捜査官の意向にそうように、このような宿泊を伴う連日にわたる長時間の取調べに応じざるを得ない状況に置かれていたものとみられる一面もあり、その期間も長く、任意取調べとして必ずしも妥当なものであったとはいい難い。]
[・しかしながら、他面、Xは、初日の宿泊について「どこかの宿泊所に泊めてほしい」旨の答申書を出しており、また、記録上、Xが取調べや宿泊を拒否し、調べ室あるいは宿泊施設から退去し帰宅することを申し出たり、そのような行動に出た証跡はなく、捜査官らが、取調べを強行し、Xの退去、帰宅を拒絶したり制止したというような事実もうかがわれないのであって、これらの諸事情を総合すると、取調べにせよ宿泊にせよ、結局、Xがその意思によりこれを容認し応じていたものと認められる。]
[・宿泊の点など任意捜査の方法として必ずしも妥当とはいい難いが、Xが任意に応じていたものと認められるばかりでなく、事案の性質上、速やかにXから詳細な事情および弁解を聴取する必要性があったものと認められることなどの具体的状況を総合すると、結局、社会通念上やむを得なかったものというべく、任意捜査として許容される限界を超えた違法なものであったとまでは断じ難い。」

刑訴法52/ 528/ 任意捜査で,強制手段(個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等を制約し強制的に捜査目的を実現する行為など特別の根拠規定なければ許容できない手段)は用いえないが,任意捜査たる被疑者取調べは,#事案の性質_容疑の程度_被疑者態度等諸般の事情を勘案し_社会通念上相当な方法_態様_限度でのみ許容される。
[最判昭59・2・29刑集38-3-479(高輪グリーン・マンション殺人事件,『刑事訴訟法判例百選』10版〔6〕)参照。任意捜査が許容されるか否かの判断の仕方(法的判断枠組み)]

刑訴法53/ 529/ X住居は遠くなく,帰宅できない特段の事情もない上,1日目夜は,捜査官が同宿しXの挙動を直接監視,2日目以降も,捜査官らがホテル周辺に張り込み監視,しかも午前中から深夜まで長時間連日,取調べが続けられたのであり,#Xは宿泊を伴う連日の長時間取調べに応じざるを得ず_期間も長く,任意取調べとして不当。
[事実の分析]

刑訴法54/ 530/ 他面,Xは,初日宿泊時「どこかの宿泊所に泊めてほしい」旨の答申書を出しており,#記録上,取調べや宿泊を拒否,調べ室・宿泊施設からの退去,帰宅の申し出の証跡なく,取調べの強行,退去,帰宅の拒絶・制止もうかがわれないので,#諸事情を総合すると,結局,Xがその意思によりを容認し応じていたと認められる。
[事実の分析,小前提]

刑訴法55/ 531/ 宿泊など任意捜査方法として必ずしも妥当とはいい難いが,Xが任意に応じていたと認められるばかりでなく,事案の性質上,速やかな詳細な事情_弁解聴取の必要性があったなど,具体的状況を総合すると,結局,#社会通念上やむを得なかったもので,任意捜査として許容される限界を超えた違法なものとはいえない。
[結論]

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◇GPS捜査と強制処分法定主義,令状主義
刑訴法22/ 180/ 憲法35条は、「所持品」等に準ずる私的領域へ「侵入」されない権利も保障している。個人のプライバシー侵害を可能とする機器を所持品に秘かに装着し、個人の合理的意思に反し、その私的領域に侵入する捜査手法たるGPS捜査は、個人の意思を制圧し重要な法的利益を侵害する #強制処分 にあたる。
[最大判平29・3・15平28年(あ)442号,LEX/DB25448527参照。事実の評価例(GPS捜査が,「強制の処分」(刑訴法197条1項ただし書)にあたるか)]

刑訴法23/ 181/ #GPS捜査 は対象車両の移動状況等を把握する点、検証の性質をもつが、端末を付けた車両を通じ使用者の所在を検索する点で異なる。検証・捜索許可状でも、被疑事実と無関係の使用者の行動の、継続的網羅的で、過剰な把握を抑制できず(令状主義違反)、事前の令状呈示もできない(適正手続違反)。
[最大判平29・3・15平28年(あ)442号,LEX/DB25448527参照。事実の分析(GPS捜査の法的性質,検証許可状・捜索許可状の発付で行うことができるか?)GPS捜査という現に行われていた・いる事実としての捜査手法の分析。]

