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原稿 · @right_droit4

2nd Apr 2019 from TwitLonger

刑訴法短文⑥-2/ 物的証拠の収集 (16ヶ)


略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。⇒ならば,∴なので(したがって,よって,ゆえに),∵なぜならば,⇔これに対し(て),orまたは,butしかし(もっとも),exたとえば。
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◇令状の記載(刑訴法219条)
刑訴法104/ 996/ 令状(刑訴法219条)記載の場所の範囲:#住居における管理権の範囲内。目的物:原則,捜査機関,被処分者が令状と対象すれば誤りなく識別可能程度の明確性要。∵無差別な捜索,差押えによる住居の平穏,プライバシーの不当侵害抑止。例外,具体例付の概括的記載。#捜索_差押えは捜査の初期段階が多く,特定困難。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版211頁(最大決昭33・7・29)参照]

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☆特定の「場所」に対する捜索差押許可状の効力が,「物」に及ぶことがあるのか
刑法問題9/ 刑訴法R29②Q1参照:覚せい剤取締法違反(所持)で逮捕した複数の者の供述から,司法警察員Pは,甲が内妻乙と居住する自宅Kマンション付近での,覚せい剤密売を疑い,捜索差押許可状で,甲方捜索。捜索中,乙がハンドバックを持ったまま玄関に行こうとし,見せるのを許否したため,②#それを取り上げ_中身を捜索。
[平成29年度司法試験 刑訴法論文問題参照。参考:同採点実感]

◇令状による捜索の範囲――宅配便で被告人宛に配達され同人が受領した荷物
刑訴法17/ 120/ 捜索場所を被告人方居室等(#刑訴法219条1項)とする捜索差押許可状に基づき、被告人立会いの下に同人居室を捜索中、宅配便の配達員により同人宛に配達され同人が受領した荷物について、警察官は捜査できる。当該許可状の効力は、令状呈示後に搬入された物品には及ばない旨の主張は採用できない。
[以下のツイートリンクに啓発され作成しました。https://twitter.com/hanrei_bot/status/863334083924942848
 最決平19・2・8刑集61-1-1『刑事訴訟法判例百選』9版〔22〕参照。「捜索すべき場所」(刑訴法219条1項)にあたるか否かの解釈問題だとは思うが,「被告人が受領した」「被告人立会の下」という事情も大きいだろう思う。そうだとすると,被告人が宅配便の配達物の受領を拒否した場合にも,同じ結論とするためには,さらにていねいに説得的な記述が必要になるだろう。]

☆「場所」に対する捜索差押許可状によって「身体」に対する捜索が許される場合があるか
刑訴法問題10/ 刑訴法R29②Q1参照:覚せい剤取締法違反(所持)の逮捕者の供述から,司法警察員Pは,甲の,自宅Kマンション付近での,覚せい剤密売を疑い,捜索差押許可状で,甲方捜索。居合わせた丙がそわそわしながらトイレに行く前に,ポケットの中身を見せるのを拒んだため,③ポケットに手を差し入れ,紙片5枚を取り出した。
[平成29年度司法試験 刑訴法論文問題 設問1③参照。参考:同採点実感]

〇捜索場所に居合わせた者の着衣・身体の捜索
刑訴法判例19/ 東京高判平6・5・11参照:場所に対する捜索差押許可状の効力は,当該場所に現在する者が差し押さえるべき物を着衣・身体に隠匿所持していると疑うに足りる相当な理由があり,差押を有効に実現するためはにその者の着衣・身体を捜索する必要がある具体的な状況の下においては,その者の着衣・身体にも及ぶ。
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版90頁(判タ861-299)参照]

◇捜索場所に居合わせた者の身体の捜索
刑訴法105/ 997/ 場所に対する令状で,その場に居合わせた者の身体は捜索できないのが原則。∵条文上,「身体」「物」「住居その他の場所」を分類し(刑訴法222条1項,102条),令状にもこれに従った記載を要求(219条1項)。#隠匿を疑うに足る十分な理由ある場合,例外。∵捜索の実行性確保。具体的挙動,被疑者との関係等考慮。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版213頁(東京高判平6・5・11)参照]

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〇コンピューター・電磁的記録媒体の差押え
刑訴法判例20/ 最決平10・5・1参照:令状により差し押さえようとするパソコン,フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合に,#そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報が損壊される危険があるときは,内容を確認せず,差押え可。
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版92頁(刑集52-4-275)参照]

◇包括的差押えの可否
刑訴法107/ 999/ 被疑事実との関連性を確認しない包括的差押えは,原則不許。∵無差別的な捜索,差押えによる不当な人権侵害防止。but,#パソコン等に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性あり_それをその場で確認すれば情報損壊の危険あるとき,内容を確認せず差押え可能。∵捜索の実行性確保。/印刷は必要な処分。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版214頁(最決平10・5・1)参照]

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☆捜索差押許可状呈示前に捜索差押場所に入室した際の措置
刑訴法問題8/ 刑訴法R29②Q1参照:覚せい剤取締法違反(所持)で逮捕したAなど複数の者の供述から,司法警察員Pは,甲が内妻と居住する自宅Kマンションを拠点に覚せい剤を密売している疑いを強め,甲方捜索差押許可状の発付を得た。甲がドアチェーンを掛けたままドアを開けたので,①ベランダ窓ガラスを割り,甲方に入った。
[平成29年度司法試験 刑訴法論文問題参照。参考:同採点実感。
本試験分析会 論文刑事系【反町講師】

