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1st Apr 2019 from TwitLonger

刑訴法短文⑥-1/ 被疑者の身柄保全 (14ヶ)


略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。⇒ならば,∴なので(したがって,よって,ゆえに),∵なぜならば,⇔これに対し(て),orまたは,butしかし(もっとも),exたとえば。
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〇現行犯逮捕の要件ーー逮捕の必要性
刑訴法判例8/ 大阪高判昭60・12・18参照:現行犯逮捕についても逮捕の必要性(逃亡or罪証隠滅のおそれ)が要件となるかにつき,明文規定は存しないが,#現行犯逮捕も人の身体の自由を拘束する強制処分であるから_要件をできる限り厳格に解すべきで_通常逮捕同様(刑訴法199条2項,規則143条の3),逮捕の必要性を要件とする。
[『刑事訴訟法判例百選』10版〔A2〕(判時1201-93)参照。参考:辰巳『趣旨・規範ハンドブック刑事系』5版200頁]

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☆現行犯逮捕の適法性
刑訴法問題1/ 刑訴法R29予備Q1参照:平成29年5月21日午後10時頃,J町1-2-3先路上で,Vがサバイバルナイフで胸部を刺され殺害され,W,犯行を目撃,犯人を追跡したが,現場から約200m地点で見失う。警察官は,約30分後,約2km離れた路上で,Wから聴いた犯人の特徴と合致する甲を発見,甲は犯行を認めた。現行犯逮捕の適法性如何?
[平成29年度司法試験予備試験 刑訴法論文式試験 設問1問題と出題趣旨,参照。参考:京都地決昭44・11・5判時629-103(有斐閣『ケースブック刑事訴訟法』3版79頁)]

☆現行犯逮捕の適法性と,その後の勾留請求への影響
刑訴法問題13/ 古江・事例演習〔4〕(1)参照:司法警察員Kは,深夜2時ころコンビニエンスストアA店で強盗事件発生のため,店員Vに事情聴取。付近を探索。事件の約2時間後,店舗から約8km離れた路上で犯人の人相風体に似たXを発見,質問したが,Xは否認。Xを現行犯逮捕,検察官送致,勾留請求。裁判官はいかなる裁判をすべきか?
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版〔4〕小問(1)参照]

◇犯罪と犯人との明白性は,逮捕者自身が覚知することを要するか
刑訴法99/ 890/ 被疑者の現行犯逮捕が許容されるためには,被疑者が現に特定の犯罪を行いor現にそれを行い終わった者であることが,逮捕の現場における客観的外部的状況から,#逮捕者自身においても直接明白に覚知しうる場合たること要。緊急逮捕しうる実体的要件具備,but現行犯or準現行犯逮捕しうる実体的要件具備なし。
[京都地決昭44・11・5判時629-103『刑事訴訟法判例百選』10版〔11〕参照。参考:辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版200頁]

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◇「罪を行い終わってから間がない」(刑訴法212条2項)の意義
刑訴法100/ 992/ 「罪を行い終わってから間がない」(刑訴法212条2項)とは,#時間的・場所的近接性あることを要するが,要求される程度は異なりうる。同項2号のように犯罪と犯人との結びつきが強くない場合,厳格に。他方,各号が重複該当する場合,犯罪と犯人の結びつきが強いので,時間的場所的近接性の要件は緩和されうる。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版201頁参照]
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〇現行犯逮捕の要件。逮捕前置主義
刑訴法判例2/ 京都地決昭44・11・5参照:司法巡査による現行犯逮捕は,犯行時より20分後,犯行現場から20数m地点だが,①巡査自身による被疑者犯行の目撃,②被疑者が犯罪に供した凶器等所持,③身体,被服などに犯罪の証拠残存,④逃走しようとした,⑤被害者自身から追呼されていた,わけではない。⇒現行犯逮捕要件不具備。
[有斐閣『ケースブック刑事訴訟法』3版〔6-1〕80頁(判時629-103),R29予備Q1,刑訴法212条2項,429条1項2号(勾留裁判に対する準抗告),参照。逮捕前置主義。司法的抑制。逮捕手続の違法を司法的に明確にする→勾留請求却下。]

〇逮捕前置主義――先行する逮捕は適法でなければならないか
刑訴法判例1/ 京都地決昭44・11・5参照:#先行する逮捕は適法でなければならない。∵①逮捕が違法なら釈放されてしかるべきで,逮捕前置主義をみたさない,②刑訴法には逮捕に対する準抗告がないので,勾留請求を却下し逮捕手続の違法性を司法的に明確化必要。/#逮捕被疑事実と勾留被疑事実とは同一でなければならない。
[寺崎『刑事訴訟法』3版176頁-177頁(判時629-103)参照]