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◇おとり捜査
刑訴法49/ 493/ おとり捜査は,捜査機関・協力者が身分や意図を秘し犯罪実行を働き掛け,相手方が応じ実行に出たところで現行犯逮捕等するもの。直接の被害者なき薬物犯罪等,#通常の捜査方法のみでは摘発困難な場合_機会あれば犯罪実行意思ありと疑われる者が対象なら_刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容される。
[最判平16・7・12刑集58-5-333(『刑事訴訟法判例百選』10版〔10〕)参照。法的な分析・評価ではあるが,法的判断枠組みたる上位規範とし大前提に使えるほどには,その抽象性・一般性が足りないと思う。
 今まで,法的判断枠組みと事実の分析・評価(例)に分ける試みを行ってきたが,法的な命題でも,答案作成時に大前提として使うべき場合と,それに至る問題提起段階で事実の分析道具として使うべき場合,ないし,事実のあてはめ段階での事実の分析道具として使うべき場合と,一つの同じ法的命題の機能・役割が,答案において変わり得るという考えに至りました。]

◇おとり捜査が許容される場合
[・少なくとも、直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に、機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは、刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容されるものと解すべきである。]

刑訴法57/ 606/ #少なくとも_直接の被害者なき薬物犯罪等の捜査で_通常の捜査方法のみでは摘発困難な場合_機会あれば犯罪遂行意思ありと疑われる者を対象のおとり捜査は,刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容可。
他の捜査手法で証拠収集困難,Xは既に買い手を求めていたのだから,捜査官が仕向けたとしても,適法。
[猪俣尚人『捜査法演習 理論と実務の架橋のための15講』80頁(最決平16・7・12刑集58-5-333),および81頁L11-15も参照。範囲誘発型・機会提供型に分ける二分説に,必ずしも依拠しない判断枠組みおよび事案分析・評価例(判例)]

◇おとり捜査の適法性の判断基準
[・おとり捜査においては、意思の制圧という要素は考えられず、任意捜査であることに疑問の余地はない。
 したがって、その適法性は、必要性、緊急性および相当性という基準により判断することになる。すなわち、おとり捜査により制約される権利・法益と捜査の必要性、緊急性を利益衡量して、当該捜査手法が相当と認められるかという判断を行う。
 制約される権利ないし法益として、適正手続の観点からの司法の廉潔性、対象者の人格的自律権、国民一般の法益(社会的法益)などが想定される。]

刑訴法58/ 607/ おとり捜査に,#意思制圧要素は考えられず_任意捜査といえる。したがって,おとり捜査により制約される権利・法益と捜査の必要性,緊急性を利益衡量し,当該捜査手法が相当かどうか判断。#制約される権利・法益は_適正手続の観点からの司法の廉潔性_対象者の人格的自律権_国民一般の法益(社会的法益)など。
[猪俣尚人『捜査法演習 理論と実務の架橋のための15講』77頁-79頁参照。おとり捜査がどのような法益を制約することになるから(おとり捜査の規制根拠,同書78頁),この捜査手法が許容されるのかという問題とリンクさせた上での(同書82頁L3,4参照)、おとり捜査の適法性の判断基準]

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◇会話傍受
[・1. 会話傍受(秘密盗聴、同意盗聴)のような処分は、その態様を見れば、処分の相手方の反対意思を形成する機会を全く与えず、これを実施すれば被処分者の権利を完全に侵害するというものであり、有形力の行使のように侵害の程度の強弱は想定できないのであって、意思を制圧するということと価値的に同視できると考えられる。
 このような見方ができれば、秘密裏に行う捜査の場合には、意思の制圧ということが一般的に認められ、侵害される権利・法益の内容によって、強制処分性を判断することになる。
2.(1) そして、会話当事者のいづれの同意も得ない秘密盗聴により侵害されるプライバシーは、憲法21条2項後段の保障する通信の秘密および憲法13条の保障する国民の私生活上の自由として保護されるものであり、憲法35条により保護される住居、書類および所持品と同様、強制処分法定主義・令状主義により高度に保護すべきものである。したがって、秘密盗聴は強制処分である。
(2) 他方、一方当事者の同意がある同意盗聴には、その会話内容、すなわちプライバシーは相手方の支配下に置かれたものであり、会話の秘密性およびプライバシーを放棄したものと評価され、要保護性は質的に低下したものであって、強制処分とするまでもないといえる。]