1.甲方に立ち入った措置の適法性(222条1項・111条1項「必要な処分」):①捜索差押えの実効性を確保するために必要であること(必要性),②社会通念上相当な態様であること(相当性)。
 ①実刑判決を受ける可能性が高く,証拠隠滅の動機があり,捜索対象物件の破棄隠匿のおそれがある。ドアチェーンを掛けるという予測される被捜索者の対応。密航性の高い薬物事犯で,譲渡の有罪立証に不可欠の証拠。洗面所に流したりするなどごく短時間で容易に覚せい剤事態を隠滅できる。薬物事犯の特殊性=差押え物件の重要性,証拠隠滅の容易性。
 他方,②ガラス窓は取り外し可能な動産で,建物自体を壊したという訳ではないし,ガラス窓自体の財産的価値は高価であるとはいえない。さらに,居室にいた甲らの身体に対し特段,有形力の行使をするものではない。被侵害利益の内容,侵害の程度。とりわけ,財産的損害の内容を分析。
⇒窓ガラスを割り,甲方に立ち入った措置は許容される。
2.令状の呈示時期:]

〇令状呈示前の立入り
刑訴法判例2/ 最決平14・10・4参照:①捜索差押許可状呈示に先立ちドアをマスターキーで開け入室した措置:捜索差押えの実効性確保のため必要で,社会通念上相当な態様。②110条の呈示は,#手続の公正担保_処分を受ける者の人権に配慮する趣旨⇒執行着手前呈示原則。but,捜索差押えの実効性確保のためやむを得ない範囲。
[『刑事訴訟法判例百選』10版〔A6〕(刑集56-8-507),R29②,20②,参照]

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◇捜索差押えの際に付随処分として許される写真撮影
刑訴法40/ 捜査20/ 345/ 捜索差押えの際の写真撮影は、#付随処分として許される場合がある。例えば、証拠物の証拠価値保存、手続の適法性担保のためのものであれば、1通の令状で、どこでも捜索し、何でも押収するということにはあたらず、司法的抑制の理念に基づく令状主義の趣旨(#一般令状の禁止)に反しないからである。
[平成21年度刑事系第2問出題趣旨7頁,司法協会『刑事訴訟法講義案』4訂版64頁,65頁,参照。R21②]

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◇逮捕に伴う捜索・差押えの時間的限界
刑訴法109/ 1002/ 「逮捕する場合」(刑訴法220条1項柱書)? 証拠存在の蓋然性の高さを制度理由と解すれば,逮捕前後の多少の時間の隔たりも可。逮捕が予定されていればよい。⇒逮捕失敗の場合の捜索,差押えも可能。/判例は逮捕の時間的接着性を要求するが,#逮捕着手の前後を不問。⇒被疑者不在状況下での捜索,差押えも可。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版217頁(最大判昭36・6・7)参照。判例は相当説(実務)の説明する制度趣旨を明示的には採用していないのだろうか? 判例自体を読まないとわからないでしょうが,とりあえず,趣旨規範本の相当説と判例の説明を短く書き留めました。]

◇他の場所に連行しての捜査
[・逮捕した被疑者の身体または所持品に対する捜索・差押えは、①逮捕現場付近の状況に照らし、被疑者の名誉等を害し、被疑者の抵抗による混乱を生じ、または現場付近の交通を妨げるおそれがあるといった事情のため、その場でただちに捜索・差押えを実施することが適当でないときには、②すみやかに被疑者を捜索・差押えの実施に適する最寄りの場所まで連行したうえ、これらの処分を実施することも、刑訴法220条1項2号にいう「逮捕の現場」における捜索・差押えと同視でき、適法である。]

刑訴法78/ 700/ 逮捕した被疑者の身体・所持品の捜索・差押え(刑訴法220条1項2号)は,①現場状況に照らし,被疑者の名誉等を害し,抵抗による混乱,現場付近の交通を妨げるおそれのためなど,#その場でただちに実施するのに適しないときは,②#すみやかに被疑者を捜索・差押えの実施に適する最寄りの場所まで連行し,実施可。
[伊藤塾『試験対策問題集 論文 刑事訴訟法』(2009年)初版96頁参照]

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〇公道上のゴミ集積所に出されたゴミ袋からの証拠物の領置
刑訴法判例15/ 被疑者やその妻が公道上のゴミ集積所に不要物として出したゴミ袋を警察官が回収し,その中から証拠物を発見した事案で,最決平20・4・15は,#捜査の必要がある場合は_刑訴法221条により_遺留物として領置可とする。ゴミを捨てた者には,焼却処分等されるという期待があるとはいえ,捜査の必要に優越しない。
[寺崎『刑事訴訟法』3版151頁(最決平20・4・15刑集62-5-1398)参照。R22②]

◇ごみ袋の領置
刑訴法108/ 1000/ ごみ捨て行為は占有放棄であり,廃棄物として公道に置かれたごみ袋は遺留物にあたる。#市区町村の収集の予定はあるが_廃棄物適正処理のためであり,管理権が移る訳ではない。⇔#集合住宅内のごみ集積所など何人かの管理下にある場合,差押え対象物。/領置処分でも,プライバシー等保護上,必要性,相当性要。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版220頁-221頁(最決平20・4・15)参照]

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◇強制採尿に必要な令状の種類
刑訴法110/ 1003/ 尿はいずれ対外に排出される無価値物なので,強制的採取行為は捜索,差押えの性質を有する。⇒捜索差押許可状によるべき。but,#人権侵害のおそれある点で検証としての身体検査と共通する。⇒身体検査令状に関する刑訴法218条6項準用し,医師に医学的に相当と認められる方法により実施要の旨の記載不可欠。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版224頁(最決昭55・10・23)参照]

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