◇逮捕・勾留の効力の及ぶ範囲
刑訴法101/ 993/ 逮捕・勾留の効力は,#令状記載の被疑事実にのみ及ぶ(事件単位説)。被疑事実の同一性の有無により判断。∵令状記載の被疑事実に限定することで,#身柄拘束の理由を明確にし,被疑者の人権保障を図るべき。#被疑事実の同一性は刑罰権の及びうる範囲である公訴事実の同一性により判断。∵刑罰権行使の一環。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版204頁参照]

☆逮捕の違法がその後の勾留に影響するか
刑訴法問題11/ 緑・刑訴法入門8講(1)参照:司法巡査K1は,逮捕令状でAを逮捕したが,その際,逮捕状呈示(201条1項)を失念。Aの身体を受け取った司法警察員K2は,被疑事実の要旨・弁護人選任権を告知して弁解聴取した上で,検察官送致,検察官は勾留請求。#裁判官が勾留質問で令状呈示の瑕疵を知った場合_勾留状発付すべきか?
[緑大輔『刑事訴訟法入門』〔8講〕事例(1)参照]

☆逮捕の違法がその後の勾留に影響するか
刑訴法12/ 緑・刑訴法入門5講(2):司法巡査K3は現行犯逮捕の要件たる犯人・犯行の明白性を欠き,犯行時刻からかなり時間が経っていたにもかかわらず(212条1項),これを糊塗しBを窃盗で現行犯逮捕。検察官は逮捕段階の違法に気づかず勾留請求。裁判官が勾留質問で現行犯逮捕の違法に気づいた場合,勾留状発付すべきか?
[緑大輔『刑事訴訟法入門』〔8講〕事例(2)参照]

〇逮捕の違法と拘留請求
刑訴法判例16/ 東京地決昭44・11・5参照:刑訴法は,#勾留請求につき逮捕前置主義を採用し_違法逮捕に対する司法的抑制を期待するのだから,違法な逮捕手続に引き続く勾留請求は,仮に将来同一事実に基づく再度の逮捕や勾留請求が予想されても,#その時点において逮捕手続の違法を司法的に明確にすると意味で,却下すべき。
[緑大輔『刑事訴訟法入門』98頁(判時629-103)参照]

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☆違法逮捕と再逮捕の可否
刑訴法問題14/ 古江・事例演習〔4〕(2)参照:司法警察員Kは,深夜2時ころコンビニエンスストアA店で強盗事件発生のため店員Vに事情聴取。事件の約2時間後,店舗から約8kmの路上で犯人の人相風体に似たXを発見,質問。X否認。Xを現行犯逮捕,検察官送致。検察官は逮捕手続が違法なので釈放。同一被疑事実でXを逮捕できるか?
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版〔4〕小問(2)参照。参考:同書55頁]

◇常習賭博罪で起訴され保釈中の被告人に、同一の常習賭博罪を構成する新たな賭博行為が発見された場合に、新たに逮捕・勾留することは、一罪一逮捕一拘留の原則に反し許されないか。
[・捜査機関による同時処理が不可能であった場合には、許容されると解する。
 なぜなら、一罪一拘留一逮捕の原則は、不当な身柄拘束の蒸し返し防止にあるところ、捜査機関の同時処理が不可能であった場合は、新たな逮捕拘留を認めても、不当な蒸し返しとはいえないからである。]

刑訴法77/ 699/ 常習賭博罪で起訴され保釈中の被告人に,同一の常習賭博罪を構成する新たな賭博行為が見つかった場合も,新たな逮捕・勾留は,一罪一逮捕一拘留原則に反し,できないか。
同原則の趣旨は,不当な身柄拘束蒸し返し防止であり,#捜査機関による同時処理が不可能であった場合,不当な蒸し返しとはいえず,できる。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック刑事系』5版207頁(仙台地決昭49・5・16)参照]

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◇別件逮捕・勾留
刑訴法102/ 994/ いまだ重大な甲事件につき被疑者を逮捕・勾留する理由と必要性が不十分なのに,#主としてそれを取り調べる目的で,甲事件が存在しなければ通常立件されないと思われる軽微な乙事件につき被疑者を逮捕・勾留する場合,#令状主義の実質的潜脱で,一種の逮捕権の濫用。⇒重大な違法⇒自白調書は証拠能力欠く。
[浦和地判平2・10・12判時1376-24(『刑事訴訟法判例百選』10版〔16〕)参照。参考:辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版208頁(本件基準説,実体喪失説)]

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