刑訴法59/ 608/ 会話傍受(秘密盗聴,同意盗聴)処分は,#処分相手方に反対意思形成機会を全く与えず被処分者の権利を完全に侵害するものであり,有形力行使のように侵害程度の強弱は想定できず,#意思制圧と価値的に同視可。このような捜査の場合,意思制圧が一般的に認められ,#侵害される権利・法益内容で,強制処分性判断。
[猪俣尚人『捜査法演習 理論と実務の架橋のための15講』85頁参照。会話傍受の強制処分性の判断基準(意思制圧基準および重要な権利侵害基準によるが,前者は一般的に認められるの,後者の内容だけで判断。
前半部分,同書では「秘密盗聴のような処分」(85頁L6)と書かれていますが,秘密盗聴(会話当事者のいずれの同意も得ていない場合)と同意盗聴(会話当事者の一方の同意を得ている場合,同書84頁参照)を含むものと判断し,そういう方向でまとめています。]

刑訴法60/ 609/ 秘密盗聴の侵害するプライバシーは,通信の秘密(憲法21条2項後段),私生活上の自由(13条)として保護され,住居,書類・所持品同様,強制処分法定主義・令状主義で高度に保護すべきものであり(35条),強制処分。同意盗聴は,#会話内容_プライバシーは相手方支配下に置かれ_要保護性の質的低下により,任意処分。
[猪俣尚人『捜査法演習 理論と実務の架橋のための15講』85頁,86頁参照。侵害される権利・法益内容の質的な違いによる,強制処分性判断]

◇秘密録音(当事者録音)
[・対話の相手方が単に会話の内容を記憶にとどめ、その記憶に基づいて他に漏らす場合には、相手方に対する信頼の誤算であり、その危険は話者が負担すべきものである。
 しかし、相手方が、話者が知らないうちに、会話の内容を機械により正確に録音し、再生し、さらには話者(声質)の同一性の証拠として利用する可能性があることを知っておれば、当然拒否することが予想される。その拒否の機会を与えずに秘密録音することは、相手方のプライバシーないし人格権を多かれ少なかれ侵害することは否定できない。いわんやこのような録音を刑事裁判の資料とすることは司法の廉潔性の観点からも慎重でなければならない。
 したがって、捜査機関が対話の相手方の知らないうちにその会話を録音することは、原則として違法である。ただ、録音の内容、目的、必要性、侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ、許容されるべきものと解する。]

刑訴法50/ 494/ 対話の相手方が,#話者が知らないうちに会話内容を機械で正確に録音し,再生し,さらに話者(声質)の同一性の証拠として利用する可能性があることを知っておれば,#当然拒否することが予想される。拒否の機会を与えず,#秘密録音することは_相手方のプライバシー・人格権侵害。捜査機関による場合,原則違法。
[千葉地判平3・3・29判時1384-141(『刑事訴訟法判例百選』10版〔9〕)参照]

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☆写真撮影・ビデオ撮影
刑訴法問題6/ 緑・刑訴法入門5講参照:(1)公道デモ行進中のAらが,監視中の警察官らと小競り合いを始めたため,警察官Kは様子をビデオカメラ撮影。(2)銀行ATMで撮られた振り込め詐欺犯人の容ぼうとパチンコ店に出入りする被疑者Bの容ぼうを比較し,犯人か判断するため,警察官Kは店長に依頼し,容ぼうを防犯カメラで撮影。
[緑大輔『刑事訴訟法入門』〔5講〕事例参照]

◇写真・ビデオ撮影
刑訴法30/ 捜査16/ 332/ [検察官による人の容ぼう等の撮影が、現行犯・準現行犯の場合のほかは許されないというわけではない。]
#捜査機関がXを犯人と疑う合理的理由あり、かつ、強盗殺人等捜査に関し、防犯ビデオに写っていた犯人特定の証拠資料入手のため必要限度での、公道上のX、不特定多数の集まるパチンコ店内のXの容ぼう等の撮影であり、#通常人が他人から容ぼう等を観察されること自体受忍せざるを得ない場所のもの。
[⇒これらのビデオ撮影は、捜査目的達成のため、必要な範囲において、かつ相当な方法によって行われたものといえ、捜査活動として適法である。
 最決平20・4・15刑集62-5-1398(『刑事訴訟法判例百選』10版〔8〕18頁)参照]

◇写真撮影の強制処分性
[・私人の住居の中の盗撮と公共の場における撮影行為とでは侵害される法益が異なり、前者はプライバシーが問題であって、明らかに質的に差がある。すなわち、前者にあっては、住居内にいる者以外の他者の視線から守られていることを前提として行動しているものであって、他者の視線を常に意識している公共の場における肖像権とは保護すべき程度は異なる。
 これを許される捜査という観点からみれば、前者は、身体、住居、財産に匹敵する価値を有し、強制処分法定主義、令状主義により保護に値する権利であるのに対し、後者は、任意処分の対象となるものと解する。]

刑訴法61/ 610/ 私人の住居内盗撮はプライバシー,住居内にいる者以外の他者の視線にさらされず行動できる利益が問題。公共の場での撮影行為は,他者の視線を常に意識する公共の場での肖像権が問題。保護程度,異なる。#前者は_身体_住居_財産に匹敵し_強制処分法定主義_令状主義の保護に値する。後者は,任意処分の対象。
[猪俣尚人『捜査法演習 理論と実務の架橋のための15講』89頁参照。私人の住居内の盗撮と公共の場での撮影行為における,保護法益の違いおよび保護すべき程度の違いによる,捜査手段の区別(強制処分によるか,任意処分によるか)]

◇公道上の写真撮影について
[・警察官による、公道上における写真撮影は任意処分にあたると解する。
 そして、撮影される本人の同意がなくまた裁判官の令状がなくても、警察官による個人の容ぼう等の撮影が許容される要件の一つとして現行犯性の要件(刑訴法212条1項)をみたす必要があると解する。なお、この要件は緊急性の高度なものである。
 なぜなら、任意捜査の適法性を判断するための利益衡量において、その判断の中核となる制約される権利の性質に着目するのが筋だからである。すなわち、集団行進・集団示威運動の状況を、行進誘導者らの承諾を得ないで、警察官が撮影する場合など、個人の私生活上の自由の一つとして、承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由があり、その内容として、肖像権を超えて、表現の自由というものが包含されており、許される捜査はより厳格にならざるをえないからである。]

刑訴法66/ 616/ 公道上における写真撮影は任意処分。
撮影される本人の同意なく,裁判官令状なく,警察官による個人の容ぼう等の撮影が許容される要件として現行犯性を要する(高度の緊急性)。なぜなら,#個人の私生活上の自由として_承諾なしに_みだりに容ぼう等を撮影されない自由の内容に_肖像権_表現の自由,含むから。
[猪俣尚人『捜査法演習 理論と実務の架橋のための15講』91頁,90頁(最判44・12・24刑集23-12-1625)参照。公道上における写真撮影が,任意処分として許容される要件に,現行犯性が含まれるか]

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◇エックス線撮影
刑訴法98/ 889/ 捜査機関が捜査目的達成のため,承諾なしにエックス線を照射し内容物の射影を観察する検査は,#射影により荷物の内容物の形状や材質をうかがい知ることができる上_内容物によっては品目等を相当程度具体的に特定可能で,荷送人や荷受人のプライバシー等を大きく侵害するから,検証の性質を有する強制処分。
[最決平21・9・28刑集63-7-868『刑事訴訟法判例百選』〔29〕参照。参考:辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版197頁]

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